マズローの自己実現理論についての解説と考察!自分を知り、より良く生きるために。

マズローの自己実現理論についての解説と考察!自分を知り、より良く生きるために。

今回はアメリカの心理学者アブラハム・マズロー(Abraham Maslow)が提唱した自己実現理論を取り上げたいと思います。これは人間の欲求を階層に別けたもの(マズローの欲求ピラミッド)で、人間が持つ本能的な欲求から自己実現という高次な欲求までを理解しやすくまとめたものです。この理論は私が心理学科1年生だった頃に初めて知ったのですが、今に至るまでずっと印象に残っていて、就職時に自分を見失ったときや、社会での在りかたを内省して今後どうするかを決める時に参考にしています。

Abraham Harold Maslow (April 1, 1908 – June 8, 1970)
アブラハム・マズロー(April 1, 1908 – June 8, 1970) 画像出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Abraham_Maslow ©Fair use USA

マズローの欲求5段階(Maslow’s hierarchy of needs)とは?

マズローの理論の特徴は、人間の持つ欲求原始的なものから人間にしか抱けない高次的なものに分類し、原始的・低次的な欲求が満たされると、次の高度な欲求が湧いてくると説明した点です。(絶対的・固定的なものではなく、人によって欲求の強弱はある)

最初の生理的欲求(Physiological needs)が満たされれば、安全の欲求(Safety needs)が湧いてきて、それが満たされると社会的・所属欲求(Social needs/Love and belonging)が湧いてきます。更にそれが満たされると承認(尊重)の欲求(Esteem)が湧いてきて、最後は最も人間的な自己実現の欲求 (Self-actualization)に至ります。

人間は高度な欲求に取り組んでいるほど幸福で充実していると考えます。

1.生理の欲求 (Physiological needs)

1.生理の欲求
1.生理の欲求 人間以外の動物も持つ生命維持に欠かせない欲求

生理の欲求は、最も原始的で生命を維持するための欲求です。食事、睡眠、排泄といった他の一般的な動物も持つ欲求で、他のどんな欲求は満たせなくても生命を維持するための最も根本的な欲求となります。

2.安全の欲求(Safety needs)

2.安全の欲求(Safety needs)
2.安全の欲求(Safety needs)。安心したい、安定した落ち着きを求めたいという欲求。

生理の欲求が満たされると、安全の欲求が起こります。安全の欲求とは、自分自身の置かれている環境が安全に確保されている事を求める欲求です。安定した仕事や事故や災害のない暮らし、屋根のある家での家族との安定した暮らしや治安と秩序に守られた環境といった、自分が安心出来る環境を求めます。

3.社会的・所属欲求(Social needs/Love and belonging)

3.社会的・所属欲求(Social needs/Love and belonging)
3.社会的・所属欲求(Social needs/Love and belonging)。社会的動物である人が人らしく幸福に生きるために、最も大切な所属欲求。

安全の欲求が満たされると、社会的・所属欲求に移ります。自分が社会に必要とされている、社会的な役割がある、他人に認められ、自分を認めてくれる集団に属している、という感覚を求める欲求のことで、人として幸福に生きるためにこの欲求を満たすことはとても重要となります。これが出来ないと抑うつや孤独感に陥り、社会的不安や不適応の原因となります。

4.承認(尊重)の欲求(Esteem)

4.承認(尊重)の欲求(Esteem)
4.承認(尊重)の欲求(Esteem)。他人から認めて貰いたい欲求よりも、自分で自分のことを価値ある人間として認められるか(承認できるか)が重要。

承認(尊重)の欲求(Esteem)とは、社会・集団から価値ある存在と認められて、尊敬を得る事を求める欲求のことです。地位や権力、名声や利権への欲望や他人からの注目を集める事で満たされる他者からの評価に対しての欲求と、自分自身の能力を信頼し、自立しているという感覚、自分自身に対して自分がどう承認していくのかの欲求があります。

誰かに認めて貰いたいという承認欲求よりも、自分自身で自分の事を尊敬できるか、認められるかについての自尊心・自負心を満たすことの方が重要で、ありのままの自分を尊重し、受け入れるセルフコンパッションにも通じる概念です。

5.自己実現の欲求 (Self-actualization)

5.自己実現の欲求 (Self-actualization)
5.自己実現の欲求 (Self-actualization)は自分らしく生きたいという欲求。

上記全ての欲求を満たした後に取り組むのが自己実現の欲求です。お金も仕事も満たされているはずなのに、どこか満たされていない感覚がある人はこの自己実現の欲求を満たしていないからだと言えます。

自己実現の欲求とは、自分の持つ可能性や能力を最大限に発揮し、自分がなり得るものになりたいという欲求のこと。結局は全ての欲求がこの自己実現の欲求に繋がっています

欠乏欲求と存在欲求と自己超越について

欠乏欲求と存在欲求と自己超越
最初の4つの欲求を欠乏欲求(Deficiency-needs) 、自己実現の欲求を存在(成長)欲求 (Being-needs)とまとめ、更にこれまでの5段階の欲求の更に上に自己超越があるとした。

マズローの欲求段階は、最初の4つを欠乏欲求(Deficiency-needs) 、自己実現の欲求を存在(成長)欲求(Being-needs)とし、更にマズローは晩年自己実現の欲求よりも更に上の自己超越の段階があるとしました。

欠乏欲求はそれ自体が足りないことで不満足な感覚を覚えたり、劣等感や抑うつ、生活の質自体が脅かされるもの
存在欲求は成長し、進歩することそれ自体に重きを置き、自分自身が自分自身であることに意味を見いだしていくものです。

自己超越の段階は、ミハイチクセントミハイのフロー体験と似ていて、一種の世界に溶け込むかのような没頭体験、没入状態を感じている段階です。自己超越は、自分自身であること、生まれてから今に至るまでの自分の価値や能力を信じ、ありのままの自分を発揮すること、そして自分のしている事に意味があり、成長につながり、その活動に従事すること自体が幸福である状態と私は考えています。

段階は固定化された絶対的なものではない。

このマズローの欲求段階は絶対的に固定化された不動のものではなく、人によってどの欲求が強いのか違いがあります。夢を追って頑張る人など、多少安全の欲求や社会的・所属欲求を犠牲にしても自己実現の欲求を優先したり、リスクのある自己実現よりも安定した暮らしを選ぶために堅実な職業を選ぶ人もいます。これらの欲求のどれが強いのか自分を見つめ直してみると発見があり、面白いです。

考察

日本など先進国に住む人達の多くは生理の欲求と安全の欲求は満たしていることが多いと思います(万が一の時は生活保護制度もある)が、問題となるのが社会的・所属欲求より上の欲求です。

人が人として幸福に生きるには、他者との関わり合いは欠かせません。これは、アドラー心理学エリクソンの発達課題でも言われていることで、人は他者との関わり合い・助け合いで生きて行く、何らかの社会的な役割を抱く事で幸福感を実感出来ます。

マズローの自己実現理論は、「誰しも自分はこうなりたい、こうでありたいという自己実現の欲求」、それに至るには自分はどの欲求を満たしていけば良いのか、どういった役割や自分の価値を社会に提供すれば良いのかを考えるきっかけになると思います。

参考・出典

・「人間性の心理学―モチベーションとパーソナリティ」 A.H. マズロー、 小口 忠彦 産能大出版部 改訂新版 (1987/3/10)
・「マズロー心理学入門: 人間性心理学の源流を求めて」 中野明 アルテ(2016/5/1)
A theory of human motivation.
自己実現理論(Wikipedia)
Abraham Maslow(Wikipedia)