ジャンプ流vol.17 桂正和 I”s 要約&まとめ

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ジャンプ漫画家の創作の秘訣を探るジャンプ流。今回は「I”s」などの作品で有名な桂正和さんの創作の秘訣を探ります。桂さんが漫画家になった経緯や、創作活動・クリエイティブ活動のヒントとなる知識をまとめました。

書誌情報 
「ジャンプ流 vol.17 まるごと 桂正和 I”s」 集英社 2016/09/01

デビュー秘話

・小さい頃から絵を描くのが好きだったけれど、特別にマンガに興味があるわけではなかった。小学校でマンガの絵を描く上手な友達がいて、それをマネしてかいていたぐらい。
中学2年生の頃どうしても50万円ぐらいのステレオコンポが欲しくなり、たまたま読んだジャンプに手塚賞の賞金が50万円とあって。この賞金があればコンポが買える!と手塚先生のマンガの描き方を買い、道具を揃えるところから始めた
・中学生には痛い出費で、マンガを描くにはこんなに金が掛かるのか、と思った。
・初投稿から3年、初担当の鳥嶋さんから電話が。欲しかったコンポは高校に入ったときに親が買ってくれて、それでもマンガ投稿を続けたのは勉強したくなかったから。鳥嶋さんは男性キャラのアップが良い、ということで連絡をくれた。
・たくさん短編を描こう、と鳥嶋担当のアドバイスに従いつつ、本格的にマンガの世界に進んでいった。
高校時代の中頃から物語をまとめるのが面白いと感じ始めた
・多くの読み切りを描く中で、限られたページ内で必要な要素を絞り込み、オチの布石を入れたりしていくと、ネームの切り方というのが見えてきた。上手くまとまったときに爽快感を覚えるようになった。
・「ウイングマン」で初連載。初投稿から5年で随分長くかかったと当時は感じた。予想以上にハードで。連載の初期はアシスタントがいなくて背景まで自分で描いていた。常に睡眠不足で意識がもうろうとして、あまりにキツすぎるため3,4話で連載終わらないかと思ったり、開始から2ヶ月ぐらいしてようやくアシスタントを増やしていった。
・アシスタントさんのおかげで多少楽にはなったけれど、キツいことには変わりなく、一年ぐらいで体調を崩し入院。連載50回記念の表彰式に出席して帰宅すると病院から連絡が来ており、今すぐ入院することになり、長い期間の入院となった。
・迷いの時期もあり、自分は何を描いているのかわからず、かといって描きたいものも余り見えなかった迷走していた時期もあった。
・「電影少女」は恋愛映画の「恋しくて」と「世にも不思議なアメージング」が発想元。物語をドンドン先に進めたいタイプだったから、同じところで足踏みするラブコメは苦手だった。「D・N・A」は相性のいいDNAを持った異性は惹かれ合うという当時の眉唾物の研究を元に、当時流行ったトレンディドラマの展開手法とSFっぽいものを組み合わせた作品。
・担当編集のSF要素が一切無い本格的なラブコメを描いてみませんか、という話を受けて生まれたのが「I”s」。感情表現を主人公だけにして、リアルな視点から恋愛を描くというのがテーマだった。
告白をいかに引き伸ばすかというラブコメ展開の命題に加えて、SF要素なし、ヒロインも典型的という縛り。どうストーリーを展開していくか困ったものだった。結果として既存のラブコメの定番をひねるパロディ要素を加えた。
連載時のアンケートが良くなくてもコミックスが売れるタイプで、連載終了後も続きを描いて欲しいと編集部から言われるケースが多い。
・「I”s」のあとヤングジャンプに移り「ZETMAN」を発表。正義とは何かを突き詰めた作品で、イギリスの小説「ケインとアベル」のような作品をイメージし、実験的なことをしながら10年続く長期連載に。
・デビュー以来なりゆき任せにやってきたところがあり、未だに漫画家である事に実感はない。
・周りの人がやっていないこと、新しいことをやろうとしてきた意識はあるが、マンガを構成する骨格みたいなものが分かってきたのは週刊ジャンプを卒業した後。
漫画家になれる条件を挙げるとしたら、映画などの作品を見たときに何が面白いのか、なぜ感動するのか、きちんとその構造を理解するセンスを持つこと漠然と面白いと感じながら見るだけでなく、その構造を分析して他人に説明できるよう、クセを付けておくこと。そのセンスを持てれば漫画家になるのも夢ではない

技術面

・人と人との関係性に重きを置いた濃密なストーリー。
・既存の作品の要素をパロディ化したり、これまで誰も扱ってないテーマに挑む。
・キャラクターを生み出すときに注意しているのが造形のディテール。一目で特徴が判別できるデザイン。学園モノなら制服のデザインにこだわる。
・仕事以外の、いたずら書きや落書きをたくさん描いていたことが引き出しの多さに繋がっている。
繊細なタッチと表情描写が心の機微を描く
・頭の中にある一連のシーンから様々なカメラアングルを検討しつつ、マンガの形にアウトプットしていく
女性のラインはいかに絵として綺麗に見えるか要所にデフォルメを入れていた表現
・美少女を描く第一人者みたいな世間のイメージから女の子を描くときは人一倍神経を使っている。
映画的な見せ方をしたいという想いがあり、文字を使った説明はなるべく避け、絵で世界観を表現しようとしている

