黒川塾61「インディーズゲームとビジネスの境界線」に参加してきた。要約・まとめ

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先日2018年7月12日木曜日、秋葉原UDX4FNEXT3で行われた黒川塾61に参加してきました。今回のテーマは「インディーズゲームとビジネスの境界線」。私自身はインディーゲームの知識は普通の人よりちょっとある程度ですが、今回は個人のクリエイターとしてゲームをリリースする上で必要なことやモチベーションの話などを聞けました。

ゲスト
いたのくまんぼう:ゲーム作家
中道 慶謙 (なかみち よしあき) :ゲームクリエイター
ところにょり(本名非公開):ゲームクリエイター

今回の黒川塾はインディーズゲームの可能性がテーマです。インディーズゲームとは大手ゲームメーカーが出したゲームでは無く、個人が制作してリリースしたゲームのこと。個人クリエイターたちが、どのように制作しているのか、そして自分の作品でどう世の中にチャレンジしているかについて話が聞けました。

いたのくまんぼう(和尚)さん

いたのくまんぼう&リオ「Magic Reader」

 
いたのくまんぼうさんは、和尚と呼ばれており、ドラゴンクエストに憧れ、チュンソフトに20年ほど在籍していました。プログラマーで活躍し、不思議のダンジョンやサウンドノベルのメインプログラムに携わってきました。現在は主にスマートフォンアプリを個人として作って生計を立てているそうです。なぜチュンソフトかといえば、単純明快にドラクエ作った会社だから、というのが理由だそうです。子供の時から、いつか自分はゲームを作る仕事に就くことは決めていて、上京し、クレジットカード関係のバックグラウンドのプログラミングの仕事をしていたあと、3年ほど経ってからゲームの仕事をするべく転職しました。その際チュンソフトの面接に向かうとき、ドラクエ4のフィールドの曲が流れ「俺も導かれし者たちだなぁ。」と感慨深く思っていたそうです。

しかし、チュンソフトに入社出来たのはよかったものの、だんだんゲームの規模が大きくなり、個人が任される範囲が狭くなっていくことに気づいたそうです。

16年前でも、すでにゲームの規模が大きくなって、個人で担当するのがゲームの一部分になっていた。当時ですらゲーム開発は50人から100人規模。現在だと広大なフィールドにただ木を植える仕事しかない場合もある。このゲームに関わってきたとは言えるが、このゲームを作った、とはいえない状況になってきた。一度、全部の世界を作りたくなってきた。自分がプログラミングを学びはじめた頃は一人で作るのが当たり前だった。一人で全てをつくりたくなった。

しかし、当時はインディーゲームが広く認知されていた時代ではなかったので、絵本作家になろうと思って会社を辞めたそうです。プログラマーとして受託の仕事やりながらスマフォの時代になり、スマフォだと個人で作ったプロダクトでも勝負できることを考えて、気づいたら今になっていたとのこと。最初からインディーでゲームを作ろうと思って独立したわけではなく、一人で世界を作りたいから絵本作家になろうと思って独立したのが印象深いです。

退職後、いたのさんは生きていくためにフリーランスとして受託の仕事をしていました。そのころはアプリが作れるからといってアプリだけで生活していけるわけではなかったので、仕事と並行して自分のものを作っていたそうです。最初は芽が出なかったのですが、転機になったのは、ツールアプリのマジックリーダーというpdf電子書籍リーダーアプリでした。このアプリは首を動かせばページめくりができる画期的なアプリで、障害を持った人が読書をしたり、料理をするときにレシピをめくったり、楽器を弾きながら電子化された譜面をめくったりすることができるアプリでした。それがリリース2日目にニュースジャパン(フジテレビ)に取り上げられ、グーグルグラスの次世代IT特集と一緒に報道され、評判になったとのこと。最終的には国連から賞をもらうほどになりました。いたのさんいわく、マジックリーダーは勝負はかけており、絶対にイケるだろう、との感覚はあったとのこと。その頃から人の前に出ることを意識して和尚の格好をするようになったそうです。

