【まとめと要約】「ORIGINALS オリジナルズ 誰もが人と違うことが出来る時代」 同調に逆らう独自性を持った人たちの心理学

今回は世界を変えるようなオリジナリティ=独自性を持った人にはどのような特徴が有るのかを圧倒的な心理学研究をベースに様々な視点から考察した組織心理学者アダム・グラントの「ORIGINALS 誰もが人と違うことが出来る時代」をまとめ&レビューします。とにかくボリューム満点で心理学研究の総合百科とも言える名著です。著者のアダム・グラントさんについて知りたい人はこちらのTED動画記事もご参考ください。

本書でいう「オリジナル」な人とは?

オリジナルな人は自分の信念を信じ、世界を変えていく事が出来る人のこと
オリジナルな人は自分の信念を信じ、世界を変えていく事が出来る人と言える

本書で言うオリジナリティとは、一般に多くの人が従っている価値観に同調しないで、安全地帯から一歩踏み出してより良い世界・環境を作るために行動出来る人の事です。

本書の面白い視点は、エリートや天才といった人たちほどオリジナルな人にはなれないとしたこと。彼らは既存の価値システムに従った方が楽で評価もされるのでわざわざオリジナルな人にはなろうとしません。

オリジナルな人は、多くの人が正しいと思っていることを否定することからスタートします。それは決して楽な道ではありませんが、同質性の流れに逆らうオリジナルさを持つ人は、既存のシステムを打破してその人独自の価値を構築しようとします。言い換えれば世の中により良い変化を起こす人がオリジナルな人であり、自らのビジョンを率先して実現させていき、現状の改善に役立つアイデアを実践していきます。「今あるもの」をそのまま使うのではなく、よりよい選択肢がないかを探し求めていく人たちです。

オリジナルな人の特徴 自主的に考える・好奇心が強い・周りと同調しない・反抗的

世界を創造していくオリジナルな人は「自主的に考える人」であり、「好奇心が強い」「まわりに同調しない」「反抗的」という特質が指摘されています。私はこのオリジナルな人たちの能力は人生を自分で切り開いていく為に役に立つものだと思います。本書では誰もがオリジナルな人になれるとしており、オリジナリティは不変の性質ではなく、その気になれば誰でもオリジナルな人の特徴をもつことができるとします。

自分の限界は、自分で設定しているもの。本書からオリジナリティを持った人たちの特徴や行動を学ぶことで主体的でより良い人生を学ぶためのヒントが得られるでしょう。

離職率とブラウザの関係

オリジナリティを発揮した例として、本書では離職率と使用ブラウザの関係を調べた研究が挙げられています。なんと、FirefoxやChromeを使っているユーザーはプリインストールされたSafariやインターネットエクスプローラーをそのまま使っている人に比べて離職率が低いそうです。彼らは今あるものからより良いものを探し求める傾向が強く、自発的な行動を起こす傾向が高い人。そうした人ほど自分で人生をコントロールしている実感を得て職場も長続きするのだとか。逆に言えばありものをそのまま使っている人は、自分で何かを解決しようとする自発的な態度に乏しく、離職率の高さに繋がっている?のだとか。
参考:自己決定権を持っているという認識が人間を幸せにする

天才はオリジナルな人になれない。

天才はオリジナルな人になれない。彼らは既存の価値システムで価値を発揮できるから天才と賞賛されるからだ。
天才はオリジナルな人になれない。彼らは既存の価値システムで価値を発揮できるから天才と賞賛され、評価される。

本書によれば、幼少の頃天才と言われた人たちのほとんどは平凡に終わるそうです。才能に恵まれた天才・神童たちの多くは成長するにつれて社会に適合し、普通の人となっていきます。神童たちは社会と適応していく過程でオリジナルさを失っていくのです。

なぜなら、天才たちは既にあるルールの上で能力を発揮することに優れているからです。クラシックの殿堂カーネギーホールでの演奏者や、サイエンスオリンピック、チェスの世界チャンピオンなど、彼らは既存の価値システムの訓練で身につけた技術は完璧です。しかし実際に新しい独創性を発揮してこれまでに無いものを生み出すことが出来ないのです。

彼らはベートーヴェンを美しく演奏できますが、ベートーヴェンを超えるような作曲はしません。新しい知識や独創的なルールやゲームを考え出すのではなく、既存のルールシステムに従いますその過程で親からの承認や教師の賞賛を得ようとします。優秀な弁護士にはなれても、法律そのものを変えたりしようとはしません。

成功を重視すればするほど失敗を恐れ、必ず手に入る成功に向かってしか努力しなくなります。安定を維持し、型にはまった業績を上げることがその人のオリジナリティを抑圧するのですね。一方で、独創性の高い人ほど教師に恵まれなかったという研究も存在します。

「心理学者のトッド・ルバートとロバート・スタンバーグは「成果を上げたいという欲求が中程度を超えると創造性が低下するということが実証されている」と述べている。」

オリジナリティとは、経済学者ヨーゼフ・シュンペーターの言葉によれば「創造的破壊」をすること。新しい仕組みを提唱するには古いやり方をとり払わねばなりません。オリジナルであることは、既存の価値システムに従わない独創的な行動が必要となります。

起業家は一般の人たちよりもリスクを好んでいる訳ではない。むしろその逆。

成功している起業家ほどリスクに敏感で慎重な行動をとっている。
成功している起業家ほどリスクに敏感で慎重な行動をとっている。

本書の面白いところは、一般的・常識的な見方とは違う視点を紹介してくれること。成功している起業家ほど実はリスクを取らないという指摘もその一つで、オリジナリティを発揮するには「徹底的にリスクを冒すことが必要だ」という通説を覆す見方は面白いです。

