黒川塾59 「eスポーツの展望とゲーム依存症を考察する会」に参加してきた【前編】eスポーツのこれから 法律、JeSU、施設、利権について

2018年4月26日(木)、東京ネットウェイブ(千駄ヶ谷)で開催された黒川塾59「eスポーツの展望とゲーム依存症を考察する会」に参加してきました。今回は前半として、eスポーツについて学んだことをまとめます。

【後編】ゲーム依存症についての話はこちら

ゲスト

木曽崇 (カジノ研究家)
山本一郎 (作家・投資家)

はじめに

近年、テレビゲームの現場ではeスポーツというゲームを競技として捉える機運が高まり、温泉が湧き出たような勢いと熱量で世界的なムーブメントとなっています。アメリカでは賞金1億・2億の大会が開かれたり、Twitchというストリーミングサービスを用いて、ゲーム実況動画配信で月数千万稼ぐプレイヤーも存在するようになりました。しかしながら、日本は賞金や施設の展開が法律規制の問題などで乗り遅れている現状があります。各種eスポーツの団体も存在していますが、スポンサー集めや利権のしがらみなどもありなかなか前には進めていない状況です。今回の黒川塾ではカジノ研究家の木曾崇さんと山本一郎さんをゲストとして呼び、これから先の日本のeスポーツはどうなっていくのか議論が交わされました。

各種団体とJeSUについて

まず、eスポーツを語るに当たって、今年2月1日に発足した一般社団法人 日本eスポーツ連合(JeSU:Japan esports Union)の存在は欠かせません。

日本eスポーツ連合は、(中略)既存のeスポーツ3団体[一般社団法人日本eスポーツ協会(JeSPA)、一般社団法人e-sports促進機構、一般社団法人日本eスポーツ連盟(JeSF)]を統合し、更にはIPホルダーであるゲームメーカー各社が加盟する一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)、及び一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)の全面的な協力を得て、一体となって団結し設立した新たな組織であり、共通した目標のもと日本のeスポーツ産業の振興を目指していきます。
引用元:https://www.famitsu.com/news/201802/01150946.html
参考:https://jesu.or.jp/contents/union_summary/%E8%A8%AD%E7%AB%8B%E8%B6%A3%E6%97%A8

今回の黒川塾ではJeSUの取り組みを中心に日本のeスポーツについて多くの議論がなされました。

eスポーツが抱える厳しい法律問題とJeSUのプロライセンス制度

日本のeスポーツは大きく3つの法律規制(景品表示法、風俗営業法、賭博罪)によりがんじがらめになっています。これらの法律があるため、日本のeスポーツは海外のような高額賞金が出せず、施設展開も難しいものとなっています。

例えば日本の法律はオンライン大会には十分なフォローアップされておらず、同じゲームの大会なのに海外だと高額賞金が出せて、日本だと賞金が出せない状況になり、地域によって有利、不利な差が存在しています。

◆プロライセンス制度問題。JeSUが問題を複雑なものにしてしまった。

 
法律問題への対策としてJeSUは賞金を出す枠組みとしてプロライセンス制度を設けました。しかしここで、大きな齟齬が生じてしまいます。消費者庁の見解によると、本来規制が入るかどうかを判断する基準は「仕事の報酬という形で金品が出ている限りは、規制に入らない。それが仕事の報酬に入るか否か。」であり、興行として成立した仕事として金品の譲渡が行われていれば良いのであって、プレイヤー側にはないのです

JeSUは賞金とプロライセンス制度を導入しようとして、プロライセンスが賞金を取るための資格だと主張してしまったから、本来プロライセンスと賞金は関係ないのに問題が複雑になってしまったのです。

プロ制度についてはゲームタイトルが限定されてしまっていることの指摘や、eスポーツは誰にでもできるのが強みであり、わざわざプロとアマチュアで線引きする必要があるのか、という意見が話されました。認定を貰っていない人間はお金をもらえないのか?プロとアマを区別するのは何になるのか?という意見について、有名格闘ゲーム「ストリートファイター」のプロプレイヤーももちさんの妻チョコブランカさん(参考)の話が出て、彼女は世界ランキング上位に載るプレイヤーではありませんが、女性プレイヤーとしてゲームを盛り上げプロモーションという面で貢献してきた人物とのこと。こういう人物に対してプロライセンス制度は対応できるのか、の疑問が提示されました。