マジックリーダー開発のもう一人のリオ・リーバスさんとの出会いについては、もともとリオさんは名前が知られており、アスキーとかインタビューに出ていたそうです。和尚さんは直接会ったことないアプリ開発者の人たちと積極的・戦略的に人と会うことで、アプリ界でのし上がろうとしたとのこと。自分のアプリを用意し、意気揚々とOFF会に参加するも、最初はうまく人間関係を築くことができず、ツイッターでも色々言われたことを気にして悲しい思いをしてきたそうです。このとき絶対にアプリ界でのし上がってやる、と情熱を燃やしたとか。積極的出会い戦術で、リオさんやラッキーゲームズさんと出会って意気投合できたそう。一緒にアプリを作ろう、作ったアプリで世界を変えてやる!二人でアプリでノーベル賞とってやろうという高い目標を掲げたそうです。そしてマジックリーダーは実際に国連で表彰されることに。もっと自分自身のつくったものを知ってほしいというモチベーションがあったからここまでこれたそうです。

いたのさんの和尚の格好は一回見たら忘れません。名刺交換はしたのはいいけれど、名刺と人の顔が思い浮かばないことが多いのですが、和尚の格好と合わせることで印象に残るようになったとのこと。頭を丸めたのは、チュンソフトのころ。「」の発売が3回も延びたため、責任とるといってまるめて、そのあとずっと楽だからという理由で丸めたまんまだそうです。和尚さんは人との出会いに苦労をしてきたから、自分が開催するオフ会では初めて会う人に気軽に話せる、参加できる仕組み作りをしているとのことです。

いたのさんはゲーム作家という呼び方にこだわっています。ゲームクリエイターっていわれてもおじいちゃんおばあちゃんはわからないので、作家として名乗ることで業界以外の人からの理解が得られるからだそうです。いたのさんの世代は、ゲームはビジネスになることを見せてくれた世代で、いたのさん自身はゲーム作家という生き方を太くて確実な道にして次の世代につなげていきたいそうです。一人で作っているのが楽しくて、これで生きている。だから今のところ、コンシューマーのビジネスは考えていないとのことです。

現在のアプリ市場について、いたのさんは現在の市場は後進の人の生存確率が下がっていることを心配しているとのこと。そして自身も生存確率を上げることを意識しているとのことです。本を出しているのは、自分の生存戦略と更新の育成目的だそうです。いたのさんは後進が育たないと業界自体がやせ細ってくるので、業界を盛り上げるためにも後進を育てるのは大事なことだといいます。現在は大きい会社が大予算をつかってチャレンジしてくるプロダクトが増えており、なかなか個人クリエイターの軌跡が見えにくく、ユーザーがアプリに慣れて飽き始めていることもあり、生存していくのが難しいとのこと。昔ほどみんなランキング見たり、能動的にアプリを探したりしないので、面白いゲームを作ったら伝えていかなくてはいけないことを協調します。作る側としてはいかにいい作品、自分の作りたい作品をどう作るかに意識が行くけれど、ちゃんと売ること・商売のことも考えないといけないのです。

商売と作ることの両翼の関係を意識しなくてはいけない。生き方としてこの道を選んだのなら続けられないと悲しいし、ちゃんと食べていける道も考えなくてはいけない。今はアプリが溢れすぎたので、探せないという事情もある。ダウンロードしたけれど、このアプリは前に見たことがある刺激だな、というものが多く、一度リリース出来ても次につながらないことも多い。新しいのを作っていたとしても、アイコンとスクショだけではそれが伝わらないことが多い。

現代自分のアプリを広げるには、SNSや友達からの口コミでアプリがバズる事が重要で、いたのさんもそれを意識してアプリを作っているといいます。

今は友達とか口コミの力が強い時代。今の人はランキングを見ていないし、ランキングからのダウンロード数は減ってきている。SNSで広がるのが理想。私もSNSへのバズりを意識してつくっている。5年前にそれを意識したアプリを出して、リリース2日目にランキング1位をとれた。ゲームでも、シェアしてくれるときにシェアしてくれるか、どういったものをシェアするか、そこまで考えて作っている。友達に紹介するとき、アプリのスクショだけを友達に送る人がいるから、そのスクショからでもアプリタイトルが検索できるように、スクショ撮ったときにロゴが乗るように工夫した。