DVDより

頭の中でこういう感じで描こうというのがある。角度や、身体の向きなど描きやすいポーズで描いていく。だいたいこんなかんじかなぁと描いていく。
何を目的に描く絵か分からない場合どういう絵を描けばいいのか悩んでしまう。絵に目的がないと悩む
・耳の大きさは大事。大きくすると幼く見える。
・キャラ髪の毛は大変。カラーなんでまた若干違うが、ベタだと大変。
・デビュー当時、非常に人間のアゴにこだわりすぎていた。人の顔の骨格を見ると、顎の部分はデコボコがある。今見ると過去の絵は顎の部分がコブみたいにみえて嫌。
絵を描いていく中で「なんかちがうなぁ」という感覚を大切に。気づくとポーズが変わっていることも。
・女の子は綺麗に描かなきゃいけないから本当につらい。神経を使う。
・消しゴムでなんども線を消して調整しながらの作業。
・顔の輪郭、頬の膨らみだけで小一時間悩む。
・コピー機にかけたり、なんども修正しながらシャープペンシルで清書に入る。パソコンを使っている人からしたら、なんて手間の掛かることをしているか。
・ある程度描き込んだら、ヘキサチーフで固定。こすって線画が乱れないように。
・後から線を入れていき、気に入らなかったら消していく。パソコンなら修正は簡単だろうけれど。
・服の所の影は描き込まずガイド的に適当につけておく。後でリキテックスなどで調整していく。

・鉛筆で線入れする理由は、鉛筆は濃淡が出しやすいので、それを利用して色を塗るかたちにしたい。最終的にホワイトいれたりして消す。そこまで慎重にではないが、普通のペン入れよりから慎重に線をいれているかな。
コピックは時間の勝負。乾いちゃうとうまくなじまない。湿ってないと次に置いた色が綺麗ににじんでくれない。ムラになっちゃう。塗っていると、同じ色でもだんだん濃くなっていく。乾くと薄くなったりしていく。
・白目も肌の色で最初にぜんぶ塗っていく。
・女の子の絵では思い切った影がのせられないのでつらい。
・どこから塗っていくかは決まっていない。
グレーにも暖色系と寒色系があって、素材によって決めている。スカーフ(さてん)のシルクっぽいのなら寒色系のグレー。綿なら暖色系がいい
・一応ハイライトも塗るが、コピックの段階ではそこまで慎重には塗らない。
・全体的に淡い感じ、線がグレートーンの方が雰囲気が出る可能性がある。
・コピックはムラが嫌。薄い色を置いておけば重なってどんどん濃くなるから取り返しがつかない。塗り直そうと思ったときは、同じパーツの絵を上から貼ることもよくやった。
・濃くしたいところは墨線を入れておくことが最近多い。
シャキッとさせると絵がつまらなくなることもある。いい場合も多いけど。絵の雰囲気によっては「ふわーっ」としているほうが良かったり
・彩色のコツは、考えたこともない。描いてみるしかない。女の子を描いている時は、「大勢の人が見てかわいいと思うのか、思わないのか」を常に判断しながら描いている。テクニックというより感覚が大事なのかも。みんながカワイイという絵を模索していく。

・資料はヨーロッパの建物が多い。マンガでよく使う。作画用の本はアシスタントさんのために買う。
・仮面ライダーなどの実写もののフィギュアが好き。買ったのはいいけど置き場所に困る。インターネットで見るとついつい買ってしまう。
・物欲、コレクター癖がある。今はフィギュア。よく出来ているものに手がでちゃう悪い癖。
・イラストを描くときには何も参考にしていない。目の前の原稿に集中しているので周りを見ることがない。
・「ウルトラマン」が究極のデザインだと思っている。もともとヒーロー好きの特撮好き。立体物であるフィギュアはいいなぁと思う。
・いつか特撮に携われたらという憧れがある。
・ペン軸はシャーペンと同じぐらいの太さじゃないとペンに変えたとき違和感がある
・ジャンプで連載することは意識したこと全くない。影響力強い雑誌だと思う。少年誌は読んでいる人が多いため、ありがたいところもあるし、怖い部分もある。何か勝負したいときは少年誌はいい舞台。

マンガ家を目指す人たちへ

いろんなものにアンテナはり、観察することが重要。映画でもいいし、実際の人間でもいい。表情や、どんなシチュエーションではどういう顔するのだろうかを意識して観ていく。
・若い頃服のシワの入り方とか、ズボンの裾がうまく描けなくて、学生時代に電車に乗って高校まで行っていたが、ひたすら目の前の人のズボンの裾を観察し、あっこういう構造なんだ、と覚えていった。写真よりかは実物のものを観たほうが立体的に入ってくる感じはしている。
・観察することも大事だけれど、映画とか小説でもいいので、お話がどういう構造になっているのか、なぜ面白いのかをを自分で分析してみることも重要。作品そのものを楽しむのもいいけど、分析の目で二回目を見るなり、考えながら鑑賞してみる。

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