スピードペインティングの極意【アート参考本レビュー】


今回はデジタルペインティングの総合サイト3dtotalから出版された「スピードペインティングの極意」をレビューします。時間制約の中でいかにイメージを形作るのかに焦点を当てていて、Photoshopがある程度使えて絵も描ける中級者向きの内容です。

◆書誌情報
「スピードペインティングの極意」
3DTotal.com (著)
ボーンデジタル 2017/4/25

スピードペインティングとは

スピードペインティングは時間の制約の中でペイントすることをいいます。30分、1時間、2時間といったあらかじめ決めた時間内でどこまで書けるかが勝負です。スピードと言っても速度が全てではなく、作品のクオリティを高めながら自分の時間を賢く使うことが試されます。リファレンス画像のリサーチ自体がクリエイティブな作業で、時間をかけて様々なリファレンスを集めることが、今後あらゆる場面に役立ちます。

この試行錯誤の過程が作品にとって何が大事で何を明確にすべきかという取捨選択能力を育むのです短時間でコンセプトからアイデアを導き、実現する能力をスピードペインティングは鍛えてくれます。

たくさんの駄作を作ったとしてもそれは無駄にはならず、いずれ良作に繋がっていきます。そして良作を作り続ければ素晴らしい傑作もいずれ出てきます。

リファレンス=資料集めが最重要

スピードペインティングではリファレンス、絵作りのための資料集めが最も重要です。コンセプトを作ったらまずはリファレンスを収集します。リファレンスは凄く重要なので普段からストックを作成しておくことが大事です。

自分の作品をチェックする最適な方法は、「自分がやりたいことは何か?」を明確にして、画像の編集をする際には「なぜこの画像を変更(例:明るく)したいのか?」と自分自身に問いかけることが重要。すべてに理由付けをしておくことです。

※資料集めは個人的には画像共有サイトのPinterestのサービスをお奨めします。

リファレンスの中でも最も重視されているのが写真です。作りたい作品にドンピシャな写真を集めることが出来れば大幅に制作時間を減らすことが出来ます。リファレンスを選ぶ基準としては形状やライティングなどに注目する方法が紹介されています。

メンタル面の要点

・作品の進め方は、同時に2作品ほど平行して進めることで脳が休息できる。
・創造性の限界はツールの問題ではなく、自身の問題と捉えることが重要。
・制作を続けていくと自分が作ったものを見る事に脳が慣れてしまうので、新たな視点から確認することがとても大切。時々鏡のように作品を反転させてみる。
・人には「きき目」があって、片方のパース(遠近法)が強調されるので必ず左右反転をして確認する。構図がしっくり来ないときも反転する。
習うより慣れろ。1つのイメージに10時間使うよりも、10時間かけて10の異なる色のスケッチをするほうが実りも多い。
・自分の作品をナラティブ(物語的)なものとしたい場合、作品を作る際にキーワードの選定をしておく。
・アイデアを紙にしっかりと書き表しておく。作成したいものを明確に言葉に落とし込むことが重要。色・感情・オブジェクト・場所など。
・その絵で鑑賞者に見せるストーリーを考えてみる。なぜこの絵なのか、なぜ他のストーリーではなくこのストーリーを選んだのか、など。
・キャラクターや環境に合うショートストーリー・ロケーションを考える。
・ライティング・照明はストーリーテリングにとって強力なツール。光だけでも「善」と「悪」を表現できる。
・白黒の明暗だけのスケッチでたくさんのムードを作ってみる練習をする。
・小さいスケッチで構図を試す。
・最初のアイデア、ひらめきを大切に。ディテールを作り込んでいくと、作品を始めるきっかけとなった基本アイデアを忘れてしまう事が多い。