いたのさんはどんどん大きくするビジネスはまだ考えていないそうです。個人が食べていけたらいいけれど、ただ、ちょっとは贅沢したい程度には稼ぎたいとのこと。欲を言えば自分の好きなゲームを作って、作ったゲームですごい、儲けたい。ただ、欲望を1個だけ叶えるのなら難易度は高くないけれど、欲望を2つとか同時に解決させるとなると難易度が高くなってしまうとのことです。アプリを作る際には、バランスはいつも考えていて、このアプリの主目的は何か?を常に考えいるそうです。自分の好きをぶつけるのか?収益を得るためか?サラリーマンで作っている人とは違うので、自分の目指すターゲットが3つあったらどれにするか迷うそうです。今回どれに絞るか意識していないとブレて、全部一つで叶えようとするとなかなか上手くいかない話が印象的でした。

いたのくまんぼう 「a[Q]ua(アキュア」

 
いたのさんいわく、生きるのに必死なので、作ったものだけみるとバラエティに富んでいるが、作家性としてみるとバラバラな作品が多くなっているそう。いたのさんがリリースしたa[Q]ua(アキュア)(水をテーマにしたパズルゲーム)の話では、水の動きにこだわり、遊び方も人それぞれに誰が遊んでも面白いものを目指したそうです。このアプリはいたのさんの好みが80%つまったもので、水の動きを使った、やさしい・かわいい・家族をテーマに制作したところ、Appleの担当者が意図するところをキャッチしてくれて、フィーチャーしてくれたそうです。担当者がアプリを使って家族で遊んでいる姿が想像できた、とのこと。これにはいたのさんも嬉しかったそうです。水滴が流れるのが美しい演出ですが、そもそもいらない演出で、なおかつ負担が大きくバグも出るものでしたが、ああいう凝った要素を入れると人の心に残る作品になるのだそう。

いたのさんは自治体初のゲームで町おこしプロジェクト「ゲームを作るための街 魚津市」の立ち上げメンバーに参加しているとのこと。ゲーム開発において、地域格差は減ったものの、人脈・仲間の面で、苦しんだとき、落ち込んだときに一緒に飲んでくれる仲間ができる環境は重要とのことです。

ところにょりさん

ところにょりさん「ひとりぼっち惑星」

 
もともとゲーム会社にいたわけではなく、個人開発でゲームをリリースしているというところにょりさん(本名未公開)。大阪芸大でフラフラしていましたが、大学3年になったとき就活という現実に負けたそうです。2016年のことだそうですが、就活が嫌で仕方なかったそう。就活は辛く、そもそも電車が苦手で仕方なくて、実際秋葉原の黒川塾の会場に来るのに電車に乗った際にも、吐き気がしたとのこと。(新幹線は大丈夫だとのことです。)

それで、「なんとか一人で家で引きこもってなんかお金が稼げる仕事があればなぁ。」と考えるに至ったそうです。もともと文芸学科に属し、小説家になろうと思っていたのですが、現実的に考えて無理だなぁと思うに至ったとのこと。能力的に無理なこともあるし、現状の出版界のアレコレ、要するにしがらみだったり稼げないことだったりを考えた結果、小説家1本で生きていくことは諦めたそうです。

小説一本で食っている人はどれだけいるのか考えた時に、掛け持ちの人ばかりでした。こんなすごい人がなんでバイトしているの?っていう状況で。

「小説を書いててもしゃあないなぁ」と考えるに至ったところにょりさんは、このころゲーム開発と出会い、そのゲーム開発の楽しさを感じ始めていました。ゲーム開発は独学だそうで、もちろん最初は作る方法すら知らなかったそう。

ゲームを作るかって状況になり、当時は(小説にもゲームにも)どっちにもいけない状態でした。ゲーム制作の高い壁は感じていて、やけくそでつくってみました。やってみたら意外とできた感じです。(今はUnityとかゲーム制作ツールが普及しているので)和尚(いたのくまんぼう)の時代ではできなかったと思います。

ゲーム歴は友達のみんなでスマブラをしていたぐらいで、そこまでディープなゲーム体験はなかったそう。RPGというゲームジャンルは一回もプレイしたことがなかったとのことです。「一人で家で生活をして、なおかつ自分の文学的欲求を満たせるものはないか。そして同時にお金になるものはないか。」と考えた時にそれがゲームだったとのこと。

