【まとめと要約】「フリーエージェント社会の到来」ダニエル・ピンク(著) レビュー

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一つの組織に囚われない生き方が学べる「フリーエージェント社会の到来 組織に雇われない新しい働き方」ダニエル・ピンク(著)を読了しました。原著のFree Agent Nationは2001年発行。2018年も終わりに近づいた今(2018年12月)読むと、いかに本書で語られている未来が現実になってきているのかを肌で実感する事が出来ます。

組織人間の時代は終わり、フリーランスの生き方が増えていく


これまでは一つの会社に長く勤め続けること、一つの組織に忠誠心を誓う生き方が規範とされてきました。会社に忠誠心を誓うことで年金や保険、生活保障をして貰える暗黙の前提があったからです。しかし、時代は変化しこうした一つの組織で長く働く人の時代(組織人間、オーガニゼーション・マンの時代)は終わりを迎えます

それは、大企業がいつまでも繁栄し、従業員の人生の面倒を見ることは不可能である事実が徐々に明らかになってきたからです。従業員の人生を保障する家族的経営を声高にアピールしていたIBMは方針を変え、90年代に何十万の従業員のリストラに踏み切りました。アメリカで最も力がある会社は人材派遣業のマンパワー社(公式)であるといいます。

転職することも以前と比べて普通のこととなりました。インターネットというテクノロジーが発展した世界では、組織はむしろ足かせとなっており、一つの会社や一人の上司の下だけで働くことはリスクになってきます。多くの人が組織に囚われずに働くようになり、フリーランサー・フリーエージェント(FA)として自分の持った能力を活かして活躍するようになりました。彼らが作り出す価値が新たな経済を生み出していきます。従来の画一的な価値観やルール、システムに縛られるのでは無く、自分のニーズや欲求・希望に応じて仕事の仕方を決めていくのがこれからのスタンダードになってきます。

フリーエージェントが台頭してきた背景
・会社と労働者の間で暗黙の前提となっていた、忠誠心と引き換えに安定と保障を貰う関係が崩壊した。
・生産手段が個人でも安価で手に入るようになり、場所を問わず、操作も簡単になった(パソコンやインターネット、スマートフォンの普及)。
・人口の大部分を占める経済の中間層がある程度の繁栄を享受できるようになり、糊口をしのぐ為の労働から「生きがい」を労働に求めるようになった。
・会社や組織の寿命が短くなり、長寿化により多くの人が会社よりも長生きするようになった。

会社勤めのシステムは近代になって発明されたもの

そもそも私たちが当たり前だと考えている「学校→就活→会社→定年→老後」のシステムは近代になって発明されたものです。会社に勤めるという働き方も、人類全体の歴史から見れば産業革命によって突然変異的に産まれたものであり、産業革命以前の人類のほとんどが農民などの自営業でした。

労働倫理の変換


こうした社会の変化は働く人々の心理にも影響を与えました。人々は安定よりも自由を、お金よりもやりがいを求めるようになりました。マズローの欲求階層説(Wiki)でいう自己実現の欲求を追い求めるようになったのです。

何を持って成功とするかは一概に定義できなくなり、人それぞれ自分に合った成功や幸せの形を持つようになりました。フリーエージェントの労働倫理は「自由」「自分らしさ」「責任」「自分なりの成功」の4つの要素から構成されていて、「自分の優先順位に従って、他人の指図を受けずに行動したい」という欲求で動く人が増えています。

ボブ・ディランのいう「成功したと言えるのは、朝起きて、自分のやりたいことをやれる人だ」という言葉が正しいものとして認識されるようになりました。

出世するほど仕事がつまらなくなる!?時代はピーター・アウトの法則に

組織人間の時代では、ピーターの法則(The Peter Principle:Wiki)といって年功序列などで階層社会の構成員は本来の自分の能力を超えた地位まで昇進するという法則がありました。

しかしこれからはピーター・アウトの法則(The Peter-Out Principle)となり、出世すればするほど仕事に対して喜びややりがいを失ってしまう傾向にあります。クリエイティブ職の人が現場での物作りの仕事から管理職になり、実際に自分でものを作れなくなった状況(物作りが出来る部下を管理する仕事)に陥ったり、昇進すればするほど人脈がその会社組織の中に狭まることによるリスクを強く感じられるようになります。そのため、優秀な人材ほど会社を抜けて独立をするようになります。

仕事と繋がりの分散化が必要


リスクヘッジとして投資先を分散させるように、これからの変化が大きい時代には、仕事と繋がりの分散化が最もリスクを減らす選択となります。自分の持つ資源を一つの仕事、組織に注ぎ込むのでは無く、複数のプロジェクトや組織に参加しつつ人脈や繋がりを広げていくことが重要になってきます。上司に対しての忠誠心ではなく、友人や仕事上のパートナーという横の繋がりが力を持つ時代になってきます。かつてはリスクの塊であると考えられてきた「組織に縛られず自由である事」が、一つの会社に縛られるよりも長期的に見て安定する生き方へとなってきます。

