心理学を大学で学ぶということ 海外と日本の違いと就職について 専攻して学ぶ意義はあるのかどうか

大学で心理学を学ぶということ
当ブログは心理学の記事を多くまとめていますが、その理由の一つに私が大学で心理学を専攻してきたことがあります。心理学は人生のあらゆる分野に応用でき、学びがいのある学問なのは間違いありませんが、実際に大学で心理学を学んだ者としてどうだったのか?後悔していることはないのか?についてをまとめてみたいと思います。またアメリカに海外留学した経験から簡単に日米の心理学の比較なども行っていきます。

心理学って何なの?

心理学は人の心を研究する学問なのですが、人の心理を扱う以上、扱うテーマがとても広いのが特徴です。

・人の性格について扱う性格心理学
・人の発育について扱う発達心理学
・人の記憶や認知について扱う認知心理学
・スポーツのコーチングやパフォーマンスを上げる心理について学ぶスポーツ心理学
その他、社会心理学臨床心理学恋愛心理学ポジティブ(健康)心理学や古来から続く動物実験を元にした学習心理学や実験心理学など扱うテーマが多すぎて数え上げれば枚挙に暇がありません。

なぜ心理学を専攻したのか?

なぜ心理学を専攻したのかについてお話しすると、私の場合は紆余曲折とした辛い10代を送っていて、勉強や読書する習慣もなく高校も中退。当時10代前半の子供としてはかなりつらい体験と、大きな挫折経験を味わいました。アドラー心理学でいう劣等コンプレックスの塊みたいな状態で、友人も作れずにいました。思春期は誰でもメンタルが不安定な時期ですが、私の場合は自分と他者との違いに非常に敏感になってしまい、他人とどう接すれば良いのかまるで分からない時期でした。

第三者から見れば人間嫌いの孤高な性格って感じだと思うのですが(実際ドラクエ3の序盤の性格テストでもいっぴきおおかみの性格と出た。)、人間には興味があったんですよね。なぜ自分と他者は違うのか、なぜあの人はこんな人なのか?という素朴な疑問を抱いていました。

人生の早い段階で苦しい立場にいたから、自然と人の心理について学びたいという気持ちになったのかもしれません。

大学はどうだったか?どんな学生がいるのか?

紆余曲折あって大学の心理学科に入ったはいいものの、実際はどうだったのかをまとめます。

学部の段階では、他の文系学科とあまり変わらない雰囲気です。ただやはり学部生ということもあり、真面目に学んでいる人は少ない印象です。受験の開放感で遊びやサークル活動などに精をだしているというか。いい加減なヤツもいれば、真面目な人もいる感じですね。女性比率が高いのはどの大学でも一緒のようです。特に将来明確な目的やビジョンを持つ人は少ないですが、一部の学生は将来カウンセラーを目指している人もいます。大学院に進む人も殆どが臨床心理学を専攻している感じでした。一学年に0~数名程度ですが一度社会人を経験してから心理学部に入ってきた人もいました。

どんな内容を学ぶのかについてですが、大学によりだいぶ違うと思います。ただ、心理学科と名のついているところは幅広い心理学を一通り学べると思います。パブロフの犬などの実験(条件付けなどを学ぶ)学習心理学はとても面白かったですね。問題は研究法系の必須科目で、有意水準や回帰分析など統計的手法を学ぶのですがこれに挫折する人が多く同級生でも数人は単位を落としている人がいました。

統計関連のクラスは数学的な素養が求められるので、数学に苦手意識があるから心理学を選んだのに、という学生の多くは苦戦をしていたようです(まぁ、私もそうなんですが)。

大学院を見ると年齢性別はより一層多種多様になります。おじさんやおばさんも多いですし、色んな経歴を持った人が多いです。殆どが臨床心理学で、基礎心理学(実験や統計などでの検証をベースにした臨床心理学以外の心理学)を専攻する人は非常に少ない印象です。

アメリカの心理学科と日本の違い

アメリカの心理学と日本の違い
私は有り難いことにアメリカ留学の経験に恵まれたので、心理学の本場アメリカと日本の違いを知りうる限りまとめてみます。アメリカでは心理学はとてもポピュラーな学問で、人生に使える生きた知識を教えるものとして中学~高校のカリキュラムにも含まれていると教授から聴いたことがあります。

大きな違いは、アメリカの心理学の学位はBS(Bachelor of science)に含まれる、つまり理系の学問に分類されるということです。アメリカでは学位に二つ分類があり、一つが文系で取れるBA(Bachelor of art)、もう一つが理系で取れるBS(Bachelor of science)で、心理学はこのBSに含まれることが多いです。

これはなぜかというと、学ぶものの量や学位を取るための必要単位数が非常に多いからです。統計的手法を用いた検証や実験デザイン、ディスカッション形式での参加型のクラスなど、現地の学生でも必要読書量などで苦労する箇所が多いです。私の英語がペラペラな従兄弟もアメリカでの心理学専攻は挫折してオーストラリアに移ったほど。(もちろん大学によるし、成績を気にしなければ良いのですが、アメリカでは成績が重視されます。)

日本の大学の心理学は欧米から輸入したものを翻訳して紹介する段階であることが多く、また統計学を除きそれほどキツくはないのでのほほんとしている学生が多い印象です。

(日本では文系と理系を区別する習慣があるため便宜上理系と文系に分けましたが、そもそも理系や文系という区分け自体が無意味なものなので、一概には言えないです。BAかBSかを決めるのは取得した単位の数や大学の規定により様々で、心理学でもBAとして取って他の経済学や芸術学、数学などと平行してダブルメジャーにする人もいたりします。多くは必要単位の多さからBSとして扱われています。)