私たちはオリジナルな行動をとろうとするとき、極端にリスクを取らなくてはいけないと思い込んでしまうのではないでしょうか。でも実際は成功している起業家はリスクに慎重な人が多いのだとか。

私たちは創造性を発揮して世界を変えようとしているオリジナルな人たちを見て感心をする一方で、自分たちとは異なった人として「他者化」してしまいがちです。成功した起業家になりたいけれど、自分にはそんなことできるわけがない、重荷がすぎる…と。

私たちはオリジナルに活躍する人のことを「不安に強く、社会に受け入れられなくても平気な人種」だと思い込んでしまいます。他者からの批判に強く、恐怖心を持たずに拒絶や嘲笑に惑わされない強い精神性を持った「自分とは違う人」だと見てしまう。

「起業家を意味する単語はアントレプレナー「Enterepreneur」は経済思想家のリチャード・カンティロンによる造語だが、原義はリスクを負う人だ。」

しかし本書では興味深いことに、オリジナルな人たちは私たちが思うよりもずっと普通の人たちであると指摘しています。

オリジナルな人たちも、表向きではリスク大歓迎に見えて、実際は普通の人と同じ恐怖や不安を抱えている人がとても多いのです。これまで歴史の教科書に乗るような革命家でも実際は周囲の強い説得や促しによってしぶしぶ行動を起こしていることが多いことがガンジーやキング牧師など歴史の人物を例にして説明しています。

私の場合は実際に身近にいる起業家の知り合いを見ても心配性な人が多く、数字やデータを使って不要なリスクは徹底的に避けているところを見ると、本書の指摘も納得感を持って読むことができました。

不要なリスクは避け、安全を確保しつつ起業した方がうまくいく

不要なリスクは避ける。退路は断たない。会社はやめない。リスクを極限まで下げつつ成功できる方法を探る。
不要なリスクは避ける。退路は断たない。会社はやめない。リスクを極限まで下げつつ成功できる方法を探る。

一般的に起業や独立をするには退路を断たなくてはならない(リスクを負わなくてはならない)と思いがちですが、実際の起業家の研究では「起業をした人たちが本業を続けたか、辞めたかは本人が置かれている経済状況とは関係なく、更に収入の高い人が本業を辞めて起業に徹しても成功する可能性は高くも低くもない」とのこと。
 
起業が成功することと本業を続けたか辞めたかどうかの間には関連性がなく、ただ単に起業家の性格が違うだけでした。起業に専念することを選んだ人は、「自信に満ちたリスクテイカーの性格」だっただけであり、本業を続けたまま起業した人は「自信が低く、リスクを避けたがる性格」を持った人であるだけでした。

多くの人は起業家こそリスク・テイカーであるべきと考え、そうした人を賞賛しがちですが、起業家を調べた研究は真逆の結果を示しました。

本業を続けた起業家は、本業を辞めた起業家よりも失敗の確率が33%低かった
リスクを嫌い、アイデアの実現可能性に疑問をもっている人が起こした会社のほうが、存続する可能性が高かった

起業に集中して一発勝負を仕掛けるのではなく、リスク管理をしながら起業した方が上手くいく。リスクテイカーな起業家ほど印象に残りますが、実際は「静かなリーダーシップ」という本に書かれているようなリスクを避け、心配性で内向的な起業家もたくさんいるのです。
参考:「静かなリーダーシップ」まとめ&要約 感想

リスクのバランスをとることが重要

ミシガン大学の心理学者クライド・クームスはリスクに関する革新的な理論を生み出しました。「リスクの高い株式投資をしようとする人ほどその他の投資では安全策を選んで身を守ろうとする。」というのです。成功を収めている人は、これと同じようにリスクのバランスを取っているといいます。

つまり、「ある分野で危険な行動をするのなら、別の分野では慎重に行動することで全体的なリスクレベルを弱めている。」のです。

人生のすべての面においてリスク行動を取る人はとても少なく、感情の安定と社会的な安定がオリジナリティを発揮する余裕を生むのです。ある分野において安心感があれば、別の分野でもオリジナリティを発揮する自由が生まれるため、期限のプレッシャーや中途半端な状態で世に出すリスクも負わなくて済むからです

更に、うまくいった起業家ほど不確実性というリスクをただ受け入れるのではなく自らが積極的に行動することで、いかにそのリスクを低減させるかに注力していました

ポイントはリスクのバランスがもたらす安心感でしょう。オリジナルな行動を取るには、新しいことを試さなくてはなりません。ある程度のリスクを受け入れた上で、不安や恐怖を感じる中でも「それでも行動を起こす」ことが重要です。そのためにもリスクに対して慎重になり、向こう見ずなリスクは避けるのです。

キラリと光るアイデアとは。創造性の見抜き方。

アイデアにもいくつかの見分け方がある
アイデアにもいくつかの見分け方がある

オリジナリティを高めて成功するには、より良いアイデアを閃く事が重要。よりよい発明品は目新しいものであると同時に実用的であるべきだといいます。では成功するアイデアと失敗するアイデアはどうすれば見抜けるのでしょうか。

Apple社のスティーブ・ジョブズやAmazon創業者のジェフ・ペゾスも絶賛した電動歩行器のセグウェイの失敗は、だれも見抜けませんでしたオリジナリティを阻む最大の障害はアイデアの「創出」ではなく、アイデアの「選定」にあると本書では主張します。斬新なアイデアの中から、適切なものを上手く選び出せる人がいないことが問題なのです。