仕事とプライベートの境界は曖昧に

ネットワーク技術の進歩でいつでもどこでもやりとりが出来る時代では、午前9時から午後5時までの規則的な労働時間に縛られない働き方が普通になってきます。定時制は、かつて工場での大量生産の時代には適した仕組みでしたが、今の時代にそぐわないものとなってきています。現代に生きる私たちが無理に定時に縛られて働かなくてはならない、ということは無いのです。しかし、一方で規則的な生活リズムが送れず働きすぎてしまうフリーランスも増加しています。会社の管理の下で働くことの一つのメリットとして、規則的な生活リズムを送ることができるのがあって、自分で時間や行動を管理する事が苦手な人は組織で雇われた方が働きやすい、と言えます。

人との新しい繋がりかた

組織に雇われないフリーランスが直面する問題の一つに孤独の問題があります。それへの対策として、フリーランス同士で勉強会や励まし合うグループに参加することが挙げられています。フリーランスという同じ境遇で働く者同士が横でつながり合い、協力し相互に利他的関係になることが結果として両者にとって大きな利益をもたらします。

現代で言えばFacebookやDMMサロン、Noteや動画配信での有料会員や投げ銭システムなど、現代はそういった個人で活動することを支援する仕組みが出来ています。これからはこれまで以上に横の関係が重視され、弱い繋がりを持った人同士が仕事で繋がったり、新しいビジネスを始めていく時代です。そのため個人としての信頼がとても重要になってきます。

フリーエージェント社会がもたらす変化:細かな変化のまとめ


人それぞれ働き方のペースを持ち、家族との時間を大切にする時期や、仕事に打ち込む時期など柔軟に変化していく。
インターネットでどこでも仕事ができる時代に。スターバックスやキンコーズ、共同オフィスなど個人でも自宅以外の活動場所を確保することが容易となった。
・フリーエージェント的働き方が当たり前となった時代では、人材仲介業者がますます力を持つ
・古い慣習や制度はますます現実にそぐわないものになっていく。保険や年金制度などの改革が必要になってくる。または制度に依存しない生き方を自分で準備する。
・フリーエージェントは格差が大きいというのも一つの事実。恵まれた臨時社員と恵まれない臨時社員との違いは、需要がある能力を持っていることと、交渉力があるかどうか。万年臨時社員として働くのはボーナスも貰えないし、保険の点でも正社員よりも厳しい側面がある。そのため多くの人が大人になってから学び直しとして大学やオンラインスクールなどで専門スキルを磨くようになる。
定年退職は過去のものに。寿命が延び、ずっと働くことが求められる時代に。
義務教育は工場労働者の生産の為に「均一化装置」として機能していた。時代は変化しているのに、未だに過去の工場労働者を生み出すような”伝統的”な教育が行われている。これからは在宅教育や、個人の必要に応じた形での教育が必要とされる。名門大学の学歴の価値は薄れ、個人がどのような専門性・スキルがあるのかが問われる時代に。

総評

教養 ★★★★
着想 ★★★★★★★+
満足度 95%

この本の原著が2001年に最初に出版されたのには驚くほかありません。当時を考えると相当卓越したビジョンを世に示した本と言えます。本書の序盤から中盤にかけてはフリーランスの生き方や労働倫理についてアメリカの社会情勢と絡めてまとめられており、後半から保険や年金などフリーランスが抱える問題点についての対策などが書かれています。

日本語の新装版は2014年の出版ですが、本書で提示された未来はますます現実になっている印象です。インターネットやスマフォの普及により個人が情報を発する力が増えて(特に動画配信)、会社に依存しない生き方をする人も増えました。私が本書で最も実現は難しいだろうな、と思っていた「個人が株式を発行する」というのも近年似たような形でVALUというサービスが出てきて現実のものになりました。

ゲーム会社のトップクリエイターが次々と独立するのも、出世するほど仕事がつまらなくなるピーター・アウトの法則が働いているのか、と知見を得ることができました。

フリーエージェント社会という新しい生き方を前向きに捉えて論じた本書ですが、よく考えると特別な力を持たないフリーランスは淘汰されてしまう、ということでもあります。そのためスキルアップの為の時間や教育を上手に利用したり、仕事での横の繋がりを意識して作る必要があります。

読んでいて驚いたのが、アメリカでもこうした組織人間という考え方が根強く規範とされていたことです。日本では高度経済成長期から続いた「新卒一括採用」という慣習に見られるように、まだまだ組織人間(=会社人間)を理想とする昭和時代の滅私奉公の労働観が根強く残っていると感じますが、アメリカでもそういった一つの組織に人生を捧げるような働き方が良しとされていたことが発見でした(日本と違いアメリカは変化が早い印象ですが)。

蛇足ですが本書の表紙が毒々しいピンク色であるのは、ブックデザイナーがネタ切れを起こしダニエル・ピンクという著者の名前からとっているのでは?と思いました。

LIFE SHIFT(ライフシフト) 人生100年時代の生き方戦略」や「〈インターネット〉の次に来るもの」と合わせて読むとこれからの時代や働き方を捉えるのに有益な考察を得る事が出来ます。こうした知識を得ることで未来を見据えた人生戦略も立てられると思います。これからの時代の核心をつく本書、ぜひ読んでみてください。

フリーエージェント社会の到来 新装版 組織に雇われない新しい働き方 / FREE AGENT NATION THE FUTURE OF WORKING FOR YOURSELF
ダニエル・ピンク/ DANIEL H. PINK
玄田有史(序文)
池村千秋(訳)
ダイヤモンド社 新装版 2014/8/29

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