「時間が足りない感覚」からの脱却 時間認知の心理学

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日々の仕事や雑務に忙殺される中で、「時間が足りない」「やりたいことはたくさんあるのに時間が無い」という感覚に悩んでいる人も多いと思います。今回はその時間が足りない感覚について、どのようにしたらこの感覚を解消できるのかについての知識をまとめました。

時間飢饉と時間汚染

時間が足りない感覚、時間に対する渇望感を時間飢饉と言います。この概念は1999年ミシガン大学のパウロ(Leslie A. Perlow)さんが提唱しました(*1)。多くの労働者がやることが多すぎるのに時間が無いと感じています。論文が発表された1999年の段階でそうなら、現在はスマフォとかネット社会でより時間飢饉の問題は深刻化していると言えます

時間飢饉と似たような考えに時間汚染(contaminated time)があります。これは目の前に集中すべきことがあるのに、話しかけられたりLINEの通知やソシャゲなどでマルチタスクになってしまうことで、一つの事に集中できない細切れの時間が生まれ、それが脳に大きなストレスとなってイライラや不安を与えて時間が足りない焦りをもたらします。時間が細かな雑多なことに汚染されていると考える時間汚染は、一つの事にまとまった時間で取り組む機会がなかなか取れない私たちの時間感覚を狂わせていきます。マルチタスクをしがちな人は時間が足りない感覚に陥りやすくなるので要注意です。

実際には時間があるのに時間が足りない感覚を覚えるのはなぜか:時間飢饉の正体

実際に私たちの時間は不足しているのでしょうか?実は、私たちの持つ時間は昔と比べてはるかに増えています。現代は無駄を省くテクノロジーに囲まれているのですから、洗濯機も掃除機もなかった時代からすれば多くの余暇は産まれていると考えられます。では、なぜ時間が足りないと思うのでしょうか。

時間飢饉の正体は「時間が足りない」のではなく「時間が無いと思い込むこと」によるものです。実際には充分な時間が与えられているのに、「やらなくてはいけないと思い込んでいる」ことが多かったり、焦りの感情で目の前の事に手がつけられなくなったり、その結果として生産性も下がって、時間が不足している感覚に陥る負のループに入っています。

時間の絶対量が足りないのではなく、時間が足りないという感覚(思い込み)。この感覚こそが組織や個人の生産性を大きく下げていることが分かっています。「忙しい、忙しい」と言いながらもろくに生産できていない(結果を出していない)人はこの負のループに陥っている可能性大です。

なぜ時間が足りないと思い込んでしまうのか:根本的な原因は?


では、なぜ「時間が足りない」と思い込んでしまうのでしょうか。2015年のデューク大学で行われた時間飢饉に関する心理調査(*2)では、一つの目標(ゴール)に対するコンフリクト(競合)がこの「時間が足りない」感覚を作り出すことを明らかにしています

一つの目標達成のために、それとは矛盾するもう一つの目標があると目標同士が干渉し合って、「あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ」という感覚になります。その結果、やるべき事が多いと感じてしまい、同時に複数のことを両立させようと無理をして焦って不安になり、時間が足りない感覚に陥ります。

身近な所では同時に複数の習い事を詰め込んだり、複数のSNSやスマフォゲームをながらプレイしたり、しなくてもいい雑務に取り組んでいたり。ちょっと難易度が高いものだと英語をマスターするのと同時に中国語や難関資格も獲りたいと頑張ったり、エクセル関数の勉強をしながら子育てやダイエットやヨガなどあれもこれもと頑張る、万能タイプを目指す欲張りな完璧主義が陥り易いとも言えます。

時間飢饉の解決法1:マルチタスクを避け、一つの事を着実にこなしていく


ではどのようにしたら時間危機の感覚を解消できるのでしょうか。

まずは時間汚染の悪影響を受けないために、マルチタスクとなる要素を徹底的に排除しましょう。仕事しながらスマフォをいじらず、スマフォは机にしまって鍵をかけておきましょう。何かに取り組むときは一つに絞り、その達成に向けて集中します。時間で区切ったりして、一定の達成ラインを超えるまでは目の前の事に集中し、他の事は一切考えないようにします。複数の事をこなすのがうまい人は取り組む時は一つ一つ確実にこなしていき、着実に解消して行くことで、結果として複数の事が達成できています。仕事が出来る人、切り替え上手な疲れ知らずの人はこれが出来ています。