景品表示法は、“誰にあげるか”という人ベースの問題では無く、大会が興行=ショービジネスとして成り立っているのかを見るのであって、参加するプレイヤーが技術的にどうとかは関係ないのです。本来JeSUがすべきはプロライセンス制度導入よりもイベントがショービジネスとして成立するかどうかを見定めるイベント認定制度ではないか、とのことでした。

五輪競技化の話とスポンサーをどう獲得していくのかについて

eスポーツの五輪競技化についての話では、プレイヤー人口の問題があげられました。五輪競技化を考慮するなら各国代表を入れる必要があり、競技として5大陸に広く流布されているかどうかが重要になります。普及という観点で見ると日本のゲームは家庭用ゲームを中心に普及していた歴史があるので、PCゲームを中心にゲームが普及してきた諸外国と比べて大きく遅れをとっています。(アフリカの子供でもpcゲームやスマフォゲームは遊べるのです。)

タイトル不足の話では、日本が持つ世界的に認められうるタイトルは「ブレイブルー」、「鉄拳」、「ストリートファイター」ぐらいで、5大陸で売れるタイトルを持っていない日本は厳しい状況とのことです。何より日本は中東に売れるタイトルが無いのが問題で、オリンピックみたいなワールドワイドで認められ得る男女年齢区別無く遊べるコンテンツは少なく、血が出る表現、格闘表現、特にセクシーな女性が殴られるコンテンツはオリンピックでは到底認めれないとのことでした。任天堂がやっているような、年齢男女区別無くみんなで遊べるチューニングが必要とのこと。

eスポーツを盛り上げていくのに欠かせないスポンサー獲得の話では、一般企業とゲームはスポンサーの相性が悪い話がありました。「法律が整備されていないあぶない業界では?」と思われ、スポンサーさんが逃げてしまう可能性も大きいのだとか。また格闘ゲームはヤングカルチャー・男性向けカルチャーであり、そもそも暴力・性的表現のあるところにスポンサーが出資するか?という疑念もあります。男女が入り乱れて戦う対戦動画で、女性キャラクター倒れているところにうちの会社の広告を入れるな!との話もあるとか。スポンサーに対する説明では、イメージが重要であり、ゲームの結果に賞金を出す商売だとカジノのようなギャンブルのイメージがついてしまいます。賭博の認識が強い雀荘と一緒の扱いになってしまうと、ゲーム=賭博と認識され、健全な発展は難しくなってしまうとのことでした。

eスポーツを盛り上げていくために リーグ常設化の話

現行法の枠組みの中でeスポーツを盛り上げていくための方法の話です。まず、国内リーグを常設すれば良いとのこと。継続的にリーグとして開催していけば、プロ野球と同じ状況になります。国内限定として、場を限定することで賞金という扱いを無くし、役務報酬(仕事として払う報酬)としてお金を払えるようになります。その場合、報酬の限界はどうなのか?との議論が必要で、一回の大会で一回の大きな賞金だと難しく仕事の報酬として与える枠・仕事の報酬という範囲は具体的にはいくらなのかの定義、見定めが重要になってきます。一般的な商慣行のなかではアメリカの大会のような1億、2億という金額は仕事の報酬とはいえないのです。法律としては、一般的な仕事の報酬としてどうなのか?がポイントになるとのことで、この点から考えても海外と比べて日本のeスポーツの賞金額は少ない傾向が続きそうです。プロ野球はシーズン制度で興行ビジネスとして成り立っているからこそ選手への多額の報酬が成立しており、選手は限定された期間の役務に対する報酬を受け取り、放送されることでさらなる利益が入ってくる仕組みがあるからこそ成り立っているのです。

eスポーツ施設の問題、風営5法の問題

賞金の次に法律上クリアしなくちゃいけない課題は、「eスポーツ施設」についてです。現行法でeスポーツの施設展開は非常にシビアであり、現在あるeスポーツ関連の施設もいつなくなるかどうか分からない状況だとか。その一番の原因は風俗営業法に引っかかってしまうことでした。

今の法整備で、Eスポーツの施設展開が難しい理由。

 
施設の問題を解決するためには、シンプルに風営法の許可の中でやるのが一番簡単です。風営法は一言で言えば「営業するには許可を取りなさい」というシンプルなルールです。しかし、満たさなくてはならない要件がeスポーツの実態とマッチしないのが問題です。