ところにょりさんがゲームを作り始めた原体験はアプリにありました。2008年にiphoneが出て、高校生だったところにょりさんは発売当日に買ってこりゃすごいと感じたそうです。ゲームというよりは、スマートフォンアプリに対しての面白そうという感覚はずっと抱いてきたとのこと。そこで自分もスマートフォンで自分のゲームを出したいと思ったときに、勉強してみたら今はUnityがあるし、参入のハードルが低くなっているし、和尚本(いたのくまんぼうさんの著書のこと)もわかりやすかったのでなんとかなったとのこと。

ところにょりさんは内省型で、作家性が強いことを自負しているようでした。ゲームを作る時に、ダークで悲しい世界観やテイスト、心の風景がどうしてもでてしまうそうです。

普通にゲームをプレイする側としては明るくポップなものも好きだけど、昔から映画が好きでそれが影響しているからか、自分が作るとなるとこれじゃなきゃ嫌だ、というものがあります。

「ところにょり」という名前ではファンもこういう作風を求めているだろうし、自分もそれを尊重したいし、自分の表現を寄せていくこともあるとのことでした。

ところにょりさんは「いいものを作って商業的に成功するノウハウを念頭に置きながら、いかに自分の作りたいものをつくるかという逆算的成功のノウハウありきで作る人がいたとして、今はそれが簡単に成功する時代ではない。」といいます。だから、すきなものを好きなように作り、ある程度の人に使ってもらえればいいとのことでした。ゲームを作る上で、自分の好きなことができるか?が重要で、好きなものを作りつつ、お金に関しては今はなんとかなっている恵まれた状態だとか。それは一人開発体制であることが大きくて、一つ稼いだもので次に回せるからできるとのことです。

好きなものをつくって、また好きなものを作って行く。ビジネスとして考えるときどこを目標にするかですが、ぼくとぼくの周りにいる人がなんとか普通に生活できる、普通に生きることができて、かつ自分が好きなように生きれるのが理想です。そのために、自分の好きなことがどれだけニッチであるかを意識しています。ニッチでありすぎると生活できないし、かといって剣と魔法のRPGの世界を作ったって、自分では無理だ。個人でやるときに、僕が好きで、ある程度そのジャンルが好きな層がいることを念頭に意識的に選び、結果としてちょうどいいぐらいのところを狙っています。

ところによりさんは独学で、ゲーム開発は最初はXcodeでSwiftを勉強していてたそう。当時はUnityを知らなかったため、作るのならXcodeと考えていたのですが、しかしアンドロイドでもリリースしたくて、最終的に全てのフォーマットに出したいからUnityで作っているそうです。主に本で勉強しているとのこと。Swiftをある程度理解し、UnityでC#といった感じで書き方は変わるが、中身の考え方は一緒だから一つわかれば移行はしやすいといいます。何冊か買って読んでおき、和尚本も参考にしつつ脱出ゲームとか同じように作ったとか。ある程度の段階に行くと「これ、もう作れるな」という瞬間があって、本での学習をやめ、作り始めたそう。創作アイディアの閃きについては、小説を書いていたのでその経験を活かしているとのこと。

どれだけ自分がいろんなもの見て聞いて、それを育てているかが重要です。高校中学とかは小説、映画を見て過ごした影響もあると思います。もともと培った“いいものをいい”と思う気持ちが大事です。ゲームとして具現化するときに作りたいものがあるかは重要です。参考本はあるけれど、使わないとすぐに忘れます。自分が作りたいこういうゲームがあって、必要な機能さえわかれば良いです。ちがうジャンルに関しては、この「ところにょり」という名前でやる限りは作風を守るつもりです。僕としてもこの名前に対しての印象から大きく離れるゲームは作れないですし、作りたくもないです。ゲームよりも作家性を守りたい。ファンが持っているものだったり、印象を崩さないようにしていきたいです。

ところにょりさんは作家性を重視しているため、別の名前で別のことをしているそうです。

好きなことは一つじゃない。いろんな好きなもの、したいことがいっぱいある。名前で使いこなしています。今はツイッターとかでサブ垢を使ったり。自分を一つのアカウントで限定するのではなく、おじさんが美少女を演じるように、別の皮を着て、別のことをするのも良いと思います。ぼくは作家性に対して担保することはしています。作家性があることの強みであり、縛りにはなりますけれど。作家性を活かすことを重視しつつ、別の名義で別の事をすることは小説の世界でもしている人はたくさんいますから。