2015年の南カリフォルニア大学の直近の未来に関しての意識の調査(*3)によると、30年先の未来を考えて行動するよりも、一日単位のプロセスで行動をした方が目標達成が出来るという結果が出ています。漠然とした未来に私たちは不安を感じますが、小分けに一日単位で行動することで努力を積み重ねる感覚、先に進んでいる感覚を噛みしめることができ、それが不安や焦りを低減してくれるからです。

一日単位であれば現実的で具体的な未来が見え、先が見えるから不安が減ります。不安や焦りに陥りやすい人はゴールフォーカスで未来ばかりを見ています今、目の前の自分の仕事に集中するタスクフォーカスが重要となります。

時間飢饉の解決法2:呼吸に意識を向ける


意識的にゆっくりとした時間を過ごすことで焦りや不安で乱れた時間認知をリセットするのも効果的です。深呼吸と時間認知の感覚を調べた先の調査(*2)では、深呼吸をすると時間飢饉の感覚が減ることが示されています。ゆっくり深呼吸をする時間を作るだけで15パーセントも時間が足りない感覚が減ったのだとか。

ポイントは呼吸に集中すること。4~5秒吸って8~15秒かけて吐くといった感じで呼吸に注意を向けて、吐くときの呼吸を長めに行います(人は吸うときに交感神経が高まり、吐くときに副交感神経優位となる)。

時間飢饉の解決法3:リフレーミングで目標を一つに統合する


複数の矛盾する目標を複数持つことが時間認知を歪め、時間が足りない感覚を作り出します。であれば、目標が一つに絞れれば良いわけです。そのための手法としてリフレーミングがあります。

リフレーミングとは認知の枠組み、捉え方を変えることです。ストレスや負担となっていることの意味づけを変えて、再解釈することで「そもそもやるべきではなかった不必要な事」を減らしたり、焦って目の前の事に手がつかないのであれば、「今自分は焦っているのではなく、目の前の事に集中するために神経を尖らせているんだ」と捉え方を変えます(ストレスの意味づけを変える)。

現代人はただでさえ「やらなくてはいけないこと」を抱えすぎているので、減らせる事はバッサリと減らしていきましょう。無駄を減らし本当に大事なものに絞り、それに集中しひとつずつ片付けていきます。

何かをする時にはコンフリクトが起きない計画の立て方にすることが肝心で、「複数の目標が実は同じ大きな目標に進んでいる」ようにリフレーミングすると効果は大きいです。今自分のしている事が無駄ではなく、一つの大きな人生の目的に繋がっていくような感覚を持てるかどうかです。

私の場合は「何かを学ぶ、体験する→ブログでアウトプットする→収益化につながり知識が記憶にも定着する」ので凄く充実感が得られています。自分のしていること全てが一つのゴールにつながるような感覚を持つことで、生き生きと充実した時間を過ごせるようになります。

時間飢饉の解決法4:人に親切にすると時間が増える


2012年のペンシルヴァニア大学の親切と時間感覚の実験(*4)では、他者のために15分ほどの親切を行うことが時間認知を大きく拡張するという結果がでています。人に感謝をしたり、ボランティアをしたり、何か他人のために行動すると時間が長く感じられるのです。逆に自分の事しかやっていないと、時間が足りない感覚になると考えられます。

時間飢饉の解決法5:畏怖の感情で自分をちっぽけなものだと思う


最後は感情と時間認知の関連を調べた2012年スタンフォード大学の研究です(*5)。オーロラや宇宙などのスケールの大きな存在に触れると、「自分という人間ってちっぽけだな」と誰もが思うのではないでしょうか。こうした自然の雄大さを肌身に感じたときに覚える畏怖の感情が時間感覚をゆっくりとしたものとし、焦りに強いメンタルになり不安の感情を低減します。

高画質なフリー素材サイトPexelsなどで宇宙や自然などスケールのでかいものの画像を探して見るのも効果的ですね(Pexels検索Nature)。

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参考・出典

・1.The Time Famine: Toward a Sociology of Work Time (Leslie A. Perlow 1999)
・Overwhelmed: Work, Love, and Play When No One Has the Time by Brigid Schulte (Author)
・2.Pressed for Time? Goal Conflict Shapes how Time is Perceived, Spent, and Valued / ソース2(スタンフォード大学)
・3.When Does the Future Begin? Time Metrics Matter, Connecting Present and Future Selves by Neil A. Lewis, Jr., Daphna Oyserman
・4.Giving Time Gives You Time
・5.Awe Expands People’s Perception of Time, Alters Decision Making, and Enhances Well-Being
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