テクニック面での要点

フォトバッシング
フォトバッシングとは写真素材を使ってイメージに素早くテクスチャとエフェクトを加えること。
Photoshopテクニック関連
・風景写真からブラシを作成。
・ブラシ作成のルールとしては、まずは白黒でつくり、コントラストを極端に、エッジをシャープにする。白の部分はブラシにした時透明になる。
・デュアルブラシの組み合わせを試してみる。
・カスタムシェイプを用いて建物を追加すると簡単に建物風シルエットを作ることができる。
・トーンカーブは最も明るい部分と最も暗い部分をコントロールするツール。
・写真を使ってディテールを追加する。
・テクスチャを調整レイヤーで色々いじくる。。レイヤーマスクと調整レイヤーを使って非破壊に作業を進める。
・Photoshopの「焼き込みツール」と「覆い焼きツール」でシーンに奥行きを与える。
・画像は拡大するよりも縮小するほうが簡単なので、キャンバスサイズは大きめ(300dpi 6000x2400pxなど。)にとる。
・ハードブラシでディテールを書き込む。ソフトブラシを何度も走らせるのではなく、ハードブラシの一本のストロークで色と色調を描く方法を身につける。
・「覆い焼きカラー」は絵に光を加えるのに最適なツール。

・テクスチャを繰り返し使用することで全体のスタイルに一貫性をもたらすことが出来る。
・私たちの脳は人間の姿を一番に認識するように出来ているので、人を配置することで作品のスケール感を調整することができる(鳥など小動物でも可能)。
・キャラクターはデフォルメの過程で解剖学に関して自由度が高くなる。
・シルエットはキャラクターの特徴や視認性を表す良いサインなので、シルエットのサムネイルスケッチは良いアイデア出しの方法となる。
・anatomy brushs(アナトミーブラシ)で作業を効率化できる。ネット検索ですぐに見つかる→https://www.google.com/search?q=anatomy+brushs&ie=utf-8&oe=utf-8&client=firefox-b-ab
・いかにもデジタルな感じを避けるため、絵にノイズを加えることはとても大事な作業。
・空気遠近法は遠くにあるものほどディテールを削ってぼかしていく。遠くにあるものほどコントラストを下げ、大気の層が厚いことを示す。
・黒やグレーは画像を台無しにするので使わず、なるべく明度を下げ寒色の色調を加えていくことで暗さを表現する。

フリー写真素材サイト
・Noah Bradleyさんの著作権フリー画像集→https://gumroad.com/noahbradley
世界各地で撮影したフォトコレクション。

・Efflam mercierさんのも同様→https://gumroad.com/efflam
テクスチャのサイト
https://www.textures.com/

予期せぬアクシデントを活かす

制作中の予期せぬ幸運なアクシデントを作品に活かした例が紹介されています。偶然をアートに活かしていきます。

古いスキャナーのガラス面を使った独創的な手法
水彩絵の具などでガラス表面にインクを描いてみて、それをそのままスキャンしてみる手法です。汚れが広がらないように注意します。
作例→https://www.deviantart.com/friis/art/jf-Texture-pack-2-581905010

気に入った作品ベスト3

以下は本書の中で私が気に入った作品ベスト3です。
 


雪景色が美しい作品

 


怪しげな雰囲気が良く出ている作品

 


海と光が美しい作品

 
どれも写真などのリファレンスがスピードペインティングにとても重要な役割を果たしていました。

まとめ

ボリューム    ★★★☆
読みやすさ    ★★☆
デザイン     ★★★
作品のクオリティ ★★★
お奨め度     ★★☆
満足度      60%

とにかくスピードペインティングにとって、リファレンス写真は最も重要であることが分かりました。ネットにあるフリーのテクスチャや写真、Photoshopのブラシをフル活用して一気に仕上げていきます。

注意しなければいけないのは、この本を読んだからと言って、作例のような作品がすぐに作れるわけではないと言うこと。あくまでそれぞれのアーティストたちの方法論をチュートリアル形式で学ぶ感じです。

大事なのは習うより慣れろ、と本書にあるように、読んだだけで満足せず普段からの創作活動で実際にたくさんの作例を作っていくのが重要です。またアートをする際の本質ではなくテクニック寄りの知識ばかりですので、普段からたくさんデジタルペインティングの経験を積んでいる人は無理に買わなくてもいいと思います。

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