中道 慶謙さん

プレイヤーの深層心理から武器を具現化して戦う3Dアクションゲーム『Last Standard』

中道さんは新しいインディーズのチャレンジをしている最中のようです。どんなゲームを考えているかと言えば、SNSの投稿解析により、プレイヤーの武器を生成し、それで戦うアクションゲームを企画制作しているとのこと。もともと京都大学で神経科学・脳科学を専攻していました。京都大学を大検で入って、それなのに中退。そのあとソニーミュージックのレーベル契約を結び、ゲームソフトを出す準備をしている。破天荒な生き方でいろんなツッコミどころも多い彼ですが、なぜ今に至ったのか、その話を聞けました。

きっかけは、自分でも本当はよくわからない。そもそも神経科学をしているのとは別に法学の勉強をしていて、国際人道法の裁判の準備をしていました。ツイッターを見たら、Unityでゲームを作っている友達をみたので、もともとゲームは好きでやっていたので、自分でもやってみようとなった。Unityは初心者にとっつきやすかったこともあり、やってみたら全然、こんな素人にもできるんやってなった。勉強の大会中にも関わらず、ビビッとなって、これに決めた。できるっていうのがわかった時点でアイデアがどんどん沸いてきた。その日から大学に行かなくなり、大学を辞めた。あっさりだったけど、Unityは人の人生を変えた。

中道さんは大学生活に未練は全くないそうです。京都大学に入って神経科学を専攻していたのも人間の脳を作りたかったからだといいます。AIといったコンピュータの世界の話ではなく、物理的に脳の構造や再生に興味があったのと、自分が思うものを実現させたい場合、学問の世界では40年ぐらいかかることに悩んでいたそうです。「これはたいへんやなぁ」と考えていた時に、「ぱってうごかしたら、自分で考えたものが直ぐに反応として出てくる」ゲーム作りにビビッときて、学問の世界は正解があるのかすらわからない苦悩の世界であり、ゲーム作りの世界の「パッとやったらすぐに動く」ことに惹かれたといいます。

「キャラクターが十字キーをおしたら動くことへの感動。うぉ、動く!それや!」

自分が考えた通りの反応が返ってくる、その瞬間が楽しすぎて「これがずっとできるんだったらこれしかないなぁ」って思ったそうです。大手の会社SonyMusicと1作目からチャレンジした背景については、「そもそも最初になぜインディーズを選んだかについてよく聞かれるけれど、インディを選んだ覚えはない」とのことです。「面白いゲームを作りたい、それだけだった」。たまたまゲームショーに自分の未完成の作品を出したら、目をつけてくれたのがSonyMusicさんだけだったとのこと。

席が空いていたので、まずはTokyoゲームショーに出してみようってなり、そのために会社を作った。理由はとにかく出したかったから。出したいのにここでやめるなんてことはできなかった。当時大学在学中で、大学の友達に法人格の作り方を教わって会社を作った。その時は未完成品を出して、この先に繋がる未来を示したかったけど、出したあとにゲームショーに出す作品はみんな完成された作品ばかりだったから、ちょっと失敗して。当時は「なんで分からんねん!こうした未来がつながるってどうしてわからない!」と思っていた。そこにソニーミュージックの人がいいね!と言ってくれた。SNSとかを使ったシステムが面白くて斬新と言われたけど、それだけだとゲームとしてはもちろん商売にはならないので、それだけではないつもりだった。しかし、未完成品だったので、話をしてくる人の多くはそこで(展望が)止まっていると認知されて失敗した。

中道さんはどういうビジネスを考えているのか。中道さん曰く、現状は訴求するパイの取り合いが起きていると言います。ゲームをするには、わざわざテビの前に座り、コントローラーを握って貰わなくてはなりません。漫画、アニメ、ゲーム、ネット、テレビと数多くの娯楽があふれる現代において、そもそもゲームに向き合ってくれるお客さんの取り合いをしていても消耗するだけでは無いか、とのことです。

