ジャンプ流vol.1まるごと鳥山明DVD付分冊マンガ講座 要約・抜粋・まとめ

ジャンプ流はジャンプ作家の創作の秘密を探るシリーズで、絵や漫画の上達のヒントがふんだんに盛り込まれている貴重な雑誌です。DVDで特集作家の創作過程を見れるのが特徴で、冊子自体は薄いけれども漫画家を志す人に向けての情報が濃縮されています。初回は言わずと知れた鳥山明さんの特集。「Dr.スランプ」や「ドラゴンボール」、ゲームでは「ドラゴンクエスト」のキャラクターデザインなど大人気コンテンツを生み出した鳥山明さん。この本から得られた鳥山さんが漫画家になるまでの過程やどのようなスタンスで仕事に取り組んでいるのか、絵や漫画、画力向上に興味がある人の参考になる部分を抜粋・要約しました。

◆書誌情報
「DVD付分冊漫画講座ジャンプ流 vol.01 まるごと 鳥山明」
集英社
2016年1月21日発行 1月7日(木)発売

絵を描くのが好きな子供だった

鳥山明さんは子供の頃から絵を描くのが好きで、当時は絵を描くぐらいしか娯楽がなかったそうです。ある時、101匹ワンちゃんの絵を描いて賞をもらえることをきっかけにディズニーの絵と出会い、あまりのデッサンのうまさに感動。一生懸命まねて描いて送ったそうです。これがたくさんいろんなものを描くようになったきっかけとなりました。両親にせがんでディズニーの絵本を買って貰ったあとは、ひたすら真似て描いていたそうです。そのあとはデザイン科の高校に進みますが、大学に行く気はさらさらなく、さっさと仕事について稼いだお金で趣味の服やバイクやプラモデルなどで好き勝手にしたかったそうです。高校卒業後はグラフィックデザインをやりたくて広告代理店に入りますが遅刻などで怒られてばかり。でも、その時にたくさんのチラシをじっくりみたおかげで“モノの形”がわかるようになり、締め切り厳守の意識も身に付いたとか。広告代理店は2年半勤め、退社。広告代理店時代に培った絵の技術で、お金を稼ぐ方法として選んだのがジャンプへの作品の投稿でした。投稿はボツ続きだったそうですが、当時若手編集者だった鳥嶋和彦さんが担当になり、いつか仕事になるのではないかと薄々感じていたそうです。没をくらいながらも自分の絵に妙に自信だけはあったので、お金を貰うまでは意地でも辞めない気持ちで何百枚もの原稿を描き上げ、徐々に漫画家としての実力を伸ばしていきました

作画・ペン入れ・漫画家秘話 付属DVDより抜粋要約

以下付属DVDより、要点をまとめたメモ書きになります。インタビュアーは武田冬門さん。ドラゴンボールの魔人ブウのモデルとのこと。1995年当時の作画映像を見ながらのインタビュー映像です。

下絵とペン入れ

・下書きではアタリの○(マル)を書かない。アタリの○(マル)を書いていると期限に間に合わないから。
頭の中に形として映像がだいたい出ている。1枚絵は丁寧に書いているので、マンガの時はもうちょっと雑になる。
・右向きの絵は右利きの人には大変な構図。
・アタリなしで描けるのが凄いが、もっと上手く描ける人はたくさんいるという。
・ペン軸は自分で削ったり、セロテープをはったりしてカスタマイズしている。デビュー当時からそのペン軸じゃないと描けなくなってしまった。
下絵通りには絶対書かない全体の仕上がりのバランスを見ながらペン入れ時に修正していく
・紙が良くないと、ペン入れの際に音がガリガリいう。デビューしてからずっと質の低い紙を使用していた。尾田君(おそらくワンピースの作者)にいわれて最近はこんないい紙をつかっているんだ、と気づいた。
・質の低い紙は、細い線がガタガタと引っかかって書けなくなる。
・ペン入れは顔から描くのか?これは場合による。腕とかが顔にかかってたら腕から描き始める。大抵は顔から描く。
顔の絵が上手く決まらないとテンションが落ちる
服のしわのイメージは適当