アイデアには偽陽性偽陰性の2つのタイプがあります。

偽陽性のアイデア:良く思えるアイデアだけど、実際にはウケないアイデア。
偽陰性のアイデア:全くウケるとは思えないアイデアだけど、実際は滅茶苦茶ウケるアイデア。

発明する立場では、自信過剰が原因で判断ミスを起こしやすくなります。新しいアイデアを思いついたときの「これだ!」という興奮や達成感で舞い上がってしまい「確証バイアス」から自分のアイデアの長所ばかりに目を向けすぎて欠点や限界に関しては無視したり過小評価してしまいます

自分のアイデアを適切に評価できるようになるには、他者からの評価を収集することが大事です。たくさんのアイデアを提示し、どれが一番ウケるのか見てみること。これは任天堂の宮本茂さんの肩越しの視線の話と共通点がありますね。
参考→「任天堂の哲学が学べる「任天堂“驚き”を生む方程式」レビュー&まとめ 娯楽に徹せよ、独創的であれ」

有望な企画は却下されがち

有望な企画ほどは却下されがちなのは世界共通。世界的に大ヒットした「ハリーポッター」も当初は上層部に子供向けの本としては文章が長すぎる、と却下されていたというから驚きです。

これは判断する上層部が新しいアイデアを実行して得られる利益ではなく、悪いアイデアに投資して失敗するほうに目を向けがちだからです。ライス大学のエリック・デインいわく、専門知識と経験が深まるほど世界の見方がある一定の状態に固定されてしまうといいます。
参考→損失回避の原則 「プロスペクト理論」 人は得より損失の方が2倍以上大きく感じる

発明家・クリエイター側は確証バイアスにより偽陽性判定をしがちで、上司やアイデアを選定する側は既存のものに固執し却下するべき理由ばかり注目して偽陰性判定をしてしまう傾向にあります

オリジナリティを評価するのに最も有効な方法は、同じ分野の仲間の意見が最も有効。同じようなスキルや経験を持つ損益関係の無い横方向のライバルが一番そのアイデアを判断出来るといいます。

独創的で成功するアイデアは、そのまま伝えるとまず受け入れられません。新しいアイデアを誰かにプレゼンするときは、単純接触効果を利用したり、アイデアを小出しに時間をおいて何度も話すことが効果的とのこと。

単純接触効果の利用例として、ディズニーのライオンキングとハムレットの話が出ています。

「ライオンキングはディズニーにあわや没にされるB級映画との認識だった。しかし、関係者の一人がこれはハムレットではないか?というひらめきを得たことで、古典というなじみ深い手がかりからヒントを得て素晴らしい作品になった。」

ハムレットは有名なシェークスピアの古典で、何度も名前を聞く機会があるから誰もが親しみ(納得感)を抱いています。新企画ライオンキングはみんなに馴染みのあるハムレットとセットでプレゼンされることで作品として形になれたというのだから驚きました。

「幅広い経験」と「深い経験」がオリジナリティを高める。

経験にも2種類ある
経験にも2種類ある

その人ならではのオリジナリティを高めるためには、「幅広い経験」と「深い経験」が独自に組み合わさると創造性が発揮されるとのこと。

・ノーベル賞受賞者は平均的な科学者と比べて芸術関連の興味が高いという調査結果がでています。これはノーベル賞受賞者が「表現されるアイデアや感情」に引きつけられる傾向があることを意味しています。
・ファッション業界のクリエイティブディレクターの研究では、海外経験が豊富なほど異なる文化や価値観と触れるために柔軟性や順応性が高まるそうです。これは海外に住んだ経験ではなく、海外で仕事をした経験が新しいコレクションがヒットするかどうかの指標になったとか。接した海外の文化が自国とかけ離れているほどディレクターの創造性に与える影響が大きかったそうです。長く海外で仕事をしたという「経験の深度」が長ければ長いほどオリジナリティが高いと評価されました。

直感が当てになるとき

直感は経験豊富な分野で、因果関係が一貫している分野のみ有効に作用する
直感は経験豊富な分野で、因果関係が一貫している分野のみ有効に作用する

直感は、自分の経験が豊富にあり、因果関係が一貫している分野においてのみ正しく作用しますこれは無意識のパターン認識が思考による判断よりも優れるためです。ただ、一方で知識が無い分野ではじっくりと思考で分析した方がより確実な判断が出来るので、何でも直感に頼るのは危険とのこと。

「因果関係が一貫している分野では直感が生きる。物理学者や会計士、保険アナリスト、チェスの名人や医師の症状判断などは直感から利益を得る。しかし精神科医や株式ブローカーなどは経験から大きな利益は得られなかった。変化のめまぐるしい世界では、経験から得られた教訓がその人を間違った方向に導くこともある。直感は新しい物事に対処するヒントとしては頼れず、「分析」がより重要になってくる。」

過去に成功を収めている人が新しい環境に入ると業績が振るわないのは経験から来る思い込みが影響していると考えられます。

傑作を生み出す方法は多くのアイデアを生み出すこと

とにかく沢山のアウトプットをする事が傑作を生み出すための近道
とにかく沢山のアウトプットをする事が傑作を生み出すための近道

傑作や良いアイデアを生み出すには沢山の作品・アイデアを生み出す事が最も有効な方法。個人的に本書の中で最も印象に残った箇所です。
 
ディーン・サイモントンの研究によれば、芸術の天才ですら自分の作品を正しく評価できていないことを突き詰めました。例えば音楽ではベートーヴェンが自らが気に入った楽曲と後世になって最も演奏されている曲とは一致しないそうです。

何かを創作する人がはじめからこれが傑作になると分かっていたら、試行錯誤してアイデアを生み出す努力をやめてしまうだろう。」

どうすれば良いアイデアを作ることが出来るのか。本書では人よりも「多くのアイデアをとにかくたくさん生み出すこと」が最も良い作品を生み出す上で欠かせない要素だといいます。

