【書評】ゲームは子育てを助けられる ゲーム制作から考える子育て攻略本


【書評】ゲームは子育てを助けられる ゲーム制作から考える子育て攻略本
今回紹介するのはゲームプランナー菱沼 寛章さんの「ゲームは子育てを助けられる ゲーム制作から考える子育て攻略本」です。著者の菱沼さんの経歴もなかなか凄く、旧スクウェアで「ファイナルファンタジーVIII、X、X―2、XIII」、「キングダムハーツ」、そして任天堂では「進め! キノピオ隊長」、「スーパーマリオ3Dランド、3Dワールド」、「スーパーマリオオデッセイ」など家庭用ゲームのメジャータイトルに関わっていた人です。

ゲーム制作でのノウハウを他の分野に応用することをゲーミフィケーションと言いますが、本書はゲームと子育てを結び付けた内容となっています。子育てとタイトルについていますが、内容はかなりゲームデザイナーの思考が言語化されたものであり、ゲーム作りや人の心を動かすサービス作りに興味がある人にはかなりお勧め出来る内容です。

ゲームプランナーの思考が言語化された一冊

著者の菱山さんはゲーム作りと子育てを経験していくうちに、両者には共通点があるのでは気づいたそう。生活必需品ではないゲームは、多くの人に遊んで貰おうとたくさんの仕掛けが考えられています。「興味が無い人に向けて、何かをやって貰う。」そのために必要なのがぱっと見で興味を惹き付けることであり、一度手に取ったあと継続して没頭できる面白さです。

本書を読んでいるとゲーム作りと心理学はとても相性が良いなと思いました。なぜ人は熱中するのか、没頭するのか。何が面白いと感じ、自発的にその行動をさせるに至るのか。それが丁寧に言語化されています。

誰かに何かを「やってほしい」ならコンセプトを絞り込め

子育てにおいて自分の子供に「○○をしてほしい」という親の欲求、これはゲーム制作でも共通した問題で、何をプレイヤーにやって欲しいのか、そのコンセプトを明確にするのが重要だそう。あれも、これも同時にやらせようとするのは上手くいかなくて、ちゃんとやらせたいことを絞り込むこと。基本的に人間が一度に出来る事には限界がありますから、絞り込むことで行動しやすくするのが重要です。

「面白そう」から「面白い」という感情へ

ゲーム作りではキチンとした遊びを設計してから「面白そう」な部分を宣伝してユーザーを引き込んでいきます。「面白い」体験や経験も「面白そう」と伝わらなければ手に取って貰えません。

本書では、ゲームで言う「面白そう」の例として、「日常でできないことができること、日常でやっている好きな事の延長ができること、自分の能力が活かせそう、自分の好奇心や興味が満たせそう、空いた時間が上手く生かせそう、既に定番となっている遊び(ルール)で面白そう」といったものがあげられています。

まずは面白そうと手に取って貰えることが重要ですが、もちろん手に取った後の継続も重要です。

最初はとにかく難易度を下げて。共感、わかりやすさ、シンプルかつ具体的に。継続するためのレベルデザインとは。

何かをはじめる時、特に最初の段階では分かりやすいこと、シンプルかつ具体的なもの(わかりやすいもの)が好まれるのだとか。最初の段階こそ丁寧なサポートが必要です。

分かりやすさのためには「共感」が大事ですが、そのためには普段日常で体験している無意識の積み重ねに遡及するのが良いそう。例えばゲームのポケットモンスターは虫取り少年の「虫集め」の面白さを原体験としていますし、ゲームでよくあるステージギミックのトゲは先っぽが尖っている=痛いからダメージをくらうだろう、といった感じで日常の体験から連想しやすい仕掛けがあるといいのだとか。言い換えれば、「これからやろうとする何か」と「本人のこれまでの人生経験(積み重ね)」との共通点を見いだして繋いであげるということでしょう。

そして、何かを継続する為には適度な難易度調整(レベルデザイン)が必要です。最初から敷居を高くしてしまうと苦痛だけが大きくなってしまうので、徐々に上達する喜びや成長を感じられるようにすることが重要です。難易度とご褒美のバランスも大事ですが、本書を読んで印象的だったのはやはり人は成長する事で喜びや達成感を得て、それをモチベーションにしていくんだな、という気づきです。最初は誰もできないけれど、「小さな出来る」を積み重ねることとで達成感と喜びを感じられるのが人間の強みと言えます。

感想:ベテランゲームプランナーの思考から学ぶモチベーション(やる気)の心理学

「子育て」の本を銘打っているけれど、中身はかなり濃密なゲームプランナー(ゲームデザイナー)の思考が詰まっている本です。

特に本書で述べられている「面白い・面白そう」という概念は個人的にかなり大事だと思っていて、人がなぜ興味を引かれるのか?どうしてその対象に没頭するのか?を考える上で大きな思考の種となってくれると思います。

本書を読んで思うのは、大人も子供も関係なく、人にとって「新たな分からない領域に挑むのは苦痛」でしかないこと。その苦痛を克服するためには、まず最初に「面白そう」という興味関心から始まり、苦しいけれど継続する事で徐々に成長していく「喜び」や「達成感」を意識して感じ取る(確認する)ことが重要だということです。こうして見るとゲーム制作って心理学の知見が大いに活かせる分野であり、ゲーム制作の知見は受験勉強や資格試験など自分や誰かを奮い立たせる為のヒントとして使えるものだと思います。

■「ゲームは子育てを助けられる ゲーム制作から考える子育て攻略本」 菱沼 寛章 幻冬舎 (2020/4/24)

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