塗りについて

・ルマっていうメーカーのカラーインクを使っている。少女漫画の人が教えてくれた。
・そもそもインクがあるのを知らなかったし、田舎に引っ込んでいたから買えなかった。
・重ね塗りして、にじみを計算してテキパキして塗らないとムラになってしまう。
・動画では輪郭線からはみ出さないように塗っているが、はみ出した方修正が効く。
・インクが乾かないようにスピードを上げて塗る。
・紺色を先に塗る。後で塗ると薄いから色がまじっちゃうと濁る。黒か紺は色が強い。
コピックが使えない。理由はやったことないから。前にコピックで塗ることにチャレンジしたけどやっぱり上手く塗れなかった。
・色については今はパソコンでやっちゃうからインクとかコピックとか関係ない。
・(1995年当時の映像をみながら、筆ペンをつかっていて)筆ペンで髪をベタ塗りをしていた。
・(20年前の自らの作画映像をみて)今よりも迷いがない。連載当時の描き方が残っていた。線にためらいがない、勢いに任せてスピードで描けていた。当時の自分にかける言葉は、特にない。頑張ったな、と言うぐらい。

漫画家を目指す人に気づきになるようなこと

漫画を初めて仕上げたのは会社を辞めてから。「アワワワールド」をジャンプの投稿用に初めて描き上げた。マンガは読まないし、描かなかったけれど高校は漫画研究同好会に所属していた(楽しそうだったから)。少年マガジンに応募しようと思ったが、締め切りに間に合わないので少年ジャンプで応募した。会社を辞めてお金がないから、どうしようと悩んでいて、ただ賞金が欲しいからという不純な動機でマンガを描き始めた。賞金は貰えなかったが、もし賞金を貰えていたらそれでマンガを書くのを辞めていたと思う。全然賞に入らなかったから、なにクソ!と思って漫画を描き続けた。初期作品の「謎のレインジャック」はスターウォーズなどのキャラをパクりまくった作品で今ではとても公開できないものばかり。ただ、この作品が編集者の鳥嶋さんの目にとまることになった。その理由は書き文字(擬音・オノマトペ)が上手かったから。漫画家になる気は全然なかったが、編集から連絡が来ると言うことは仕事につながりそうだという予感を感じさせた。(自分のマンガが)お金になるまでは続けないと、と思った没が山のようにでたけど、だんだん漫画らしくなっていく感じが面白かった。参考にした漫画は一切無い。全部自分独自の方法。漫画自体、読むのが得意じゃない。漫画読む行為は小学4年生ぐらいで停まっている。マンガよりも映画の方に興味がいっちゃって、映画とイラストは好きで描いていた。

人生の選択肢について

・人生の選択肢としてイラストレーターよりも、グラフィックデザインの方がやりたかった。
・グラフィックデザインをやりたくて広告代理店に入ったが、名古屋の田舎だとチラシとかそんな仕事しかなくて、思った以上に仕事が面白くなかった。
・結果的に当時の経験は役には立っている。チラシをやっていると物の形がわかってくる。あらゆるものの形、スーパー、紳士服などを見続けるから、物に詳しくなっていく。構図や形を知れる。それと、広告の現場にいると、締め切りに遅れるとどれだけの人に迷惑をかけるかを実際に見ているから、締め切り厳守の意識は身体に染みついた。

Drスランプについて

連載があんなにしんどいとは思っていなかった。鳥嶋さんからは10週間の我慢と言われていたが…。連載はうれしさと嫌だなという気持ちと半々だった。毎週これだけの量を描くなんて信じられなかった。アシスタントを使うという発想もなかったので、他の作家さんがどうして2つも3つも連載を持てるのかが不思議で仕方が無かった。鳥嶋さんもアシスタントのことは教えてくれなかったし、妹や両親を集めて原稿のペケのところを黒く塗ってくれと頼んだこともあった。その結果はみ出したところがあり、人物の顔や髪の毛が大きくなってしまったこともあった。イラストとかだと1枚に集中できるが、マンガだと何枚もかき、同じ人間を何回描くんだ、と思っていた。大変だったら辞めようとはならなかったのは、次の職業の当てが無かったから。仕方なく続けていたし、人気があるよと言われてから若干モチベーションは上がったけれど、田舎に引っ込んでいたから人気が実感としていまいちピンとこなかった。