サイモントンいわく、ある分野における天才的な創作者は同じ分野に取り組む他の人たちよりも特に創作の質が優れているわけではないそうです。唯一違うのは彼らの創作量大量に創作することで多様な作品が生まれ、オリジナリティの高いものができる確率が高くなるのです優れた創作者は優れた作品を生むのと並行して平凡な作品をたくさん生み出しています。こと芸術やアイデアに関しては数打ちゃ当たるが真実なんですね。

・ピカソの全作品は1800点以上の絵画、1200以上の彫刻、2800以上の陶芸、1万2000点以上のデッサンのほかに、版画、ラグ、タペストリー作品もあるが、そのなかで高く評価されているのはほんのわずか。
・シェイクスピアは20年間に37の戯曲と154の短い詩を書いている。
・モーツァルトは35歳で死去するまでに600曲、ベートーベンは生涯で650曲、バッハは1000曲以上を作曲している。更にクラシックの世界では作曲家が5年間で作曲した数が多いほどヒット作が生まれる可能性が高くなっていた。
・科学の分野ではアインシュタインは248もの出版物をだしているが、「一般相対性理論」と「特殊相対性理論」以外はごく小さな影響しかもたなかった。
・エジソンは30~35歳の間に電球、蓄音機、炭素送電話機を発明。その間に100を超える特許を申請している。

オリジナリティを発揮したければ、とにかくたくさんつくること、大量に創作することしかないこと。分野を問わず、最も多作な人たちであるほど独自性に秀でているだけでなく、優れた作品も生み出しています。

有名の作品の裏には多くのマイナーな作品が埋もれている事実。質と量は両立できないものとして考えられがちですが、この考えは間違っているこの指摘は、少量の作品しか作っていないのに自分には才能がないと思い込んでいる人達にとって、心励ます知見ではないでしょうか。

更にスタンフォード大学のロバート・サットンいわく、「独創的な考え方をする人は、奇妙なアイデアや、満足のいかないアイデア、とんでもない失敗となるアイデアをたくさん出すが、それらは無駄にはならない。アイデアが大量に蓄積されるからだ。」といいます。

多くの人が斬新なものに到達できないのは、アイデアをちょっとしか出しておらず、その少数のアイデアを完璧に磨き上げることに囚われているからです。影響力のあるアイデアや成功するアイデアを生み出したいのであれば、とにかくたくさんのアイデアを作ることが重要です。

先延ばしが創造性を高める!?

先延ばしが創造性を高める。じっくりと色んなアイデアを統合していくため。
先延ばしが創造性を高める。じっくりと色んなアイデアを統合していくため。

著者のアダムグラントさんがTED動画でも語っている印象的な話で、先延ばしがアイデアの創造性を高めることが指摘されています。

理由として、早い行動やアイデア選定にはメリットもありますが、一度決定したアイデアから離れられなくなります。一つのアイデアに決めてしまうとその時点から発展せず、それ以外のアイデアとの組み合わせが見えなくなるのです。

先延ばしをしてあれこれ考える時間をとることでアイデアを温め、幅広くアイデアを検討し、最終的により良いアイデアが生まれます。先延ばしは「生産性の敵」ですが、「創造性の源」となりうる指摘は、つい先延ばしや時間にルーズなクリエイターにとっては自分を肯定してくれるものと言えますね。

例えば、レオナルドダヴィンチの「モナリザ」は十数年もかけて作られており、その間ダヴィンチが他の分野の仕事をしていたことが大きくモナリザの革新性に影響を与えました。他にも歴史に残る名演説をしたキング牧師はギリギリまで演説の準備をしませんでした。

余計なことをして時間を無駄にすることがオリジナリティにとって欠かせない要素をもたらす。」

他にも一つのアイデアを完結させないでいると、ツァイガルニック効果が働きます。本書を読むと頭の片隅に中断したアイデアを置くことは、クリエイティブな仕事には有益な行為だといえます。

年齢とオリジナリティ 早咲きの人・遅咲きの人

発揮するオリジナリティの種類によって早咲き、遅咲きの二つのタイプがある。
発揮するオリジナリティの種類によって早咲き、遅咲きの二つのタイプがある。

年齢とビジネスでの成功は何ら関係が無く、いくつになっても成功が可能です。オリジナリティがピークになる時期も人それぞれ異なっていますが、起こしたい革新の種類のタイプによってそれぞれピークとなる年齢が違う点が指摘されています。

本書ではオリジナルなイノベーター(改革者)には二つのタイプ(傾向)があるとしています。

概念的イノベーター:大胆なアイデアを思い描いてそれを実行に移すこと。
実験的イノベーター:試行錯誤を繰り返して問題解決を行いながら学び、進化を遂げていくこと。

概念的イノベーターは早熟で、実験的イノベーターは晩年に大きなことを達成します

その理由としては、概念的イノベーションは何年もかけて順序たった調査や試行錯誤を行う必要が無いため、人生の早いうちに達成できるからです(数学者など)。飛び抜けて独創的なアイデアは、新鮮な視点で問題にアプローチした場合にもっとも発見されやすいそうです。そのため、概念的イノベーターは早くに達成を成し遂げますが、問題への一定のアプローチを身につけて型にはまってしまうとオリジナリティが低下していくそうです。蓄積された経験が悪影響していると言えるでしょう。

反対に実験的イノベーション必要とする知識とスキルの蓄積に何年も何十年もかかるので、オリジナリティの源泉は涸れることなく長続きします。時間がかかるけれど、オリジナリティを更新して常に新しいものにしていけるのが強みですね。映画監督とか芸術分野、作家に当てはまるタイプで、好奇心と熱心さを持ち続けることがオリジナリティをいつまでも失わない為に必要な素養であるといいます。

一歩踏み出す勇気はどこから来ているのか

どういう人が”オリジナルな人”になるのか?
どういう人が”オリジナルな人”になるのか?