今話題のeスポーツについても、「今フォートナイトとか出ているけど、長い期間ちゃんと練習して準備した人しか参加出来ない狭い世界」が嫌だそうで。

eスポーツでFPSなどの銃のゲームが来月大会になりますといって、新規参入する気になって練習しても、大会に出られない&勝てないんじゃ面白くない。人は練習しても勝てないとそのゲームを新たにプレイしようとする気は起きないと思う。これまでのゲームとは違う、初心者でも上級者に勝てるような、初心者には上級者の手の内が見えて勝てるような、新規参入する人にもやりたい理由を作れるような新しいゲームマーケットを作りたい。

中道さんは様々なジャンルでSNSとの連動・拡張性を考えていて、チーター(プログラム改造して有利に進める人)・サブ垢対策のために、いろんなゲームに紐づけられている個人の情報によって、内容が変わってくるこれまでにない対戦型ゲームを作りたいとのことでした。

質疑応答

レビューを意識するか?

ところにょり:レビューは読みはするが、問題があるものなら教えてもらう感じで、多分自分はこの中では全く向き合っていない方だと思います。感情入れて読まないことが大事。これは感情に左右されないためです。改善点はしっかり頭に入れて次に繋げるが、誹謗中傷もたくさんあるから、いちいち聞いていても仕方ないといった感じです。知るかって感じですね。だから、この中ではレビューにあんまり向き合っていないと言えるかもしれません。きちんとライターの人とか、しっかり書いてあるものはしっかり読みます。アプリストアは完全匿名なので、色々言われたところでそこまで聞く必要ないと思っています。

和尚:全部ところにょりさんに言われた感じです。長くアプリ開発をしていると、そこにたどり着くんですね。ストアのレビューは誹謗中傷含め一通り目を通しますが、改善点は目にとどめたりしています。よく周りに言っていますが、レビューに「死ね」って書かれてからがスタートです。だいたい「死ね」って書かれるし、どうしてもみちゃうから「えっ」てなります。これに傷つかないためには、「死ね」って読んだら自分の中で「死なないよ」って否定することです。だって死ぬわけないんだもの。「死ね」ってなんの意味もない言葉だから。世の中には誹謗中傷の達人がいて、めっちゃ心をえぐってきます。それはもちろん傷つきますが、それを癒すために、昔の溜め込んでいたスクリーンショットを見直すっていこともしています(笑)。いいコメントや気に入ったレビューはスクショをとって残したりします。

(黒川塾主催の黒川さんも勇気が出るスクショを保存しているそうです。エンタメステーションなど様々な媒体で活躍している黒川さんですが、黒川さんも嫌なコメント(特に黒川が書いたのかっていうコメントで、記事自体はいいが、黒川が嫌いっていう感じのもの)を見て嫌な気持ちになることはあるのだといいます。)

自分の気持ちのコントロールの技を持つことが重要です。アプリが100万売れれば、1に対して100万の構図になります。これは流石に全てに真正面から対応していくのは無理です。自分が次の作品を作れなくなることがファンにとって悲しいことだから、感情のセルフコントロールをしないといけない。

中道さん:ツイッターのコメントやYoutubeのコメントは全部読んでいます。幸いなことにまだリリースしていないので、結構あるコメントは実際にプレイしていただいてから貰ったコメントではありません。だから自分たちの伝え方が悪いと学べるから良いです。人によって捉え方は全然違いますから。

海外市場はどうするか?

中道:そもそも海外とか日本とか意識していなくて、一つのものをかってに区切っちゃってるって感じです。そもそも日本は日本という一つの友達の集団と考えています。

いたの:アプリは日本でだけ売れていても食べていけるのが素晴らしい。海外ではそんなに売れていないです。このままではいけないよなぁという焦りはあります。海外では、クソゲーを出しても日本だとクソゲーと酷評されますが、海外だとナイストライと受け入れられる土壌の違いはあります。デザイン面とかでは海外市場も意識して作っています。

