動じない人の正体「サイコパス秘められた能力」 ケヴィン・ダットン(著) まとめ 要約 レビュー

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皆さんはサイコパスと聞いて何を連想するでしょうか?血も涙もない連続殺人鬼?それとも冷徹な犯罪者?本書ではそんなサイコパスに光を当て、サイコパス的特性が実は実社会を生きる上で有益になる所もあるのではないか?という新たな視点をもたらしてくれる本です。

サイコパスとは


サイコパスとは人が持つ負の人格特性であるダークトライアド(Dark triad)(参考→Wiki)の一つで(サイコパシー・精神病質ともいう。)、他人に冷淡で、平然と嘘をつき、行動に対する責任感や葛藤が無く、悪びれる様子も無く他人を陥れたりする人です。良心に欠けますがその一方で行動力があり、自分に自信があるため表面的には非常に魅力的に見えます

彼らの極端な冷淡さの例としては、例えば思考実験で「一人を殺せば全員が助かる」ような状況では真っ先にその一人を殺せるような人です。論理的に正しい事、結果として利益をもたらす事に対して普通なら葛藤が感じるような状況でも瞬時に判断出来ます。普通の人なら感じる罪悪感を彼らは感じず、目的のためには手段を選ばない人達です。

サイコパスは情動感情を司る脳の扁桃体の活動が普通の人とは異なっており、それが罪悪感や共感能力が一般の人とは違う反応をもたらす理由であるといいます。普通の人とサイコパスの脳の構造は同じだけれど、配線が違うのです。

ここまで聞くと、サイコパスはとんでもない人物特性だ!と思うかも知れませんが、実は社会で成功している人の中にはサイコパス的特性を持つ人が多いと指摘します。サイコパスには普通の人には無い強みがあり、その強みこそが彼らを社会的成功に導いているのです。

サイコパスの強み


では、そんなサイコパスの強みとは何でしょうか?まず、彼らは不安や未来におびえる事はありません他人の目を気にすることなく、自分の興味のあること、するべき目的に集中します。常に今に集中し、過去や悩みに囚われること無く、淡々と目の前の課題をこなしていきます。目の前に大きな脅威があってもそれに動じず、泰然として対処できます。他人や社会、過去や未来に今の自分が影響されないのが大きな強みです。

実はサイコパスの最大の強みである「動じない力」、これって実は長期間瞑想修行を行った僧侶や宗教の聖人達の到達点と近い特徴なのです。一般の人が出家をして瞑想をしたりして、物事に動じなくなる高みの境地を目指しますが、サイコパスは生まれつきそうした動じない力を持った人だと言えます。本書では聖人とサイコパスの共通点を以下にまとめています。

■聖人とサイコパスの両者に共通する特性
・冷静
・マインドフルネス(今に集中する感覚)
・恐怖心の欠如
・精神の強靱さ
・新しい経験への開放性
・功利主義
・一点集中力/意識変容(フロー)
・精神力
・独創性
・執着のなさ
・非情さ
・共感
・利他的

ここで「共感」と「利他的」がありますが、サイコパスは普通の人と同じように相手の気持ちをくみ取ることが出来ます。共感能力が無いと相手が苦痛かどうかも分かりません。サイコパスは相手が苦痛という気持ちが快感に切り替わる脳の配線を持つ人です(自らの快楽のために人を陥れる)。「利他的」についても、他者を助けることで自分にメリットがある場合などは一般の人と比較して他者を助ける行動に出ることが見られるそうです(そもそも人助けが純粋に利他的なものであるとは言いがたい。背景には自分の利益が絡んでいると本書は指摘しています)。

