【石膏物語】マリエッタストロッチ胸像 ルネッサンス前期の肖像彫刻を代表するスタイル

【石膏物語】マリエッタストロッチ胸像 ルネッサンス前期の肖像彫刻を代表するスタイル
今回取り上げる石膏像は婦人像であるフランチェスコ・ローラナ作のマリエッタ・ストロッチ胸像です。ルネッサンス前期の肖像彫刻のスタイルを代表する造形が特徴です。でも実際はただの「婦人胸像」で、マリエッタさんではありません。この像の実物は空爆で破壊され、事前に複製してあった石膏像から復元されました。

本物のマリエッタストロッチ像

本物のマリエッタストロッチさん。どことなくゲームオブスローンズのアリアスタークに似ている気がする。

この像の元となる像(婦人像)と名前が混同されているマリエッタストロッチ(Marietta Strozzi)像はドイツのベルリン美術館にありましたが、空爆で破壊され、事前に複製として作られた石膏像から型が作られました。実物のマリエッタストロッチをモデルとした彫刻はデジデーリオ・ダ・セッティニャーノ(Desiderio da settignano)作のもので、1460~64年制作でベルリン美術館に収蔵されています。いろんなゴタゴタがあって両者が混同されているようです(石膏像として普及しているほうはマリエッタさんではない。)。

オリジナルのマリエッタさんはどことなく明るい顔をしていますが、石膏像の方は沈痛で耽美的な表情ですね。

耽美的な美しさを秘めつつも、どこか他者を見下しているような気がする…

造形的な特徴:前期ルネッサンスの肖像彫刻の典型、体と顔が同じ角度、記録性重視の正面と真横の構図

肖像彫刻の典型。記録性重視で特徴を捉えて、残す。
肖像彫刻の典型。記録性重視で特徴を捉えて、残す。

この石膏像の特徴はルネッサンス前期の肖像彫刻の典型であることです。体と顔が同じ方向、角度に特徴があります。貴族や有力者の肖像彫刻として、特徴を捉えるために記録性を重視しています。

たとえばルネッサンスのボッティチェリはミケランジェロと同時代ですが、懐古主義に傾きこの肖像彫刻のような構図の作品を残しています(ボッティチェリは彼の時代の10年前のスタイルを良しとしました)。

ボッティチェリ 「美しきシモネッタの肖像」

ルネッサンス前期の肖像絵画・彫刻の基本はこの真横正面の構図です。貴族はずっとモデルの姿勢をしてはくれませんし、画家は特徴を素早く捉えるために横顔と正面を普通の図面みたいにスケッチにとって、絵にしたり彫刻に起こしたりしました。

ミケランジェロやダヴィンチの師匠ヴェロッキオはこの硬直した構図を一歩進めた。

一方でミケランジェロやダヴィンチの師匠であるヴェロッキオは古典古代の研究からこれを一歩進め、回転やねじりを造形に組み入れました

有名なダヴィンチのモナリザの革新性は、体と顔が回転していることにあります。

ダヴィンチのモナリザの革新性は体と顔が回転していることにある。

ヴェロッキオが彫刻で行なったねじり・回転という革新性をダヴィンチがモナリザでやり、モナリザは革新的な肖像画として大きな影響を持ったといいます。

最終的にミケランジェロのヴェルヴェデーレのトルソラオコーンのトルソに回転やねじりの造形は受け継がれ、バロックに繋がっていきます。

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