LIFE SHIFT(ライフシフト)まとめ要約レビュー 人生100年時代の生き方戦略

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LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 100年時代の人生戦略」を読みました。人の長寿化が社会システムにどう影響を与えるのか考察した本です。人生100年時代を迎える私たちはこれからどう生きていくのか。従来の社会的な枠組みの分析とこれから先に起こりうる変化を提示した、これからを生きる全ての人に読んで欲しい本です。

人生100年時代の到来

平均寿命は増加し、これから生まれる人の多くが100歳を超えて生きる時代が到来します。その影響で、これまで年齢によって区別されていた人生のステージや世の中の仕組みが大きく変換を求められます。昔ながらの年齢や性別を基準とした標準的な生き方は通用しなくなり、ロールモデルが不在の中で自分の生き方を模索することが求められる時代に入っていきます。

変化は当たり前になり、人生のステージも細分化


これまでは人生の最初のステージに学んだ技術的知識(スキルセット)を活かして定年まで働き、その後は国の年金システムで隠退生活という人生モデルがありました。しかし、人生100年時代ではそれは通用しなくなります。「学生→就職→引退」という3ステージを前提にした企業や国の年金制度に頼れない時代がすぐそこに迫ってきています。

例えば引退年齢は大きく引き上げられることが予想されます。多くの人はより長く働くようになり(or働かざるを得なくなる)、自分の価値や資産を高める行動が求められます。就労活動や学ぶことがより柔軟なものになり、ネットワーク化が進み世代の壁が徐々に薄らいでいきます。オンライン学習システムの発展により、学びは10代~20代のものではなくなり、変化する人生のステージにおいて、あらゆる世代が必要に応じて参加するものになります。人生が長くなることが前提になると、若々しい中年や高齢者が増えていくのもこの時代の特徴です。

変化の多い時代では、多くの選択肢や無形資産を持つことが重視されます。可能性を保持し、いつまでも若々しく学ぶ姿勢を持つ人が長寿化の恩恵を最大化できます。子供を持つことを後回しにしたり、副業をする人も増加します。人生の中で実験やチャレンジをする機会も増えていきますし、本人の意志に関わらず人生の途中からこれまで手をつけていなかった新しい分野へ飛びこむ機会も増えていきます。

男女の役割についても平等化が進み、夫婦二人で働き相互に助け合うことが経済的に最も効率的な生き方になります。一方で離婚のリスクが増加し、離婚率は減少。パートナーと協力し、信頼関係を結ぶことがより重視されます。

資金計画:無形資産と有形資産


長寿を前提とした社会で、会社や国の年金システムに頼れないのであれば、資産についての見識を高め、資産形成について意識しておく必要があります。本書では無形資産有形資産を軸に資産形成について詳しく述べられています。

無形資産とは、友人関係や家族関係、人脈やSNSでの影響力や評判や信頼、活力や行動力などお金に出来ない資産のことです。有形資産は、実際に目に見えるお金や不動産など、お金と換金できる資産です。

これまでは有形資産の事ばかり目を向けられていましたが、人生100年時代では無形資産がとても重要になります。本書では無形資産を以下の3つに分類しています。

無形資産の分類
1.生産性資産:所得を高めるのに役立つスキルや知識、人脈のこと。
2.活力資産:肉体的、精神的な活力のベースとなる健康や幸福のこと。
3.変身資産:100年人生を生きる上で多様性に富んだネットワークや自分自身についての知識(アイデンティティー)、新しい知識や分野への好奇心や開かれた姿勢(マインドセット)のこと。

これまで以上に学ぶ事と人脈が重要になってきます。長寿社会では健康という活力資産も重要。運動やバランスの取れた生活、誰と付き合うか、自分が何をしたいのか(内省力)がより重視されます。一つの分野に囚われるのでは無く、様々な分野や新しい人脈を築きながら自己のアイデンティティーを見極めていく生き方が求められ、これまで以上に多様性と新しい経験に対して開かれた姿勢でいることが重視されます。

例えば人生のある時期にがむしゃらに働いて有形資産を貯めたあと、休暇を取ることで「活力」という無形資産を貯めることができます。その間に学び直しや趣味の時間で新たな人脈を作り、無形資産を貯めていったあとで再び企業に舞い戻ったり自分で事業を興したりするような時代が実現しつつあります。

労働と時間。中間の仕事が無くなる。

「〈インターネット〉の次に来るもの」でも言及されましたが、仕事内容も変化していきます。機械化やAI技術の進展によって、代替できる中間スキルの仕事がどんどん少なくなっていきます。人がする仕事は、技術を必要としない低賃金の仕事か高度な技術が求められる仕事の2極化していきます。

ロボットが人材不足を補う一方で、「デトロイトビカムヒューマン」で描かれたように職を失う人も増加します。しかし、変化が当たり前の時代では新たな職種の登場や学び直しの機会が増えるメリットもあります。「人にしか出来ない仕事」が次の時代のキーポイント。創造性やアイデアが重要な価値を持ちます。