オリジナルな人はどういう生育過程を送ってきたのかについての研究です。

オリジナルは人は末っ子が多いそうです。兄弟間のリスク選好についての研究があります。先に生まれた子ほど保守的になりやすく、末っ子ほどリスクを好みやすいそうです。年齢ではなく出生順序の方がその人の保守性を決定づける要素だとするサロウェイの研究が紹介されています。末っ子にオリジナルな子が多いのは、末っ子ほど甘やかされて育ち、上の子供たちからも面倒を見て貰ったり、上の子の判断をみて学ぶことが出来たことに加えて、周囲が自主性を尊重してくれたり、守ってくれたりするから安心して新しいことに挑戦することができた背景があります。
参考→出生順位と性格傾向 後生まれのほうがリスクを取る傾向にある?

両親からの教育では、オリジナルな人はかつて両親からのしつけで「説明」を受けていました。両親からなぜそうしてはいけないのか「理由(わけ)」を話すことで、子供を尊重しているというメッセージが伝わります。また、こうした理性的なしつけは犯罪行為や迷惑行為とは無縁の子を育てるという調査結果が出ています。

創造性が高い子を持つ親の決めるルールは1つ以下だそうです。そのルールは道徳的価値観に重点を置いていることが特徴です。「なぜ」このルールがあるのか理由を説明することで、子供はそのルールを自分のことのように感じられます。自分の行動が周りの人に及ぼす影響を実感できるようになるのです。不良行為を犯した少年に対しては「お母さんが悲しむよ」と言ってあげることが一番心に刺さります。

また子供を褒めるときは「行い」ではなく「人柄」を褒めるのが効果的とのこと。人柄を褒めた方が「自分のアイデンティティ」としてその行動を取り込むため、その後の行動に良い影響を与えます。
・「手伝って」→「片付けの出来る子になって」
・「不正をしないでください」→「不正を働く人にならないでください」
不道徳な行為が自分のアイデンティティと結びつくと、後ろめたい気持ちになりますよね。行動と人柄が結びつくメッセージに人は影響を受けます

■物語から得る力
見本となる人物を見つけることがその人のオリジナル性に大きく影響を与えるそうです。お手本となる人物は現実の人物でなくても、本の中の伝記に描かれた人物やフィクションの中の架空の人物でもかまいません。成功した起業家は「千夜一夜物語」(現代でいえば「ハリーポッター」)といった物語の中に見られる、「主人公たちが特別な目標を掲げ、困難を乗り越えて達成していく」本を子供の頃に読んだ経験がある人が有意に多いのだそうです。身近に独創性の手本があれば視野が広がり、共感能力も高まると考えられます。お気に入りの物語の主人公が子供たちのオリジナル性を導いていくのです。

結果の論理と妥当性の論理

オリジナルな人は「自分がどういう人間か、どういう人間になりたいのか」を決断の拠り所としています。

行動の倫理には結論の倫理と妥当性の倫理の2種類があり、

結果の論理:「私のような人は、こういう状況ではどうするべきか」と外側を見渡して結果を予測すること。
妥当性の論理:内側の自分のアイデンティティと向き合うことで、問題を自分事として扱うこと。

オリジナルな人は結果の論理ではなく妥当性の論理で動きます。

また、結果の論理で判断するとリスクを負う場面で行動出来なくなります。「自分が望む結果を出してくれるものは何か?」ではなく、「(今の状況なら)自分のような人間は何をすべきか?」という問題を自分事として捉える感覚で行動できる人がオリジナルな人です。

■効果的な手洗いを喚起するメッセージとは
妥当性の論理の例として以下の文を見てください。医療関係者に手洗いを喚起するための効果的な張り紙はどちらでしょう?
・手洗いはあなたを病気から守ります。
・手洗いは患者を病気から守ります。
効果が大きくあったのは後者の患者に焦点を当てた張り紙です。「患者」を強調することで自分だけの損得勘定で動くのではなく、「私のような人はなにをするべきか?」に意識を向けるからです。メッセージの伝え方を変えただけで大きく人の行動が変わった例です。

ビジネスの優位性はタイミングで決まる

ビジネスでの成功の鍵はタイミングが握っている。
ビジネスでの成功の鍵はタイミングが握っている。

ビジネスでの成功と失敗を分けるのは42%の場合でタイミングだとする研究が紹介されています。

オリジナリティ溢れる成功した起業家は誰よりも先に先行者利益を取っていると思いがち。しかし、実際は先発企業の失敗率は47%、後発企業はわずか8%の失敗率という研究結果が出ています。先行者となることは、利点もありますが、それ以上に不利な面が大きいとのこと。一般の思い込みとは違って、先行者利益と成功率に関してはまだ確実に有意であるとは証明されていないのが現状のようです。

例えば、家庭用ゲーム機の世界では「マグナボックス」のオデッセイが先発企業で、「ファミコン」の任天堂は後発企業です。

オリジナルであることは先発者である必要は無く、他とは異なる、他よりも優れていれば良いので、タイミングが重要という本書の指摘は、若いベンチャー起業家ほど陥りがちな時期尚早にビジネスの重要な決断を下してしまうことを避ける意味でも面白い指摘です。

「リスクを恐れず行動する人は、とにかく一番になることにとらわれており、衝動的な決断をしがちだ。」

しかし明確に先行者が有利な分野があり、それは特許技術やソーシャルメディア、Youtuberといったユーザーの数が増えるに従って明確に価値が高くなるタイプのものです。積み上げ資産と言われるブログもそうなので、私ももっと早い時期にブログを始めていれば良かったなぁと思います。

オリジナルな組織作りとは?