ところにょり:日本でしか配信しないので、日本市場しか考えていません。海外に向けて作るよりむしろ、全部一緒だと考えています。日本も世界も変わらないって考えもありますが、自分は人はある程度自分に区切りをつけたがっていると思います。自分は日本人である、自分は映画の中でフランス映画が好きだからハリウッド好きのあいつとは違う、とか、他の人とはと違うんだよってわざわざ区切りをつけたがっている=ニッチになりたがっていると思っています。だから自分はニッチな層のあなたに向けてこのゲームを作りたい、「これは僕のような人のために作られたゲームなんだ!」と思ってもらえるものを作っていきたいです。そもそも英語がわからないので僕がすぐにコントロールできる状況にしたいです。テキストが想像できないし、そもそも全部ひらがなでやっているのでニュアンス、雰囲気、作風とか英語にして変わってしまうところまでは作者として責任が取れないからです。だから、日本語だけ限定にして作っていきました。翻訳された本の中には作者に敬意を払っていないっていうのもあるし、サーバーを別途用意したり、海外展開自体めんどくさいのもあります。でも次作るものは限定接続で、海外にいる僕のゲームが好きそうな人たちに作るのも考えています。

モチベーションの保ち方

ところにょり:締め切りを自分で設定、作るしかない状況に持って行くことが重要です。自分のために自分の好きなゲームを作っているので、その意欲が湧いてこなければっていう感情は取っ払うことが大事です。締め切りは創作活動において重要で、自分にとっては(ゲームショーなどの)ゲームのイベントが明確な締め切りになっています。本、小説、漫画は締め切りがあるから完成され出版されます。世の中の本は締め切りがなかったら10分の1になっていたという名言もあります。今自分が作った名言ですが(笑)。

中道:モチベーション下がり、なんかちがうな、というときはある。その時は真剣に自分のゲームをしてみて、ほんまにおもしろいんか?どっかアラが無いか?を一生懸命探す。真剣に見直してみるとそういえばこれもあれやな、とか雪崩崩し的にやらなければならないことがみえてくる。全然気持ちよくない、これでいいのか?録画してみて、動画だけ見て面白いと言えるのか?判定(当たり判定やエフェクト)はこれでいいのか?など、自分のやること増やして乗り越えます。

和尚:モチベーションには頼っていません。人によってモチベーションが外部要因、内部要因の人がいて、「ライバルがすごい、あいつすげぇ!にくったらしいからそれを超えるのを作りたい」というのが外部要因。私はゲームを作るのは昔から好きだったので、ほっといてもモチベーションが上がる内面型でした。朝ベッドから起きて、パソコンの前に座ったら自動的に作り始めることが習慣になっています。気持ちに頼らない、習慣化を行うことが大事です。

発見

それぞれ個性的な3人のクリエイターの話が聞けて、たくさんの発見がありました。作家性を大事にするのか、商売と自分の作りたいものどちらを優先するのか、それぞれの立場から色んな意見が聞けました。モチベーションの話では、自分で締め切りを設定すること、気分に頼らないことが印象にのこりました。何かしらクリエイティブなことを継続するには、自分自身の気持ちの問題・コントロールが重要です。そのために締め切りの設定や習慣化することで考える暇無く行動に移せるような流れを作れるのが大事だな、と感じます。中道さんの大検とって京大行っただけでもすごいのに、ゲーム開発に目覚めて中退してゲームショーに出品する流れは行動力がものすごいなぁ、と感じました。それに対して、ところにょりさんの内省的で作家性・世界観を大事にする話も興味深く、いたのくまんぼうさんの今を生きるための生存戦略は参考になりました。ゲストがちょうどバランス良くそれぞれ違った特徴を持っているのが良かったです。

Unityが登場し、ゲームツールの民主化が進んで個人のエントリーが増えた時代です。スマフォが出て、個人開発できる畑があって、タイミングよくUnityがでました。ゲーム開発で有名なアンリアルエンジンも個人でも使える時代です。作りたいと思ったものをたいがいは実現できるようになりました。多くの人が行錯誤しながら自分のアイデアを具現化し、世の中に問うている時代。私も何か自分のアプリをリリースしてみようか、と思いました。

◆参考

黒川塾61概要ページ Peatix
いたのくまんぼう(Twitter)
ところにょり(Twitter)
『Last Standard』ハンサムクリエイター・中道慶謙氏の実家を直撃! エンタメステーション
Unity ユニティ
UnrealEngine アンリアルエンジン

 
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