「どん底からでも人生は逆転できる」谷口愛(著) 読了 まとめと感想

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いくつになっても夢を諦めないことと勉学の大切さを強く実感する「どん底からでも人生は逆転できる」を読了しました。著者の谷口愛さんは壮絶な過去を乗り越え、現在はドバイと日本をつなぎ、自ら化粧品メーカーの社長として活躍しています。自分が現在、過去どんな状況にいたとしても、諦めずに努力を続けることで光は見えてくる。そのことを確信できる、心を支えてくれる一冊です。

悲惨な幼少期

谷口さんは幼い頃、両親が金銭的な問題で家庭を投げ出し、妹と二人きり家に残されてしまった壮絶な過去を持ちます。まだ10歳に満たない子供が妹の料理を毎日作っていた、という状況は尋常ではありません。母親はその後しばらくして戻ってきましたが、父親は工事現場を点々とするなど家に帰ってこなかったそうです。家庭崩壊のストレスから、谷口さんは中学時代にグレてしまいました。しかし、そのグレた仲間たちのその後の状況を知り愕然とします。このままでは薬や売春など、人は落ちるところまで落ちてしまう、そう思った谷口さんはまずは社会に出て働き、両親の作った借金(4000万円)を返していくことを決めます。

「普通に高校に行く」という青春を諦め、大きく稼げるホステスで稼ぐことにした谷口さん。当時15歳。外見は大人びていたので、年齢を偽ってもバレなかったと言います。熱心な営業と血の汗にじむ努力で店のトップになり、18歳で家の借金返済もできました。しかし、慣れない酒と生活リズムの乱れにより、パニック障害になってしまったといいます。根元には常に動いていないといけない、という不安と強迫観念。安心したことがなく、心のどこかで常に不安があることがパニック障害の発祥につながりました。ここら辺の描写はかなり辛辣。フィクションではなく実際にあったことという重みを感じることができます。

日本の大学をめざすが…

夜の世界での仕事は順調に上り詰めましたが、このまま夜の世界にいては日の目をみることはないだろうと考え、宝石店の販売の仕事に。ここでもトップの成績を収めるなど、着実に成果をあげていきました。そこで気づいたのが、お金は本当の意味での心を満たしてくれるものではないということ。お金をいくら稼いだところで仕方のないものに感じられたそうです。谷口さんの両親はどちらも大卒ではなく、仕事で付き合うお客さんはみんな高学歴の教養のある人ばかり。日本は表向きでは学歴で全てが決まるわけではないというものの、実社会で痛いほど学歴がある人とない人の人生の差を見て味わってきた谷口さん。他の普通の人と同じスタート時点に立ちたい。家庭の都合で中断していた学問への情熱が谷口さんの脳裏を巡ります。

このままでは終われない、と学問を志した谷口さんは家庭教師を見つけ、26歳で通信制高校進学します。そこで出会った数学の恩師との出会いもあり、「知ることの本当の面白さとそれによって心がどれだけ満たされるか」という学ぶ喜びを得ます。人は学び、教養を持つことで心の引き出しを持つことができ、それによって自分を支えていけるのです。大学進学への志も固まりました。


宝石店の仕事と兼業しながらの忙しい日々。そこで、長期にわたって支えてくれる夫と出会います。夫は高い学歴を持ち、柔軟な姿勢で長期にわたって心の支えと金銭的な支援もしてくれました。大学進学が現実に近づき、マネージャーとして忙しく働いていた宝石店を辞め、受験に集中。国立の医学部を目指したものの、断念し主婦業と学業を両立できそうな女子大に入学します。そのとき30歳。

しかし、日本の大学の現状に失望。学ぶために来ているのではなく、遊びにほうけている10も年下の同級生との生活はうまくいきませんでした。やっと憧れていた大学での学問ができる、という状況は早くも失望と失意に変わりました。「大学とは学問を追求し、教養と幅広い知識を身につけ、社会を堂々と渡り歩いて行くためのものではないのか」と、想像していた生活と現実の大学との落差に打ちのめされたのです。

この谷口さんのくだり、すごくわかります。私も10代は苦労し、高校は中退して高卒認定資格を取得して大学に入りました。それまでは本を一冊読むことすらできなかったのですが、10代の悶々と模索した時期に読書の喜びと学ぶことの充実感に気づき、大学に入りました。自分が専攻したのは心理学なので、日本だと文系に分類されます。日本の文系大学生の勉強しなさ率は異常だな、と感じています。周囲とのギャップや居心地の悪さを常に感じていました。人生の初期にレールから外れてしまった経験を持つから、谷口さんの成功したい想いや学歴に関しての執着が痛いほどわかります。(私は志望校ではない大学に入ったので、学歴が高いとされる大学に対するコンプレックスは今でもあって、おそらく一生付きまとってくるものだろうな、と受け止めています。)

夫に支えられアメリカの大学に


せっかく入った大学も想像とは違い、行かなくなりました。現状の大学は知的好奇心を満たしてくれる環境ではない。そのため暗中模索の日々が続きましたが、夫がアメリカに出張するとのことで、夫からアメリカの大学に行ってみればとのアドバイスをもらいます。最初は「自分にはできるのか?」と気後れしたものの、「他の人にできて自分にできない理由はない」との思いでそのチャンスに飛び込みます。