そしてイノベーションの発達で、働き方はより柔軟なものになっていきます。会社組織に属さずに働く人や、個人の力や影響力が高まり、個人が企業を相手にやりとりするという働き方も今よりも増えていきます。

時間の使い方は多様になり、高所得の人ほど働く時間に追われ、低スキルの人ほど時間を持て余すようになります。これは高所得の人ほど時間の価値が高いために、働かない時間よりも働く時間を優先するためです。高所得を目指すには、余暇の時間を娯楽ではなく、学びの時間や人脈づくりなど自身の再開発・再創造(リ・クリエーション)に当てる必要があります。

年齢区別の薄れ:若々しい大人の増加と柔軟なライフステージ


人生が長くなることは可能性も増えると言うこと。変化と長寿が前提の社会では柔軟性がこれまで以上に求められ、思春期の特徴を大人になっても維持し続ける人、進化生物学でいう「ネオテニー(幼形成熟)」の性質を持つ人が増えていきます。今の30代は昔の30代と比べるとまだまだ若く、責任を負わない雰囲気を漂わせています。100年前の50歳と今の50歳ではだいぶ印象は異なるでしょう。将来的には実年齢よりも考え方や見た目、行動が若々しい人が増え、何かをしている時間がますます増えていきます。個人では柔軟性と適応性を高めることが生き残るためには欠かせない素質とななります。

かつては「子供」と「大人」で人は区別されていました。実際原始的な生活をしている部族は今でも通過儀礼を重視しています。しかし近代になって、会社組織ができると「ティーンエイジャー」や「引退者」という概念が発明されました。その方がマーケティング的に消費行動が掴みやすく、企業は高齢の労働者を「定年」という名目で辞めさせることができました。

3ステージ型の人生は特定の年齢層を区別し、隔離することが暗黙の前提にあります。しかし長寿化が前提となるとその弊害のほうが強くなっています。長い時間人々は働かざるをえなくなり、一つの仕事に燃え尽きてしまう人も出てきます。新しい人間関係や生きがい、出会いを求める人も出てきます。

これからの人生100年時代において、企業や政府といった社会が規定した3つのライフステージはより細分化と個別化を進めていきます。年齢に関係なく世界を旅したり、自分の得意不得意な領域を見極める「エクスプローラー(探求)」の段階を踏む人も増えていきます。自分で価値を世の中に発信すために起業する人も増えてくるでしょう。長寿を前提とした社会は、いくつになっても「エクスプローラー」のステージを歩いても良いし、新しいスキルを学ぶために「学びのステージ」を選んでも良い柔軟性を許容する時代といえます。

変化はゆっくり、しかし確実に進む


人生100年時代の到来により、これまでの3ステージを前提としたライフスタイルから柔軟な変化と多様性が受け入れられる時代に変容しつつあります。しかし、政府や法律、企業の人事制度が変わるのにはまだまだ時間はかかるでしょう。変化は痛みを伴いますし、企業もこれまで通りの慣例に倣った方がコストもかからず楽だからです。しかし、時代の流れは確実に多様化と柔軟な生き方を要請する方向に向かっています。今はまだ旧態依然としたシステムに振り回される事もありますが、徐々に変化は進んでいくことでしょう。

総評

教養    ★★★★★★
読みやすさ ★★★★
満足度   ★★★★★★★★

当たり前の前提を見直す本として本書はとてもお勧めできます。いかにこれまで社会が規定していた3ステージ型の人生に縛られていたか、学校教育や社会の暗黙の前提に縛られていたか気づくことが出来ました。これからはロールモデル不在の人生を歩かなければなりません。

本書のテーマである長寿化は、年金システムや貧富の問題、老化による能力低下と絡めて否定的な文脈で語られることが多いです。少子高齢化が問題となる日本に生活していれば、長寿化は災厄と捉えてしまう人も多いでしょう。しかし、本書は長寿化をどう恩恵(贈り物)として活用していくかに焦点を当てています長寿という贈り物を活かすも殺すも自分次第なんですね。

一つ言えるのは国や法律、企業の人事制度が大きく変わらない限り、まだまだ実感出来る変化は遅いと言うことです。日本は「新卒一括採用」システムに見られるように、年齢による区別や差別意識、女性管理職の不足に見られる男女差別など旧態依然とした慣例が根強く残っています。こうした変化には時間が掛かり、100年単位の時間が必要とするかもしれません。この本を読んで人生100年時代への気づきや備えができたといっても、個人レベルで意識してこれからの選択を考えて実行していくことしかできません。

社会の変化には時間はかかるでしょうが、個人レベルではすぐに変わることが出来ます。これからの未来を見据えて人生計画を立てる上で、意志決定の際の大きな助言を本書は提示してくれます。

今回まとめた本
「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略」/ The 100-Year Life Living and Working in an Age of Longevity
リンダ・グラットン / アンドリュー・スコット [著]
池村千秋[訳]
東洋経済新報社 (2016/10/21)

 
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