その他漫画家としてのエピソード

・漫画は自分一人で映画一本作るような感じ。自分は人を使うのが苦手だから、漫画家は向いているとは思っていた。大変だけど自分一人で全部コントロールできるのはもしかしたらすごく楽しいことだと気づいた。これに気づけたのがドラゴンボールの連載終わりかけで、それまではただしんどいだけだった。一番つらかったのが1週間で20分の睡眠時間しかとれなかったこと。4日徹夜して20分寝て3日徹夜した。原稿を届けるため、朝の航空便で締め切りに間に合うように外に出るが、信号の色がよくわからないほどだった。鳥嶋さんに没にされたりすると、もう一度ネームをかいて、隣の建材屋からコピーをとりなおして、また航空便で発送するために空港まで外出をしていた。当時はコピー機を買う発想が無かった。FAXは編集部に「ほとんどできちゃってますよ」ってごまかせなくなるので導入に反対していた。プラモデルを作ったりして現実逃避もしていた。
・今でも、人間って眠らなければいいのにと思っている。どうして睡眠っているのかなぁ。身体が大丈夫ならずっと起きていたいと思う。起きている間は趣味をしたい。

マガジンでは無くジャンプの漫画家として

ジャンプの発行部数を教えて貰うと最前線な感じはして、その部分は誇りに思った。ただ、特にジャンプを意識したことは無かった。ジャンプの少年マンガの定説と言われる友情努力勝利は無視していた。むしろ反対してやろうと思っていた。Drスランプはどれにも当てはまらないし、勝利の要素はたまたまあっただけ。むしろ友情努力勝利とかそんなこといってダサいなぁと思っていた。自分はそういうへそまがりなところがある。ドラゴンボールも同様で、全然意識しなかった。悟空に友情ないです。強いやつと戦いたい、だけ。それがたまたま友情になってしまった。

漫画家になることはどういうこと?

・一番大事なのは健康。健康じゃないと出来ない職業。当時は本当に大変だった。
・(漫画家になりたい人に向けて)漫画だけが好きで、趣味も漫画で漫画家になるというのは、その域を超えられない。色んな事を好きになって、興味を持って、知識はあっただけ役に立つ。色んな事を知ってからから漫画家になるのがいい
・どんな崩し(ディフォルメ)をするにしてもデッサンはやっておく。
・真っさらなな白紙に頭の中のイメージを落とす作業はどんなものか?との質問。(鳥山さん)「意識したことがない。自然にできたというか、そんなに自然でもないけど、だいたい話さえ決まればあとは感覚でいけましたね。そのお話を決めるのが大変だけども。」
・流行に乗っかるな、とまでは言いませんが、「わしのマンガについて来い!」なんていうぐらいの、流れに逆らう根性とセンスと個性は、できれば身につけて欲しいですね。

オマケ:スーパーサイヤ人の描き方(ドラゴンボール)
スーパーサイヤ人は眉毛が下にいっちゃうから髪の毛から書く。(金髪だから)髪をベタに塗らなくていいので楽。マジックで描くのはペン先の方向決めなくていいから書きやすい。その代わり味わいは無くなるけれど。描く際のポイントは、輪郭。何回も描いてるけど失敗することもある。ちょっとのバランスの違いで失敗する。

満足度100%

鳥山明さんはあれだけのヒットコンテンツを生み出している大漫画家でいながら、漫画家になろうと思ったことが無く、賞金目当てのお金のために漫画家になった、というのが面白いですね。最近私は画力上達のために彼の1冊完結マンガ「カジカ」を最初から最後まで模写することに取り組んでいるのですが、彼のディフォルメの感性の源はディズニーの絵本を写していた幼少期の頃にあったのか、と今回この本を読んで納得しました(女性キャラの目の描き方とか特に)。広告会社でレタリングを一生懸命していたことが綺麗な擬音文字を描くことにつながり、チラシをたくさん制作していた経験がモノの絵のうまさに繋がり、映画をたくさん見ていたことが躍動的で勢いあるバトルシーンやコマ割り(マンガのカメラ構図)に繋がっていることを知れました。ジャンプなので若い人向けに書かれていますが、あらゆる年代の全てのマンガを描きたい人にとってヒントや参考になる箇所がとても多い本です。冊子ではより個別具体的にマンガを上達するアドバイスが盛り込まれているので、興味がある人は是非中古でも手に入れることをお奨めします。

動画資料:徹子の部屋のインタビュー映像

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◆参考

鳥山明 Wikipedia
ジャンプ流公式サイト 鳥山明
徹子の部屋 鳥山明 Youtubeリンク