【書評と要約】「決定力!正しく選択するための4つのステップ」 チップ・ハース,ダン・ハース著


【書評と要約】「決定力!正しく選択するための4つのステップ」 チップ・ハース,ダン・ハース著

最近意志決定の心理学の本をよく読んでいます。なぜ人は後悔するのだろう?なぜ自分が正しいと思った選択が後になって失敗だったと思うのだろう?という疑問は昔からありましたが、大人になってからでも失敗は後悔は尽きないもの。今回読了した本書「決定力!正しく選択するための4つのステップ」は人が持つバイアス(思い込み)に左右されないように意志決定をするにはどうすれば良いのかの知見を上手にまとめている本です。

なぜ人は意志決定に失敗するのか?

人が意思決定に失敗する要因は大きく以下の4つあります。

・視野狭窄
物事を白か黒かの両極端で見てしまうこと。選択肢の幅が狭まり、その中間のアイデアや両立といった視点が見えなくなる。「〜するべきか否か」という思考に陥ってしまうこと。

・確証バイアス
自分の下した判断が正しいとして、都合の良い情報ばかり集めてしまうこと。例)思い入れのある、価値があると思っている商品のアマゾンレビューは星5ばかりを見てしまうこと。

・一時的な感情
難しい判断ほど怒りや焦りの今この瞬間の一時的な感情に流されて判断してしまうこと。大局的な判断が出来ず、その場しのぎの選択をしてしまうこと。

・自信過剰
自分たちの未来の予測に自信を持つ傾向。自分たちの想像の未来が確実なものだと認識してしまう傾向。

この4つの意志決定の罠は多くの人が逃れられないもの。本書ではこの意志決定の罠を回避するためにWRAPという4つのステップを踏むことを勧めています。

正しく選択するための4つのステップ WRAPプロセスとは?

WRAPプロセスとは、自分の思い込みや意志決定の罠を避ける為の意志決定のプロセスのことです。

W:選択肢を広げる (Widen Your Options)
まず考えるべきは、選択肢を広げることになります。追い詰められるほど自分にはこれしか無い、と思いがちですが、一旦休憩をとったり、他の人に相談する等して別の選択肢を考えてみます。

・今このお金を使って他に何が出来るだろうか?これを買わないで浮いたお金で何ができるだろうか。
・この選択をする事でどれだけのメリットがあるのだろうか。
・今この選択が無くなったとしたら他にどんな選択を取れるだろうか?
・ORではなくANDで考える。あれか、これか、ではなく二つ同時に考える。視野を広げるためにはあれも、これもと考え欲張る態度も必要。
・複数の選択肢を想定しておく。
・自分と同じ問題を解決した人から話を聞く、自分と同様の課題を乗り越えた人の情報を探す。

R:仮説の現実性を確かめる (Reality-Test Your Assumptions)
自分に都合が良い情報ばかりを集める確証バイアスを避ける為、敢えて自分とは逆の意見を取り入れます。本当であって欲しい、自分が信じていたものであってほしいという主観での判断から距離を取るためです。

・チームで意志決定する時は必ず反対意見の人も加える。→反対意見が出ないアイデアは危険なアイデアである事が多い。
・何かを買うときは、あえて低い評価のレビューも読んでみる。
・あえて欠点を調べてみる。
・商品の選択以外にも、人生の選択に関することも口コミや評判・欠点などを調べてみる。
・外部の視点を取り入れる。自分以外の人物、専門家に意見を求める。
・小さな実行、小さな失敗をしてみる。まずは小さく試す。

A:決断の前に距離を置く (Attain Distance Before Deciding)
一時的な感情に流されずに適切な判断が下せるようにするには距離や時間を置いて感情を冷ますことが重要です。

・人間は自分の事だと正しく判断出来ないが、他人にアドバイスするときは客観的で正しい判断ができる。他人にアドバイスするのと同じ状況で自分の選択を考えてみる。他人の気持ちで自分にアドバイスをする。
・親友が自分と同じ状況に陥ったらどのようにアドバイスをするかを考えてみる。
・単純接触効果:馴染みがあるものを選択しやすい。
・損失回避:利益よりも損失に重点が向かいやすい。
・損失回避と単純接触効果が重なることで現状維持の選択をとり続けてしまう。
・核となる価値観、優先順位を決める。何を大切にしていたいのか、を明文化してみる。
・価値観を明文化することで自分にとって正しい判断ができるようになる。価値観の低い活動を辞めることも本当に大切な行動をするためには大事(やめる行動を決める)。

P:誤りに備える(Prepare To Be Wrong)
選択の結果を受け入れ、望まない未来の結果にあらかじめ備えておくことも重要です。

・未来を幅で考える。最悪な未来と最高の未来の二つを予想しておく(未来はその幅の中のどれかに収まる)。
・悪い結果を想定してみる。例)受験や面接に落ちたとしたらどうするか。
・今の選択が将来失敗になるとして、なぜ失敗したのかその原因はなんだろうか。
・自分の意志決定を見つめるアラームを設定する。期限を決めたり、目標を小分けに設定したりして自分が過去に行った意志決定が果たして有効なものであるのか再検討する機会を設ける。

まとめと感想

本書の内容はシンプルで、人間が陥り安いバイアスの影響を可能な限り少なくする方法が分かりやすく説かれています。今更ながら、早川書房は心理学系の良著を結構出していますね。具体例が豊富で、思ったよりも読みやすいです。

人生は選択の連続だと言いますが、多くの人は、自動運転でなんとなくこれまでと同じような選択を選んで日々生きています。正しく決断をするには自動運転に任せず、自分の意思で可能な限り正しい選択を行う必要があります。

本書全体を通して見てみると、最も大切なのは「自分で自分の判断や状況を客観的に気づく力」だと思いました。気づくことができないと、いつまでたってもこれまでと同じような選択ばかりを選びがちです。今自分がどんな位置にいて、目標や価値観に向けてどのような道のりを歩いているのかセルフモニタリングすることで判断力を上げていくことができるでしょう。そうして正しい選択を積み重ねていくことで、自分の決断や判断に自信を持つことができます。

意思決定の精度を高めたい人に本書は有益な知見を提供してくれます。

■日本語版「決定力! ――正しく選択するための4つのステップ (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 」チップ ハース (著), ダン ハース (著), 千葉 敏生 (翻訳) 、早川書房 (2016/11/9)

■原著「Decisive: How to Make Better Decisions」Chip Heath(著), Dan Heath (著)