組織心理学が専門の著者は組織の中でどう振る舞えばいいのかについての有益な考察を示してくれる。
組織心理学が専門の著者は組織の中でどう振る舞えばいいのかについての有益な考察を示してくれる。

組織心理学者である著者の得意分野、オリジナルな組織づくりの研究も本書では紹介されています。

特異性信頼という概念は、組織の中で何かを提案するには、まずは組織の中の居場所や権力を持ってからすることが重要という概念です。
→参考:組織を変えるための「特異性信頼」についてのまとめ

そして他者に対して批判的だったり、敢えて自分の主張に欠点を持たせたりする人は理知的にみられ、説得力が増すといいます。
→参考:批判的な人ほど賢く見える? その理由と応用例

マイナス面を自分から伝える事で相手は自分が伝えた以上の欠点を探そうとしなくなります。自分からネガティブな箇所を示すこと、欠点を正直に伝えることで信頼性が増すテクニックは面接の場でも応用できます。

■どんな上司が良い上司か
オリジナルさを持った人がどんな人を上司にすれば良いのかという考察では、皮肉屋でトゲのある人物が上司として適任という研究が紹介されています。こういう一癖もある上司は味方になってくれると心強い存在だとか。

人が良い上司は周囲との和を重んじるため、オリジナルなアイデアを出しても聞き入れて貰えないことが多いのだそうです。また中間管理職には同調性が高い人が多いため、彼らは現状を維持する確実性を選ぶことが多いです。もし革新的なアイデアを広めたいのであれば中間管理職には伝えず、組織のトップと部下にだけ伝えていくことが効果的だそう。

誰と仕事をするか?についての研究

誰と仕事をするのかについての研究では、より実践的にオリジナルな組織を作り価値を生み出すための知識を得る事が出来る。
誰と仕事をするのかについての研究では、より実践的にオリジナルな組織を作り価値を生み出すための知識を得る事が出来る。

組織やチームを作り上げる時に誰と仕事をするべきかについての研究も示されています。まとめると以下の通りです。

・外部との交渉人にはほどほどの情熱を持っている人を選任する。→冷静に主張を和らげ論理的に接することが出来るから。
・同じ価値観を持つ別グループと協力するときは、横方向の敵意に気をつける。
参考→似たもの同士ほど仲悪い!?「横方向の敵意」について
・外部からは最も過激な主張をする人がその組織の代表者に見え、内部からはグループと密接に繋がっている人が組織の代表者に見える。このギャップを考慮に入れないと、代表者が外部に向けて過激な主張をすると、それについて行けない内部の人が離脱する可能性がある。

組織の中で何かを改革したい場合はソフトな過激派がうまくいきます。既成の信念とオリジナリティはぶつかるため、現状打破へのチャレンジにおいて過激な主張は理解されません。人々を味方にするには、実現出来そうもないアイデアを実現出来るかのように落とし込んで伝えることが重要です。「なぜ?」ではなく、「どのように実現するか」へと焦点を移すこと。どんなに現実味のないアイデアでも、提案する方はもう実現してしまっている気持ちを持つ事が重要です。

この点に関してはロバート・チャルディーニさんの「影響力の武器」にあるフットインザドア法(小さい要求を出し、足がかりを確保してから大きい要求を出す。)が参考になるでしょう。
参考→【考察と実践】影響力の武器 第3版 要約まとめ

フレネミーを切り捨て、敵を味方につけること

人間関係では自分にとって敵にも味方にもなる両価的な人間関係(フレネミー)を切り捨て、敵を味方に付けることが強い組織を作るとの指摘があります。
参考→相手をしていて疲れる人の特徴とは

エリオット・アロンソンの研究では自分にいつも協力的である人に対してはそれを当たり前だと考え、軽視してしまうのだとか。つまり今ある味方よりも、敵側を説得して味方に引き込んだ方が組織にとってインパクトは大きいということです。

付き合うと消耗するフレネミーを組織から無くし、敵を味方にすることが組織を強くします最高の味方は「初めは反対していたが、次第に味方になってくれた人たち」とのこと。敵側の心理としては、味方に転じると当初抱いていたマイナスの印象を克服するために、努力してその組織の良い点を見つけてくれます。元アンチこそ疑う人の気持ちが分かる分、他者をもうまく説得できます。

だれかを仲間に引き込みたい場合は、相手を説得するのではなく共通項を探します。こちらの価値観を相手の目標を達成するための手順として提案すること。これは、他人の価値観を変えるのは難しいので、自分たちの価値観と相手の価値観との共通点を探し結びつける方がずっと簡単だからです。

ダメになる組織、飛躍する組織。

同じ価値観を共有する集団ほど個人のオリジナリティは抑圧されていく。
同じ価値観を共有する集団ほど個人のオリジナリティは抑圧されていく。

集団思考はオリジナリティを抑圧します。この集団思考は同調した人同士が深い関わり合いを持つ時に強く起こります。同じ価値観や基準を共有するほど外れた行動は取りにくくなります。カルト集団と強い文化を持つ集団は紙一重。

創業初期〜上場までは「献身型」モデルがうまくいく。

起業が創業したときには「献身型」モデルの人材が上手くいきます。献身型モデルの人とは、企業文化に溶け込むことを絶対条件として、企業の価値観や基準と足並みを揃えられる人材です。会社に対する思い入れは息が長く続くため、特に困難が多い創業初期には重要です