1, 立地要件 住宅地には施設は作れない。
2, 人的要件 利権者の中にヤクザ関係の人間がいないか厳しくチェックされる。
3, 構造要件 ついたて、目隠しをたててはいけない。(中で賭博をしてしまうから。)→ゲームの機体サイズと配置の問題が出てくる。
4, 営業時間の問題

eスポーツ施設は「ゲームセンター」として風営法に従って許可を取り営業することが最適となりますが、その場合深夜営業はできないのが致命的になってきます。深夜営業はeスポーツでは海外プレイヤーと戦うために、時差の壁を乗り越えるためには必須だからです。これを避けるには特例(ホテルの横にあるゲーム機→朝5時まで営業可)が必要になるのですが、宿泊施設が必要になったりややこしい問題が出てきます。

他にもどのぐらいまでゲーム機を置いていいのか。PCをゲーム機として扱うのか、汎用PC(ワープロマシン)でみるのか、の線引きがまだできていません。風営法の枠組みの中で運営しようとすると制限が厳しいのが現状です。

JeSUに対する期待。やってほしいこと。

JeSUに対して多くの期待の声も数多くでました。これまでのeスポーツ関連の3団体が統合してゲームを盛り上げるために色々やっていくぞという志は素晴らしいとのこと。

法律関係
現行法枠組みの中でeスポーツを盛り上げていくのは限界があるので、ロビー活動をして法的整備・法律の拡大解釈を促進して欲しいとのこと。国内で消化できるビジネスの上限を考えると、まず入場料をとれない時点で運営が難しくなります。スポンサー獲得もまだまだ難しい状況です。東京五輪に向けてどうするか、消費者庁にどういうものが許されるかをきちんと時間をかけて、官民一体となって音頭をとり、法律の解釈を考える流れになればよいとのことでした。山本さんからは例えばeスポーツ特区を作ったらどうか?との意見もありました。

規制と利益配分の統一化
格闘ゲームの大会では許諾料をメーカーに支払いますが、その金額がメーカーによって違うし、ゲームによって全然違うので利益配分を統一する基準作りが必要とのことでした。配信メディア例にあげるとTwitchなどのゲーム配信は各国地域によって差がでている状況です。配信ビジネスではどのぐらいお客さんを集められるのかが数値で分かります。利益配分の基準を決め、実況者・メーカー・メディアといった利権を持つそれぞれの権利者の利益配分のルール作りをしてほしいとのことです。

権利関係の問題
ゲームは権利物であり一時期ゲーム配信はグレーゾーンでした。しかし任天堂が英断をして「ゲーム実況は決められた放映・配信プログラムのルールに沿ってくれればOKです」としてくれました。こうしたことがJeSUには出来るのか、という疑念です。JeSUには日本のコンテンツじゃない世界的な中華・西洋で作られたPCゲームコンテンツを日本に普及させていくことが役割として期待されています。しかし、日本のゲームメーカーの親方を数多く抱えたJeSUにそれができるのでしょうか。具体的には、世界的にグローバルなサッカーゲームコンテンツは「FIFA」であり、eスポーツを日本に展開させて行くには「FIFA」を展開していくのが当然の流れであると考えられますが、同じサッカーゲームにコナミの「ウイニングイレブン」があります。そのコナミを抱えたJeSUはコナミの利権にとらわれずに「FIFA」を展開させていく決意はあるのかどうか、ということです。「FIFA」がeスポーツの競技として選ばれたら、JeSUはどう立ち回るかが注目されます。

多くの意見がでましたが、JeSUが悪いとかどうとかではなく、今の法律でやれることはやり、JeSUには中長期のプラン(選手の海外派遣の仕組み作りや、オリンピックなど)を見据えた対策をしてほしいとのことでした。

フェアな話がしたかった

今回黒川さんは黒川塾59を開催するにあたり、フェアに話し合いがしたかったといいます。本来ならばJeSU側の立場の人(浜村さん)にもきていただきたかったとのこと。JeSUが推し進めているプロライセンス制度について、賛成反対を2名ずつ集め論理関係や討論がきちっとできる形にしたかったとのことです。しかし、残念ながら来ていただけなかったとのことでした。

【後編】ゲーム依存症についての話はこちら

◆参考

黒川塾59「eスポーツの展望とゲーム依存症を考察する会」
木曽崇 Twitter
山本一郎 公式ブログ