一方でサイコパスの非社会的な特徴は以下のものになります。
■サイコパス的特性
・ナルシシズム
・衝動性
・良心の欠如
・他人を操る
・病的な嘘
・冷淡

いかにも映画とかで描かれる連続殺人鬼としてのサイコパスですね。

■聖人的特性
・愛
・思いやり
・優しさ
・謙虚さ
・誠実さ
・信頼できること

こちらは映画や物語の中で描かれるようないかにも聖人って特徴です。いい人の特徴でも有りますね。

極限状態でも神経が研ぎ澄まされ、冷然としていられる能力。感情に左右されない力。これはミハイチクセントミハイが提唱したフロー状態にも通じるものがあります。

サイコパスが多い職業

本書ではイギリスで調べられたサイコパスが多い職業がまとめられています。

■サイコパス度が高い職業
1位:企業の最高経営責任者(CEO)
2位:弁護士
3位:報道関係(テレビ/ラジオ)
4位:セールス
5位:外科医
6位:ジャーナリスト
7位:警察官
8位:聖職者
9位:シェフ
10位:公務員

1位は企業の社長。社長は業績のために従業員を切らなくてはならないし、弁護士も明らかに有罪である犯人を弁護しなくてはなりません。メディアは視聴率のために他人の不幸を執拗に報道したりしますし、トップYoutuberなどは自分のプライベートをさらけ出しても堂々としています。他人の批判や悪口に動じないスルースキル、鈍感力が強みでしょう。

サイコパスが少ない職業

逆にサイコパス度が低い職業もあります。

■サイコパス度が低い職業
1位:介護士
2位:看護師
3位:療法士
4位:職人
5位:美容師/スタイリスト
6位:慈善活動家
7位:教師
8位:クリエイティブアーティスト
9位:内科医
10位:会計士

1位の介護士や2位の看護師に見られるように、全体的に人の感情や共感がキーポイントとなる職業が多く、セラピー系やアート系といったや人と直に接する、感情を扱う職業が多いです。外科医は人体を切開する必要があるからサイコパス度が高いとされましたが、内科医はその逆にサイコパス度が低いとのこと。個人的には数字ばかり扱っているイメージの会計士が10位というのが意外でした。節税など相手の話を聴く力が求められているからでしょうか。

総評

読みやすさ ★★★★☆
有益性   ★★★★★★★★+
教養    ★★★★★★★★
満足度 90%

サイコパスの持つ実社会を生きる上でプラスになる特性にスポットライトを当てた本書。性格は使いようという視点を提示した良著でありましょう。特に繊細さに悩み、漠然とした不安を抱えている人には、本書を読むことでこういう人もいるのか、と納得出来るはず。不安や悩みとは無縁の、他人の目に動じない人とはどういう人か?を知ることが出来ます。

本書の全体的な構成としてはケヴィンダットン博士のサイコパス探求記といったところでしょうか。著者のケヴィンさんはサイコパスと出会い、イギリス有数の凶悪犯罪者を多く収容しているブロードムーア病院に訪れ実際にインタビューをしたエピソードや、脳に経頭蓋磁気刺激法(TMS)を施し一時的にサイコパスになってみたりとかなりの行動派。サイコパスになってみた話しでは、お酒を飲んでへべれけになったときの不安が消えた心地よいリラックス感と神経が研ぎ澄まされたような高い集中状態が同時に発揮できるといいます。気が大きくなり、揚々とした自信や小さな問題など構うものか、という大胆不敵で失敗や他人に動じない世界がサイコパスの視点だと言います。

読みにくいというレビューと、本の厚さもあってどんなものかと覚悟していましたが、余白がしっかり取られ文字もそこまで詰め込まれていないので最初の印象よりもずいぶん読みやすかったです。

サイコパスの非情さ、魅力さ、一点集中力と強靱な精神力と恐怖に物怖じしない態度がビジネスやスポーツの分野で大きな成功を導くことは間違いありません。社会のしがらみを気にせず、泰然自若とした態度。神経の図太さと逆境に対しての無関心さはその要素をちょっとでも取り入れたらずっと生きやすくなるという人も多いはず。サイコパスにも学ぶ所がある、人の性格はその性格の強みをどう活かすかが重要であると気づけた本でした。

参考・出典

ケヴィン・ダットン(Wikipedia)
Dr Kevin Dutton (著者本人の公式ページ:英語)
ダークトライアド Wikipedia
精神病質(Wikipedia)

 
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