組織に貢献してくれる人材を選ぶのであれば、特別なスキルやスター性(カリスマ性)・学歴で選んだ人材よりも、「新しいアイデアを生み出せるかどうか」「企業のミッションに専念できるかどうか」を重視すべきだといいます。それを前提として同僚や組織と繋がっていれば、その人はほかで働こうとは思いません。

一方で、組織が成熟するにつれて新たなアイデアを持った人材を取り込むことが難しくなります組織は時間が経つほど均一になります。似たような人々を引きつけ選び、同じ人材を獲得し続けるようになります。このため多様な考えや価値観が薄れていきます。

市場が動的であればあるほど、強い企業文化を持つ大企業は孤立してしまいます。変革が必要である事を認識できず、異なる考え方をもつアイデアに抵抗を示す傾向が強くなります。

道を誤るCEOの特徴

道を誤るCEOの特徴として、会社の業績が低迷すればするほどCEOたちは「同じような視点」を持つ友人や同僚からのアドバイスを求める傾向にありました。本来なら逆のことをしなくてはならないのですが、異論を突きつけられることの心地悪さよりも、認められ傷をなめ合う心地よさを好んでしまいます。(人間的ですね…。)

少数派の意見は重要で、意識の幅や違った考えが生まれたりするのに重要な役割を果たします。本書ではかつてデジタルカメラのパイオニアだったポラロイド社の失敗を例に挙げて、「人と違う考え方」が出来ても「違う考え方ができない会社」は問題だとしています。一つの価値観に縛られてはいけないのです。

失敗は過剰な自信と周囲からの評判を気にしてしまうことから来ています「閉鎖的な考え」と「近親思考」から脱却できなくてはなりません

ブリッジウォーター社の例

オリジナルな組織作りの例として、世界最大の投資会社であるブリッジウォーター社の例(https://www.bridgewater.com/)を挙げています。ブリッジウォーターはAmazonやgoogle以上の利益を長年達成している投資会社で、世界最大の利益を維持し続けています。

このブリッジウォーター社は新規採用を行う際、どれだけ会社の文化に適応できるかを見るそうです。

■ブリッジウォーター社の格言(ルールブック)の例
・問題や意見、否定的な感想などをオープンにして直接話し合うこと。
・忠誠心より、真実を語ることや柔軟であることを優先すること。
・批判を口に出して言えないのなら、批判意見を持つ権利はない

典型的な組織では異論を唱える者は罰を受けますが、ブリッジウォーターでは意見が出せるかどうかで評価されます。自分の意見を言わず、現状に迎合する社員は解雇されることすらあります

強い文化を創り上げるためには、コアとなる価値観の一つに「多様性」を掲げなくてはいけません。」

意見の相違を歓迎すること」が単なるカルト集団と強い文化を持つ集団とを分ける大きな要素です。カルト集団は教理が行動の軸となりますが、強い文化を持った集団はメンバーがどれだけその文化に貢献できるかを考慮します。

アイデア実力主義を採用し、最も優れたアイデアが採用されるような組織が強い組織。多数決ではなく、アイデアのクオリティ・質で決断できるかどうか。

上司や部下、地位や立場に関係なく誠心誠意の議論ができる土壌で、不協和音があっても双方が学べる環境。自分の意見をはっきり述べる組織文化をつくることができれば、従業員たちは集団に迎合してアイデアを押し殺す心配などしなくてもよくなります。ブリッジウォーターの成功の秘訣はこのアイデア至上主義にあります

部下に解決策を持ってこさせるな

デビッド・ホフマンいわく、解決策に焦点をあてすぎる文化は「弁護の文化」に偏ってしまい探究心を削いでしまうといいます。結論ありきで、広い視点から物事を学ぶ機会を失ってしまうのです。

リーダーには自分とは意見が異なる人間を探し出す力が求められます反対意見を持つ人が早い段階で意見を述べられるように、ブリッジウォーターでは部下には解決策ではなく問題を持ってこさせるそうです。ブリッジウォーターでは「何か主張をする時は自分が正しいつもりで。相手の話を聞くときは自分が間違っているつもりで。」を実践しているとのこと。

荒波を乗りこなせ

人生の荒波を乗りこなすために
人生の荒波を乗りこなすためにオリジナルな人達はどう対応しているのか

成功している人は、傍目には確信と自信に満ちているように見えますが、内心さまざまな感情や自己不信が入り交じっています。本書の序盤にもそうした指摘がありましたが、オリジナルさを持った人も私たち普通の人と何ら変わりません。

では、オリジナルな人たちはどのように逆境や荒波を乗り越えていくのでしょうか。まとめると以下の感じです。

・不安と緊張を乗り越える為の二つの戦略の話では、人それぞれ良い結果をイメージするのか、悪い結果をイメージするのかによってパフォーマンスの質が変化することが指摘されています。
参考→逆境を乗り越えろ 不安と緊張の心理学
・怒りについては注意を向け続けると肥大化することが指摘されています。
参考→怒りのコントロール心理学 表出ではなく方向を制御せよ
  →注意のスポットライト理論とは 気を紛らわすことの力
・人生の満足度を高めるのは、何かしら情熱や使命感を持つ事。
・恐怖の場面にはユーモアで対処するのが効果てきめん。苦しい局面を笑いに変えるユーモアセンスを持つ心の余裕は常に持っておきたいものですね。

他者の感情を動かすには

他人に影響を与えるには
他人に影響を与えるには

最後に、オリジナルな事を成し遂げようとした思ったときどうやって他者を巻き込むのか。自分が少数派の時にどう立ち振る舞えば良いのかについての知見をまとめます。

・同調圧力について
心理学の教科書には必ず載るといってもいいソロモン・アッシュの実験では、多くの人が同調圧力の影響に屈し、多数派に従ってしまう傾向があることが示されています。
→参考:人は誰でも同調圧力に屈する アッシュの同調実験 Asch conformity experiments

