学習性無力感に気をつけよう「セリグマンの犬の実験」やっても無駄だと思わないために

学習性無力感に気をつけよう やっても無駄だと思わないために

学習性無力感(Learned helplessness)とは、困難に置かれた状況に置かれたときに、自分はどうすることも出来ない、状況を変えることが出来ない無力な状態であると思ってしまう学習された認知のこと。1965年にコーネル大学のマーティン・セリグマンとマイヤーが行った犬の実験が有名です。

1967年のセリグマンとマイヤーの実験

学習性無力感の犬の実験
画像出典:Rose M. Spielman, PhD – Psychology: OpenStax, p. 519, Fig 14.22; CC BY 4.0

研究チームは雑種犬を箱に入れて、さらに両脇をパネルで置いて身動きが出来ないようにしました。実験はペアで行われ、両者ともに無害だけれど不快な電気ショックを周期的に与えられました。

一方の犬が入っている箱には犬自身が電流を止めることが出来るスイッチが置かれており、もう一方の箱にはどんなに犬が電気ショックでもだえても電流を止めることが出来ない状況でした。自分の意志で環境を変える事が出来た犬と出来なかった犬で違いを設けたのです。

次にこの2匹の犬を今度は別の箱に置き、その箱では最初の箱と同様に電気ショックが流れるけれども、低い柵で囲った向こう側には全く電気ショックが流れない環境でした。つまり、その気になればいつでも電気ショックから逃げられる環境でした。

結果は、最初の箱で自分で電気ショックを自分で止めることが出来た犬は電流が流れても回避する方法を直ぐに見つけることができましたが、自分で電気ショックを止める事が出来ない環境に置かれた犬はいつでも逃げられる状況に居るにも関わらず萎縮してただじっと電気ショックを耐えていたとのことです。

今だと倫理的に出来ないような実験ですが、無力感も学習するものだという知見を示したこの実験は当時の心理学の様相を一変させたと言います。

無力感も学習したもの。無力感は”やればできる”とは真逆のマインドセット。

自分の置かれた環境や状況を自分の意志や力で変えていくことが出来るという認識は人が困難や苦境に立ち向かっていくためには無くてはならないもの。

しかし、その認識がどうしても持てない時がある。長期間自分ではどうにもならない苦境や周囲から自己否定される環境に置かれた人や、失敗続きで成功体験を積めなかった人、自分が理想とする目標に向けて頑張ったけれど失敗してしまった人などたくさんいると思います。

でもこうした無力感も後天的に学習したものだと思えれば、小さな達成を積み重ねることで無力感を「自分は出来る」という感覚に塗り替えることが出来ます。

失敗しても、またやり直せば良いや、もう一度挑戦して今度は成功すればいいや、という認識が重要ですね。実験を行ったセリグマンは自分の認知を変える認知行動療法がこの無力感を克服するのに有効だとしています。セリグマンは後に人のポジティブな感情に注目したポジティブ心理学を創始しました。

参考・出典

Failure to escape traumatic shock.
・「選択の科学 単行本」シーナ・アイエンガー (著), 櫻井 祐子 (翻訳) 文藝春秋 (2010/11/12)
学習性無力感(Wikipedia)