【書評と感想】「要点で学ぶ、デザインの法則150」宣伝文句に偽りなし。コンパクトなサイズでデザインの要点が学べる良著。


【書評と感想】「要点で学ぶ、デザインの法則150」宣伝文句に偽りなし。コンパクトなサイズでデザインの要点が学べる良著。

Design Rule Index 要点で学ぶ、デザインの法則150」はデザイン心理学、工業心理学の観点から人にとって使いやすい良いデザインとは何かをテーマに150のトピックを収めたものです。たまたま大型書店に友人と行った時に見つけた本で、立ち読みをして気に入ったので買いました。小さなサイズでコンパクトにデザインの要点だけが載っているため、リファレンスとして役立ちます。BNN新社はデザイン関連で質の高い本を数多く出版している出版社という印象ですが、本書もその一つですね。心理学のトピックも豊富に扱われており、人の気持ちを研究する心理学とデザインの分野は相性が良いことがうかがえます。

誰もが聞いたことはあるデザイン概念から、ちょっと馴染みのない概念まで手広く網羅されている。


本書を読む利点は、ついなんとなく行っていたことに理論的な裏付けを与えられるようになる事でしょう。フェイス率などはデザインをしているとついなんとなくで自分のセンスで調整しがちですが、本書では理論的に説明されているため、知識がバックボーンとなり自信を持ってデザイン出来るようになります。


ちょっと馴染みのないダニング・クルーガー効果は無知の知とも通じる話です。自分を平均以上に、他の人よりも優れた存在であると思う傾向は行動経済学のダニエル・カーネマンが表した「ファスト&スロー」にも述べられています。何かプロダクトをデザインしたり、企画したりするときは自分が優れていると思いがちなので、冷静に第三者の評価を受け入れる事が大切…なのでしょう。


輪郭線バイアスはものの輪郭が持つ特徴がデザインの印象を変えるということです。日本ではドラえもんやアンパンマンなど、誰もが親しみを持てるキャラクターデザインは丸みを帯びていますし、悪役やゲームのモンスターなどの強敵はとげとげしたデザインがイメージに合うでしょう。


カテドラル効果とは天井が高い空間ほど創造的なアイデアが必要な仕事がはかどり、何か一つの決められたタスクに集中して取り組みたいときは天井が狭い閉鎖的な空間で行うのが良いという現象です。以前ブログでまとめた拡散思考とも通じる話で、人が創造性を発揮するのは脳みそがリラックスしているとき。天井が高い空間は何かに焦点を合わす必要が無いため、ぼーっと出来ますよね。このぼーっとする脳が解きほぐされた時の方がクリエイティブ(抽象的な思考)を発揮できるのです。知識として知ってはいましたが、この現象をカテドラル効果というのは本書を読んで初めて知りました。


アクセシビリティとはどのような人でも使いやすいデザインをするということ。誰もが一度は耳にしたことがある概念だと思いますが、本書を読んで再確認するのも良いと思います。


当ブログでもゲームと心理学のテーマでジェイン・マクゴニガルさんの本で扱った(1,2)ゲーミフィケーションの概念もしっかりと本書には収録されています。ゲーム的な人を喜ばす仕組み、感情報酬の仕組みはモチベーションを刺激する上で大いに参考になります。

印象に残ったところ・要点メモ・考察など

・人は物事を3次元的に見ようとする。
・重要な変化をもたらすのはごく少数の機能(20%)から。
・アッベの法則とは計測の精度を高めるためには、測定物と基準を同一の軸上(近く)に配置する必要があるということ。
・人は人の形を模したデザインに親しみを抱きやすい→コカコーラのボトル。同様に赤ちゃんの特徴を備えた丸っこいものは無邪気で純真な性格の印象をうけ、角張ったデザインは大人っぽさや男性的な印象をもたらす。
・バイオフィリア効果とは、自然に接することでストレスが軽減され、集中力が高まるというもの。
・余白が少ないと大衆的、余白が多いと高級感が出せる。
・認知的な努力が必要な情報(読みにくいフォントの文章)ほど人々の記憶に残る。
・エントリーポイントとは注意を惹き付けるための入り口、目印のようなもの。
・期待効果とは、高級レストランや高級パッケージに収められた商品ほどより良い品質であると期待し、実際にそのような満足感をもたらすこと。
・黄金比は0.618(1:1.618)。ただ黄金比は後付けの理論で単に黄金比が広く行き渡っているだけという確証バイアスによる詭弁という批判もある。実は黄金比が他の比率よりも心理的に好まれているとする実証的な証拠はないという。
・ハンロンの剃刀とは、不出来さや無能力での失敗を悪意として捉えないようにすること。(公正世界仮説と共通点がありそう。)
・ヒックの法則とは意志決定に掛かる時間は選択肢が多ければ多いほど増えるというもの。
・IKEA効果とは、ものを作るそれ自体がそのものの価値を高めること。
・KISSの法則 = keep it simple, stupid (シンプルにやれよ、この間抜け)
・プレグナンツの法則とは、複雑で未完成なイメージを単純で完成されたイメージとして解釈する傾向のこと。
・ヴェブレン効果とは、高額な価格設定自体が需要を生み出す事。価格が高い・希少価値という認識が知的品質を高め需要を生む。
・レストルフ現象とは、際だった違いが印象を残すこと。

これまで現象は知っていたけれど、どんな名前で呼ぶのか分からない現象についての知識が得られました。

感想・まとめ 帯の文句に嘘偽り無し。誰でも学べる普遍的なデザインの原理原則が身に付く内容。

150の要点の中にデザイン上重要なエッセンスは全部詰まっていると感じました。心理学的な概念から人がどのように物事を認知し、誘導されるのか、具体的な例が右ページに載せられているので理解が深まります。

個人的に本書の中で最も気に入った点は、デザインを学ぶと必ず出てくる黄金比について絶対視しない見方が述べられているところです。とかくデザインを学んだり、他のデザイン教則本ですと黄金比をやけに礼賛する傾向が目につきますが、本書ではあくまでも黄金比は目安であり、必要に応じて適用するべきという観点を述べています。黄金比を絶対視しない見方に好感が持てますし、日本人はどちらかというと白銀比(はくぎんひ, 1 : 1 + √2の比)の方が馴染みがあるので、白銀比について載せてくれたら良かったなと思います(著者が外人だからか白銀比は掲載されていない)。

私は昔デザイン関連の本を相当数買いあさって、もうデザイン関連の本は買わなくていいや、と思っていたのですが、本書はつい買ってしまいました。本書はコンセプトやコンパクト性、リファレンス性に優れているんですよね。なんとなく、うっすらと頭で分かっていることが理論だってシンプルに説明されているので、復習にちょうど良いし、デザイン初心者の方から自分は既に十分デザインについて勉強しているという人にもお勧めできます。

寝る前とか、暇なときにパラパラ眺めるだけでもデザイン力が向上する一冊です。お勧め。

■日本語版「Design Rule Index 要点で学ぶ、デザインの法則150」William Lidwell (著)、Kritina Holden (著)、 Jill Butler (著), 郷司陽子 (翻訳) ビー・エヌ・エヌ新社 (2015/10/16)

■原著「The Pocket Universal Principles of Design: 150 Essential Tools for Architects, Artists, Designers, Developers, Engineers, Inventors, and Makers」

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