学ぶ内容は非常に多種多様です。どの大学にも心理学科はあり、犯罪心理学、法廷心理学やスポーツ心理学、臨床心理学でも芸術心理学など非常に多数の専攻内容があります。日本でも人気の臨床心理学はclinical psychologyと呼ばれていて、カウンセラーとなるには大学院の学歴が必須ですが、国家資格で州によっては医師と同じように薬の処方が許可されており、日本と比べて所得や社会的地位は非常に高い存在です。

日本では民間資格で国家資格化の動きがありますが、医師会の反発などが根強く、日本の心理カウンセラーの社会的地位は相対的に低いと言えます。収入と学習コストのバランスが悪く(高学歴を求める割に見合わない収入)、精神科医が臨床心理学の資格を取得しているケースも多く見られます。

日本と違うのが科学的な手法で検証もしっかりと行う意識が強いことでしょうか。それについてはちょっと専門的になるので以下の記事を参考にしてください。→【まとめと要約】「心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門」要点とレビュー 心理臨床分野に限らずエビデンス(科学根拠)についての意識や態度を高めてくれる本

日本の臨床心理学の問題点でもあり、良いところでもあるのかもしれませんが、文学的哲学的な探求をしている先生も多くて、効果量などを実証的に検証するといったあまり科学的な検証が行われていないことがあります。セラピーの流派を切り拓いた人物の教えを連々と学び継いでいくことや、東洋的な道や思想と結び付けるのはユニークですが、この曖昧さが結局は科学のいわばエリート学問である医学部を必要とする医師資格と比べて日本の臨床心理士資格の格差に繋がっているのでは?と思います。

卒業後と就職について

卒業後の進路ですが、臨床心理学の大学院に行きカウンセラーを目指す人や研究者を目指す人を除き、普通の就職先ですね。私の所では商社や金融、一般公務員など普通の所が多いです。大学職員なども多かったですね。いわば日本で言う文系の就職先としては新卒制度があるので普通だと思います。心理学をアピールして人事職に就いた先輩もいました。

ただ、これだけはハッキリ言えるのですが、将来的にクリエイティブと呼ばれる分野の職業に就きたいのなら、素直に専門学校、美大芸大に行って腕前を磨いた方が良いです。むしろ日本の大学に囚われずにさっさと留学も視野に入れてクリエイティブを修行して欲しいぐらい。

もちろん心理学科を卒業した人でゲーム会社の制作・開発職等に行く人も居ますが、極めて外れ値のレアケースです。プランナーなら数人はいるかな?私の友人だと、比較的クリエイティブに近い分野の広告代理店で営業職が数人ほど。

別に心理学科に限らないことですが、クリエイター職(ライターや編集者は除く)に就けるのは極めてごく一部のレアケースです。外れ値の外れ値。もちろん在学中に腕前を磨いていく、中高時代からずっと続けていることで、自分が得意と思えるぐらいまでレベルがあって、他人から認められていてちゃんと在学中にコネや挑戦をしていれば良いのですが、大学からクリエイティブ職を目指したいのなら専門的な技術を学べる学校選びを強くお勧めします

心理学など日本の文系の学問では、将来的に技術や専門的スキルを求める職業を希望した場合、非常に遠回りの選択となります。私の場合高校時代が無かったことに加え、進路相談できる相手や大人が居なかったためこの点(安易に心理学科を選択したこと)で凄く苦労しました。「まぁ、新卒でなんとかなるだろう」との軽い気持ちでは就職は上手くいかないと覚悟しておきましょう。就活でライバルとなるのは専門的に学んだ美大音大芸大生です。彼らの作品より勝てるものがあるのかどうか。

やりたいことがあり、それが技術や理系的な素養を求めるもの、芸術的な力やセンスが必要なものであれば尚更そういった技術を磨ける環境にいった方が良いです。例えば建築を専攻していれば建築家にならずともプロダクトデザインにも活かせますし、数学の素養があればプログラミングにも活かせます。心理学は後から自分でいくらでも勉強できるので、技術職・クリエイティブ職への就職を重視するのであれば大学や学校でしか学べない&磨けないものを専攻した方が良いでしょう。

人は環境の動物であり、他者の影響を強く受けます。そういった点で考えても将来的にクリエイティブな事を職業にしたいのであれば、そういったクリエイティブな意識が高められる環境、ライバル意識を持てる他者の中に自分を置いた方が断然良いです。

心理学は役に立つのか?

心理学は確実に役に立ちます。心理学が役に立たないと思っている人は、心理学の使い方がまだ分かっていない人か、希望する仕事が技術を求める分野でそれに就けなかったor就くのに苦労した人でしょうか。

心理学は実際に使ってこそ活かせるので、例えば営業やビジネスにも使える「小さなお願いを承諾させた後に大きなお願いをすると通りやすい」というフットインザドア法は社会心理学で学んだりすることができます。

心理学は人生を向上させる役には立ちますが、心理学を専攻して得られる専門的なスキルや技術は統計学ぐらいなので、統計のスペシャリストになるので無ければしっかりと自分の将来のあり方を見据えて在学中から行動していく必要があります。

結論 まとめ

今の立場から言うと、心理学は人生のあらゆる局面に大きく役には立つが、専攻するまでもないという印象です。私はクリエイティブ職を重視していたので、昔に戻れたら理数技術&専門系か芸術系の、可能であれば日本の大学では無く海外の大学に行っていたと思います。心理学は後からいくらでも自分で勉強できます。特に最近だと心理学の学術的知見を分かりやすくまとめたメンタリストDiGoさんやパレオな男ブログ、良質な心理学の本も入手しやすいです。私の場合は今の方がブログというアウトプット手段を持った以上、当時よりも熱心に心理学を勉強して日々活用している感じです。心理学は面白く、使える学問である事は間違いありません。学んだことをどう使うか、ですね。