この同調圧力を減らすために、少数意見の仲間を見つける事が重要です。支持する仲間が一人いるだけで多数派からのプレッシャーのほとんどが消えます。仲間が一人いるだけでも孤独感は激減するのですね。その結果、人は自分一人でないことが分かると自分の信念に従った行動を起こしやすくなります

・切迫感を利用すれば人を動かせる
人を動かすには「切迫感」がキーとなる研究が紹介されています。行動決定者になぜ今やらなくてはいけないのか、「今すぐにやる」必要性をどう持たせるかが重要です。基本的に人は切迫感を感じなければ、現状にしがみつきます。

・損失回避の原則 プロスペクト理論
人は得られる利益よりも損失の方を大きく感じる傾向を持っています。同じ結果をもたらす選択肢を提示されても言い回しが違うだけで選択が逆転することがダニエルカーネマンのプロスペクト理論で示されています。リスクを取るような選択肢は避け、リスクを避けるような選択肢を人は好みます。

このプロスペクト理論と関連して、「こころの知能指数」の生みの親ピーター・サロベイさんいわく、新しい行動やアイデアを採用するとき、「相手が安全なものと認識するか、リスクが伴うものと認識するか」によって説得の仕方が変わるのだといいます。相手が安全だと思うのなら、行動によって生じる利益を強調したほうがよく相手がリスクだと認識している場合は行動を変えないで起きる悪いことを強調した方がいいとのこと

・関心を持たせるには
無関心へのてこ入れは重要ですが、ビジョンを最初に伝えても意味がありません。他者に働きかけ、思い切った行動に出て貰うには現状の何に問題があるかをまず示すことが必要です。安全圏から出てもらうには、現状に対する不満やいらだち、怒りを認識させ、現状維持による損失を示すことが切迫感をもたらし、人を動かします。

■会社を潰すエクササイズ?
人が動くのは切迫感によるもの。その切迫感をビジネスに活かすための練習として、会社を潰すことを想定した思考訓練があります。競合他社の立場になって、どのようにすれば自分の所属する会社を潰すことが出来るのか考えてみます。そのあとで自社の立場からそうした最悪の事態を防ぐにはどうすれば良いのかを考えます。これは相手側の利益に焦点を当てて考え、自社側の損失の観点で問題を再構成する方法。敵側の立場になって自分の弱点を洗い出すのですね。
■コミットメントとは?
ミンジョン・クーとフィッシュバッハさんらの研究によると、コミットメントとはどれだけ真剣にかかわっているかの度合いのことで、この度合いを高めることで困難が乗り越えられるといいます。例えば決心がぐらついているときは、すでに成し遂げたことを考えてみます。そうすると、今諦めるのはもったいない気がして自信とやる気がわいてきます。コミットメントの度合いが高い人ほど目標を達成しようという決意が高く、そうした人は目的地と現在値の間にある距離を認識することが意欲を高める最良の方法とのこと。

目標との距離の認識に関して言えば、「マネジャーの最も大切な仕事」という本の中で前に進んでいる感覚を得る事がモチベーションを高める指摘がされています。
参考→【書評 まとめ 考察】「マネジャーの最も大切な仕事」 要約レビュー 前に進んでいる感覚を持ち、小さな前進を実感することが人のやる気を高める

総評

満足度は100%。これまで読んだ心理学本の中でどれがベストか聞かれたら、間違いなく本書を挙げます。

超特大ボリュームの1冊ですが、どのページを読んでも学びがあります。心理学研究の知見から現実場面での具体例・エピソードを示すことで説得力も充分。著者のアダムグラントさんが組織心理学者ということもあって、全体として独創的なアイデアそのものを考察して行くというよりは、社会的動物である人間がどう組織やビジネスの仕組みの中で個人のオリジナリティを発揮していくのかに焦点が当てられています

本書は「オリジナリティ」を現状に満足せず、自分にとってよりよいアイデア・世界を実現するべく、はみ出して行動出来る人としています。こうしたオリジナリティは天才たちではなく、凡人だと思い込んでいる私たちでも実現出来ることだとしています。失敗を恐れるのは日本人に限ったことではなく、アメリカ人でも一緒です。アメリカは個人主義的でユニークな自己実現が受け入れられる土地柄でありながら、優れた成果を求めすぎるため、失敗を恐れるあまりに「発言して目立つ」ことを恐れているとのこと。世界どこに行っても同じ人間、悩みも共通ですね。

独創性を発揮する人が直面する問題や、組織での振る舞い方、人の説得の仕方、良いアイデアをどう見分けるかなど、オリジナルな人たちが直面するテーマを多面的に考察しています。

私が本書で気に入ったのは、「独創的なアイデアを生み出すには、とにかくたくさんの作品を作る必要があること」と「先延ばしをすることでアイデアを寝かせることが質の良いアイデアを生み出す事に繋がる」という指摘です。これまでの自分の思い込みが崩れ、新たな発見に驚きました。

本書で紹介されている豊富な研究から得られる独創性についての知見は、生き方や働き方について多くの示唆を与えてくれます。個人のクリエイティブをどう社会に活かしていくのか興味がある人、ビジネスや組織でどうオリジナリティが発揮されているのか知りたい人は是非手に取って読んでみてください。何度でも「学べる」一冊です。

■書誌情報
「ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」が出来る時代」 アダム・グラント (著) / シェリル・サンドバーグ (解説) 楠木 建 (監訳) 三笠書房 (2016/6/24)

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