受けるならば名門大学に。猛勉強の日々が始まります。英語習得のために考えられるありとあらゆることは行い、34歳を目前にした時、ステッソン大学への入学を許可されます。ステッソン大学ではディスカッションを中心にした授業と膨大な宿題量で忙殺されますが、学問の喜びを実感できた充実した生活だったと言います。人生の恩師であるベイリー教授との出会いもありました。また、アメリカの教会に参加することで、キリスト教の教えに触れ、これまでの人生を許せる気持ちになれたといいます。その後裁判所のインターンなども行い、充実したアメリカでの7年間を過ごしました。

私も日本の大学を出てからアメリカの大学に正規留学しましたが、谷口さんの留学した名門私立大ではないからか、普通に30代~50代の学部生もいました。学部の段階では、名門私立大学ほど良家の子息でストレートに成功の道を歩いている18の生徒を優先して採る印象です。本書では年齢が普通よりも高かったり人種や外国籍の学生はnon-traditional studentとされ、ごく普通の生徒はtraditonal studentという区別があるそうで。私の行った大学ではそういう区別を感じたことはありませんでしたが、こういう選民思想的なところもアメリカらしいのかもしれません。(ただ、持たざるものでもチャンスは与えてくれるのはアメリカのいいところです。)

日本に帰国するも…

十分な教養を身につけ、いざ社会で働こうと日本に帰国して就活をするも、100通以上送った履歴書は1つも引っかからなかったそう。そんなとき、アメリカでお世話になったベイリー教授から元教え子でボーイング社の社長を務めている人物を紹介されます。アメリカのボーイング本社に招待され、その社長室から見た景色が忘れられなかったとか。「たくさん回り道をしたけれど、愚直に自分のできることをし続けて、今この光景が見られる」と、感迫るものがあったといいます。ボーイング社の社長曰く、やはりMBAの学歴がなければ行ける部署も限られてしまうとのこと。この言葉をきっかけに、大学院で学ぶことを決めます。

京都大学の大学院も受けましたが、面接試験で38歳という年齢と女性であることで「君には博士号は与えられない」と拒否されたそうこれはひどい。医学部入試による不公平な扱いが今年問題になりましたが、学問こそ年齢関係なく公平さを担保すべき場所なのにこの扱い。日本独特の閉鎖的で差別的、排他的な思考。このようなことを続けている限りいつか日本は世界から置いて行かれてしまうと思います(京都大学大丈夫か?)。結局谷口さんは同志社大学大学院ビジネス研究科に進学しました。

同志社大学には一流企業から派遣されてくる学生やエコノミストとして活躍している浜矩子さんとの出会いがあり、とても刺激になったそう。また大学院在学中からビジネスを立ち上げる(知人から紹介されたホテルの事業再生。)ことで新聞の取材がきて、それが仕事を呼ぶことに結びつきました。

しばらくしてアメリカの同級生だったドバイの王族に繋がる良家の子息から連絡が来て、ドバイと日本をつなぐビジネスを立ち上げることになります。現在はそのドバイと日本を結ぶビジネスと、自らの化粧品事業を軸に活動しています。

一つの行動が出会いを作り、自分でも思ってもみなかった結果を生む人生とは分からないもので、動くことで出会いや発見や思いがけないチャンスを拾うことができるのです。人から雇われることに囚われるのではなく、自分でチャンスをつくり、学んだことや人脈を活かしていく。柔軟に動きつつも、出会ったチャンスは掴む意気込み。そして拾ったチャンスを必死に育てていき、時間をかけて物事に取り組んでいく。

彼女の生き方には学べることがたくさんあります。

印象に残ったことば
・「あの人にできることが、なぜ私にできないのか」
・「人生には限りがある。夢に向かってとにかく具体的に行動していこう。」
・「自分を幸せにできるのは自分だけ」
・「持たざるものが持つものを追い越すには、時間をかけるしかない。」
・「チャンスがなければ自分でつくれ」
・「人とは違った鉱脈を見つける」
・「追い込まれたら自分で道をつくっていくしかない。とにかく動く、動く、動く」
・「学びを重ねる上で得たかけがいのないものの一つが人脈」
・「どんなに回り道でもいい。たとえ自分が歩んできた道がどうであっても、あきらめさえしなければ、目的の地点には到達できる。」
・「人間の価値や運命は「今の段階」で決まるものではない」

気づいたこと

この本からは学ぶこと(学問)の大切さと、人生を打開するにはとにかく行動することの重要性を学びました。動くことで人との出会いがあり、思ってもみなかったチャンスが生まれるのですね。

生まれつき持たざる者、持つ者の格差は歴然としてあり、世の中は不公平で出来ています。持たざる者の立場として、無理に最短距離を目指さず、遠回りをしてもいいから自分に出来る範囲の行動を続けていく事、そうすれば状況も良い方向に変化していくことが谷口さんのストーリーから分かります。

また、谷口さんは守ってあげたい妹の存在が大きかったそうで。自分以外の他者の為に行動するとき、人は自分のために行動するときよりも力を発揮するのでしょう。

この本を通して、明けない夜はないことを確信しました。人生は今の段階で決まるものではない。長い目で見た人生という中で、最終的にどうなるのかは誰にも分からない。それなら、自分にできる範囲の行動を続け、少しでもより良い未来を得るために行動し続けていこう、と思いました。

■今回まとめた本
「どん底からでも人生は逆転できる。」
谷口愛(著)/世界文化社 2015/06/30

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参考・出典

谷口愛(Wikipedia)
エー・アイ・クリエーション(著者谷口愛さんが起業した会社)

 
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